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【サクソン朝エグバート王】
一般には「サクソン朝」という言い方はしません。普通に訳せば「サクソン族のエグバート王」でしょう。エグバート王はイングランド統一の基礎を作った、九世紀初頭の人物です。というわけで敬意を表して「〜朝」「〜の御代」。アルフレッド大王のお祖父さんに当たります。
【イスールト】
フランス語読みすれば「イズー」、ドイツ語読みすれば「イソウド」別型「イゾルデ」、ベディエ『トリスタン・イズー物語』やワグナー『トリスタンとイゾルデ』の主人公と同名です(原型物語はアーサー王伝説)。「イズールト」とも。
ただし悲恋という以外共通点はなさそうです。
【ジークフリート】
北欧神話の英雄。これまたワグナー『ニーベルングの指輪』の主人公として有名です。恐れを知らぬ、神の子ジークフリートは、斃した竜の血を浴びて不死となりますが、木の葉が背中に貼りついた部分だけは血を浴びず、最後はその弱点を槍で刺されて殺されてしまいます。
小人に育てられたとか、狼に育てられたとかいう伝説があるので、本作品の「ジークフリートの孫=人狼」という発想は、そこから生まれたものでしょうか。ジークフリート自身が人狼だという伝説があるのかどうかは、残念ながらわかりませんでした。
ただし、倭建之命や須佐之男命の例にもれず、英雄の「勇猛果敢さ」とは、「残忍獰猛」と紙一重(というかイコール)なので、例えばwilderなどは「須佐之男命の呪い」と言われれば何となく納得してしまいますが、同じように「ジークフリートの呪い」というのも〈ありそう〉なものなのでしょうね。
一種の「追われし者」、鬼っ子ですし。
【ブリュンヒルデ】
ジークフリートと同じく、北欧神話に登場する魔女(というか何というか)。ここでは「妖精」と訳しておきましたが……。神々から生まれたワルキューレ姉妹の一人。ジークフリートの妻です。
本文中の「ブリュンヒルデから贈られた槍」というのが何を指すのかは不明。
(1)ブリュンヒルデが「この剣を再び取るものは、ジークフリートという名の者なり」と予言した「剣」のことでしょうか。
(2)ブリュンヒルデが弱点を話してしまったためにジークフリートは槍で殺されるわけですが、それを指して「贈られた槍」と言っているのでしょうか。
参考にできるのは『ニーベルング』くらいなので、原型神話に無数のヴァージョン違いがあればお手上げです。
【心には少しも〜】
[訳註]
「心には少しも気にかからない」とは、どう考えてもおかしな日本語ですが、うまい表現が見つからなかったので。
【その孫】
[訳註]
「おじいちゃん」には「祖父」という言い方があるのに、「孫」を表現する日本語はなぜ「孫」しかないんでしょう。もうちょっと文語調の訳語が欲しかったんですが……。
【聖アルフレダ】
聖アルフレダは八世紀終わり〜九世紀初頭にかけて実在した聖女。この物語はエグバート王の御代(九世紀初頭)の話ですから、リアルタイムで祀り上げられたことになります。「エルフレダ」とも。
アルフレダとエゼルドレダの姉妹は、イギリスマーシャ王国の王女でしたが、王と王妃の奸計で許嫁を殺されたため、生涯娶らず隠遁生活をしたと言います。
ちなみにエグバート王はウェセックス王国の王、マーシャ王国とは隣同士です。
【柘榴と】
[訳註]
「柘榴」にはもちろん「ざくり」なんて読みはありません。でも「ぱっくりと」じゃいまいちなんで。
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