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翻訳者:wilder
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吸血鬼の娘
ヒューム・ニズベット
吸血鬼の娘
都会から逃げ出す必要を感じて何週間か世話になったのは、まさにぴったりの家だった。ぼくは自信をなくし、自分自身に嫌気がさしていた。血には不安が宿り、脳は枯渇していた。見慣れた物も顔もうんざりさせる。ぼくは一人になりたかった。
長いあいだ型にはまった生活をしていたり、働きすぎたりすると、繊細で芸術家肌の心の持ち主というものは、得てしてこんな憂鬱な気分になる。新たな住みかを見つけるというのは虫の知らせであり、避難せよという警報だ。
逃げ出さないならノイローゼになって、気まぐれで愚痴り屋みたいな心気症になってしまう。自分にも他人にも厳しくあら探しばかりするなんてのは危険信号で、たいていのことに新鮮味も熱気も失ってしまっているということだ。
陰気な批判の舞台に上がってしまう前に、急いで荷物を詰め込んで、ウェストモーランド行きの汽車に乗り込んだところから、孤独、身の引き締まる空気、ロマンティックな環境を求めるぼくの旅は始まったのだ。
初夏のあいだじゅう歩き回って訪れた場所の多くは、望みどおりの条件を持っているように思えたが、些細な欠点がいくつかあって決めかねていた。好きになれなかったのは、ある時には風景。あるところでは女将や旦那に我慢が出来ず、宿を取って一週間経たずに憎しみを覚えるだろう。ぴったりに思えたある場所では、下宿人は取らないと言われ果たせなかった。運命がぼくをこの荒野に立つ小屋へと駆り立てたのだ。誰も運命には逆らえない。
ある日きづくと、だだっ広くて道一つない海沿いの荒野にいた。前の晩は小さな村で眠ったが、それも今は八マイル後方だ。村を後にして以来、人間の痕跡を目にしていない。頭上には青空、さわやかな風が岩とヒースだらけの地上を吹き抜け、瞑想を邪魔するものは何一つ無く、ぼくはたった一人だった。
いったいどこまでこの荒野は広がっているのか、ぼくにはわからない。ぼくが知っているのは一つだけ、まっすぐに歩き続ければ海岸に出るはずだということ、そしてたぶん、少しすればどこかの漁村にたどり着くだろう。
ナップザックに食料はたっぷりあるし、若さというものは星降る夜も恐れない。おいしい夏の空気を吸い込んで、失っていた活気と喜びをふたたび取り戻した。都会で干涸らびた脳にも、ふたたびうるおいが戻ってきた。
こうして、歩みとともに時間が無数に過ぎ去った。粗末なスレート葺きをした石造りの小屋が、ぽつんと遠くに見えたときには、朝から十五マイル近くも進んでいた。「できればあそこで宿を取ろう」、ぼくはつぶやいて歩みを早めた。
静けさと自由な生活を求める人間にとって、この小屋ほどふさわしいところはなかっただろう。荒野に面した玄関、海を見渡す裏庭の塀、そびえる崖の端に建っていた。波の揺れる音が子守歌のようにぼくを引き寄せ耳を打つ。秋の嵐が来ればどれだけ大きな音を轟かせ、海鳥たちは声をあげながら菅の巣に逃げ込むことだろう。
正面に広がる小さな庭は、人がのんびりと寄りかかるのに丁度いい高さをした天然石の塀で囲まれている。庭は栽培されていた罌粟が満開で、さまざまな色合いで満ちた緋色の炎だ。庭に育っていたのはこの罌粟だけなのだ。
この珍しい罌粟ときれいな窓列に気づいて近づいてゆくと、玄関の扉が開き女性が現われた。一瞬でぼくは好意を持ったが、女性は小径をゆっくりと歩いて門までやって来くると、ぼくを招き入れるみたいに門を引いた。
中年の女性で、若いころはさぞかし美しかったに違いない。背が高く、とてもスタイルがよかった。すべすべの肌、整った顔立ちと落ち着いた表情をしている。ぼくはすぐに休息を取る気になった。
ぼくが尋ねると、休憩と寝室どちらも用意できると答えて、中に招いて見せてくれた。つやのある黒髪と澄んだ茶色の瞳を目にしたら、この宿に何も言うことはないと思った。そんな女将さんだから、求めているものがここで見つかると確信したのだ。
期待以上の部屋で、上品な白いカーテンのそばにはラベンダーの香りがするベッドがあり、居間は質素だが広々として居心地がいい。心の底からほっと息をつくと、ナップザックを放り出し受付を済ませた。
夫を亡くし娘が一人いるというのだが、初日には会わなかった。体が悪く部屋にこもっているそうだ。だが次の日にはやや良くなったとみえ、ぼくらは顔を合わせた。
料理は簡単なものだったがその時のぼくの口にはぴったり合った。おいしい牛乳とバター、自家製のパン、新鮮な卵とベーコン。腹持ちのいいお茶を済ませると、部屋に大満足しながら早めに床についた。
満足ではあったが疲れ切っていたため、決して快適な夜というわけではない。ぼくはこうして見知らぬベッドに潜り込んだ。ぐっすり眠りはしたが夢ばかり見ていたので、寝過ごしてしまい疲れもとれない。だが荒野を歩き回ると元気も回復し、食欲旺盛に朝食を摂りに戻ってきた。
落ちこみ続ける心理状態というものは、シェイクスピアがロミオとジュリエットで描いたような一目惚れを、若者の前に突きつける。都会ではいつも至るところで美しい人を見かけたが、ぼくは禁欲主義者みたいに自制していた。だが朝の散歩から帰って小屋に入るやいなや、女将さんの娘アリアドネ・ブリュネルの不思議な魅力にたちまち屈していた。
その日の朝は彼女の具合も少し良く、朝食の時にぼくと会うことが出来た。というのも、ここに宿を取っているあいだは一緒に食事を取っていたからだ。伝統的美意識から言えば、アリアドネは厳密には美人ではない。顔色はかなり悪かったし、ぱっと見たところ表情は笑顔になろうとしすぎていた。だが母親が教えてくれたところによると、長いあいだ病に臥せっていたせいらしい。顔立ちはちぐはぐだ。不思議なほど白い肌と比べると、髪と瞳は黒すぎるように見えるし、オーブリー・ビアズリーの退廃的な美にしか似合わないくらい唇は赤かった。
だが朝の散歩といい昨晩の不思議な夢といい、この現代絵画のようなな病身の少女に夢中になる練習みたいなものだった。
海の響き、荒野の孤独が、せつない気持ちでぼくをとらえて離さない。今が盛りのはかない罌粟の花があちらこちらで、地味なヒースを尻目に目眩く彩りを浴びせたせいで、小屋に着くころには震えが起こり、ついにこの不思議なコントラストは具体的な形を取ってぼくを支配することに成功した。
彼女は母親に紹介されて席を立つと、手を差し出しながら微笑んだ。その柔らかい水仙を握りしめた途端、かすかな震えがぼくをうずかせ心臓まで達し、ほんの一瞬鼓動が停止していた。
この出会いは、ぼくと同じく彼女にも影響を与えたようで、白い炎のような澄んだ温もりが顔に灯った。それはまるで石膏のランプがつけられたような輝きで、視線が合うと黒い瞳は穏やかさと潤いを増し、真紅の唇は湿り気を帯びた。今や生命力にあふれた女性がそこにいた。ちょっと前までほとんど死人のようだったのに。
一般的な初対面の挨拶よりも長いあいだ、ぼくの手を白いほっそりした手の中に収めていてくれた。それからゆっくりと手を引くと、まっすぐな目つきで少しのあいだぼくを静かに見つめていた。
底知れぬビロードのような瞳で、目を逸らすころにはぼくの意思の力は奪い去られてしまい、無力な奴隷になったようだ。澄んだ湖水の深遠のような昏さなのに、炎であおり力を奪い去った。朝ベッドから起きたような気怠さを感じて椅子に沈み込んだ。
それでも朝食はおいしかったし、アリアドネはほとんど何も口にしていないのに、活き活きとバラ色に染まり、頬もほんのり色味を帯びた。快方に向かった彼女は、さらに若く美しくなったように見える。
ぼくはここに孤独を求めてやって来た。なのにアリアドネを見て以来、ぼくがやって来たのはただアリアドネのためだけのように感じていた。彼女は完全に元気とは言えない。実際に思い返してみても、自分から口を開いたというのは思い出せない。質問には簡潔に答え、ぼくにしゃべらせるに任せた。だが遠回しな言葉でぼくの考えを誘導し、目で話しかけていたように思える。細かいことは説明できないが、一目見て触れたときから、ぼくは魔法をかけられ、ほかのことは何も考えられなくなったことだけはわかった。
ぼくに取り憑いた忘我の状態は、すごい勢いで心をかき乱し、むしばんだ。ぼくは一日じゅう犬みたいに彼女の後をついてまわり、夜が来るごとに、白く燃える顔立ち、まっすぐ見つめる黒い目、濡れた真紅の唇を夢に見て、朝が来るたびに前日以上に怠い思いで目を覚ました。ときどき、彼女があの赤い唇でキスしてくれる夢を見た。絹のような黒い髪がぼくの喉に覆い被さるたびにぼくは震えた。ときにぼくらは宙に浮き、彼女の腕がぼくを包み長い髪が黒い雲のようにふたりを包んだ。その間ぼくは仰向けのまま何も出来ないでいた。
一日目の朝食のあと一緒に荒野に行って、戻る前にぼくは愛を打ちあけ、彼女は受け入れた。ぼくは抱きしめ、その答えに彼女は無数のキスをくれた。あらゆることがこんなに素早く起こったことに、何の不思議も感じなかった。彼女はぼくのものだ。いやむしろ、常にぼくが彼女のものだった。出会ったのは運命だとぼくは告げ、自分の愛情を疑いもしなかったし、ぼくが生き返らせてくれたんだと彼女は答えた。
アリアドネの忠告に従ったのと、恥ずかしかったこともあって、ぼくらのあいだでことが急速に進んでいることを母親には報せなかった。それでも、できるだけ慎重に行動していたにもかかわらず、ぼくらがお互い夢中になっていることをブリュネル夫人が知っていたことは間違いない。恋人たちというのは、頭を隠している駝鳥と変わりない。ブリュネル夫人に結婚させてほしいと頼むのは心配していなかった。夫人はぼくのことを気に入ってくれていたし、生活する上でたくさんの信頼を寄せてくれていた。だからぼくはわかっていた、社会的立場に関する限り、ぼくらの結婚を否定する存在などないのだ。親子は健康を慮ってこんな寂しい場所で暮らしていたが、こんな人里離れたところでは誰も雇えなかったので、使用人はいなかった。ぼくの来訪は、母にとっても娘にとっても願ってもない歓迎すべきものだったのだ。
だが節度を守って打ちあけるのを数週間あとに延ばし、慎重に好機を待った。
その間もアリアドネとぼくは気怠く夢みる生活に耽っていた。夜が来れば翌日することに思いめぐらし、朝が来れば愛だけで埋まった気がかりな夢から気怠げに目を覚ました。彼女は日に日に元気になり、ぼくは代わりに体が弱くなっているようだ。それでもぼくは、今まで以上に夢中になって愛していたし、ふたりでいるときが唯一の幸せだった。彼女はぼくのしるべ――人生における――唯一の喜びだ。
ぼくらはあまり遠くまで出かけなくなった。乾燥したヒースに寝ころび、遠くの波のうねりを聞きながら、燃えるような彼女の顔と激しい目を見ているのが大好きだった。ぼくをだらだらさせたのは愛だったのだと思う。人は躍起になって求めない限り、飼い猫の真似をして日向ぼっこをしているものなのだ。
ぼくは一瞬で恋に落ちた。熱が冷めるのもあっという間だった。それでも毒が血から抜けきるまでには長い時間がかかったのだが。
ぼくが小屋にやって来てから二、三週間後のある夜、アリアドネと美しい月夜の散歩をして家に戻った。暖かい満月の夜だったので、空気を入れようと寝室の窓を開けておいた。
ぼくはいつも以上に疲れ切っていたので、ブーツと上着を脱ぎ捨ててベッドにぐったりするだけの力しか残っていなかった。いつもテーブルに置いておき、喉の渇きを癒していた寝酒の一杯をたしなみもせず、すぐに眠りに落ちた。
その夜、恐ろしい夢を見た。アリアドネの顔と髪をした蝙蝠の怪物が、開いた窓から降り立ち、白い歯と真紅の唇をぼくの腕に突き立てたのを見たように思ったのだ。ぼくは恐怖を打ち払おうとしたが叶わなかった。獣がぞっとするような喜びをあげて血をすすると、うっとりするような恍惚が訪れて、ぼくは鎖で束縛されたようになってしまった。
夢うつつで辺りを見ると、若い男の死体が床に並んでいるのが見えた。腕にはどれも赤い跡がついている。吸血鬼がぼくを噛んだのと同じ場所だ。そしてここ二週間のあいだ腕にこんな跡があるのを見て不思議に思ったのを思い出した。一瞬にして、不思議な衰弱の原因を悟った。同時に、突然の鋭い痛みを感じて恍惚状態から我に返った。
一心不乱の吸血鬼は、ぼくが麻酔入りの酒を飲んでいないことに気づかずに、その夜は少し深く噛みすぎた。ぼくは目を覚ますと月明かりの下ではっきりと彼女を見た。黒い髪はだらしなく広がり、赤い唇はぼくの腕に貼りついている。恐怖の叫びをあげてぼくは彼女を後ろに投げ飛ばした。獰猛な目、燃えるような白い顔、血の付いた赤い唇が、最後にちらりと見えた。恐怖と怒りで突き動かされ、ぼくは夜の中へ飛び出した。荒野に立つ呪われた小屋から何マイルも離れるまで、ぼくは立ち止まらずに狂ったように逃げ続けた。
Hume Nisbet 'Vampire Maid' (1900) の全訳です。
Ver.1 03/08/21
Ver.2 03/09/21
〔作家・作品について〕
ヒューム・ニズベット(「ニズビット」と読むのかもしれません)、1849-1923、イギリス。画家で旅行家で作家。ジェイムズ・ニズベットともいうらしい。ほかの作品は読んだことありません。
タイトルまんま、吸血鬼小説です。前回はオオカミ男の話だったので、今回は当然のように吸血鬼ものを訳してみました。ただしこの作品は吸血鬼ものとして好きなわけじゃなく、前半の「都会を抜け出し旅に出た」感が好きなんですけれども。吸血鬼だという以外、正体は謎のまま。
〔訳について〕
前半は原文どおりの句読点を心がけて、のんびりたらたらと訳してみました。後半は吸血鬼も現われてのんびりしてられないだろうってことで小刻みに訳してみました。
追記。
改訳してはみたののの、どうも中盤がたるい。「ぼく」と「彼女」の繰り返しが煩雑なのだが、うまく省略できない。
The Vampire Maid
Hume Nisbet
It was the exact kind of abode that I had been looking after for weeks, for I was in that condition of mind when absolute renunciation of society was a necessity. I had become diffident of myself, and wearied of my kind. A strange unrest was in my blood; a barren dearth in my brains. Familiar objects and faces had grown distasteful to me. I wanted to be alone.
This is the mood which comes upon every sensitive and artistic mind when the possessor has been overworked or living too long in one groove. It is Nature's hint for him to seek pastures new; the sign that a retreat has become needful.
If he does not yield, he breaks down and becomes whimsical and hypochondriacal, as well as hypercritical. It is always a bad sign when a man becomes over-critical and censorious about his own or other people's work, for it means that he is losing the vital portions of work, freshness and enthusiasm.
Before I arrived at the dismal stage of criticism I hastily packed up my knapsack, and taking the train to Westmorland I began my tramp in search of solitude, bracing air and romantic surroundings.
Many places I came upon during that early summer wandering that appeared to have almost the required conditions, yet some petty drawback prevented me from deciding. Sometimes it was the scenery that I did not take kindly to. At other places I took sudden antipathies to the landlady or landlord, and felt I would abhor them before a week was spent under their charge. Other places which might have suited me I could not have, as they did not want a lodger. Fate was driving me to this Cottage on the Moor, and no one can resist destiny.
One day I found myself on a wide and pathless moor near the sea. I had slept the night before at a small hamlet, but that was already eight miles in my rear, and since I had turned my back upon it I had not seen any signs of humanity; I was alone with a fair sky above me, a balmy ozone-filled wind blowing over the stony and heather-clad mounds, and nothing to disturb my meditations.
How far the moor stretched I had no knowledge; I only knew that by keeping in a straight line I would come to the ocean cliffs, then perhaps after a time arrive at some fishing village.
I had provisions in my knapsack, and being young did not fear a night under the stars. I was inhaling the delicious summer air and once more getting back the vigour and happiness I had lost; my city-dried brains were again becoming juicy.
Thus hour after hour slid past me, with the paces, until I had covered about fifteen miles since morning, when I saw before me in the distance a solitary stone-built cottage with roughly slated roof. `I'll camp there if possible,' I said to myself as I quickened my steps towards it.
To one in search of a quiet, free life, nothing could have possibly been more suitable than this cottage. It stood on the edge of lofty cliffs, with its front door facing the moor and the back-yard wall overlooking the ocean. The sound of the dancing waves struck upon my ears like a lullaby as I drew near; how they would thunder when the autumn gales came on and the seabirds fled shrieking to the shelter of the sedges.
A small garden spread in front, surrounded by a dry-stone wall just high enough for one to lean lazily upon when inclined. This garden was a flame of colour, scarlet predominating, with those other soft shades that cultivated poppies take on in their blooming, for this was all that the garden grew.
As I approached, taking notice of this singular assortment of poppies, and the orderly cleanness of the windows, the front door opened and a woman appeared who impressed me at once favourably as she leisurely came along the pathway to the gate, and drew it back as if to welcome me.
She was of middle age, and when young must have been remarkably good-looking. She was tall and still shapely, with smooth clear skin, regular features and a calm expression that at once gave me a sensation of rest.
To my inquiries she said that she could give me both a sitting and bedroom, and invited me inside to see them. As I looked at her smooth black hair, and cool brown eyes, I felt that I would not be too particular about the accommodation. With such a landlady, I was sure to find what I was after here.
The rooms surpassed my expectation, dainty white curtains and bedding with the perfume of lavender about them, a sitting-room homely yet cosy without being crowded. With a sigh of infinite relief I flung down my knapsack and clinched the bargain.
She was a widow with one daughter, whom I did not see the first day, as she was unwell and confined to her own room, but on the next day she was somewhat better, and then we met.
The fare was simple, yet it suited me exactly for the time, delicious milk and butter with home-made scones, fresh eggs and bacon; after a hearty tea I went early to bed in a condition of perfect content with my quarters.
Yet happy and tired out as I was I had by no means a comfortable night. This I put down to the strange bed. I slept certainly, but my sleep was filled with dreams so that I woke late and unrefreshed; a good walk on the moor, however, restored me, and I returned with a fine appetite for breakfast.
Certain conditions of mind, with aggravating circumstances, are required before even a young man can fall in love at first sight, as Shakespeare has shown in his Romeo and Juliet. In the city, where many fair faces passed me every hour, I had remained like a stoic, yet no sooner did I enter the cottage after that morning walk than I succumbed instantly before the weird charms of my landlady's daughter, Ariadne Brunnell.
She was somewhat better this morning and able to meet me at breakfast, for we had our meals together while I was their lodger. Ariadne was not beautiful in the strictly classical sense, her complexion being too lividly white and her expression too set to be quite pleasant at first sight; yet, as her mother had informed me, she had been ill for some time, which accounted for that defect. Her features were not regular, her hair and eyes seemed too black with that strangely white skin, and her lips too red for any except the decadent harmonies of an Aubrey Beardsley.
Yet my fantastic dreams of the preceding night, with my morning walk, had prepared me to be enthralled by this modern poster-like invalid.
The loneliness of the moor, with the singing of the ocean, had gripped my heart with a wistful longing. The incongruity of those flaunting and evanescent poppy flowers, dashing their giddy tints in the face of that sober heath, touched me with a shiver as I approached the cottage, and lastly that weird embodiment of startling contrasts completed my subjugation.
She rose from her chair as her mother introduced her, and smiled while she held out her hand. I clasped that soft snowflake, and as I did so a faint thrill tingled over me and rested on my heart, stopping for the moment its beating.
This contact seemed also to have affected her as it did me; a clear flush, like a white flame, lighted up her face, so that it glowed as if an alabaster lamp had been lit; her black eyes became softer and more humid as our glances crossed, and her scarlet lips grew moist. She was a living woman now, while before she had seemed half a corpse.
She permitted her white slender hand to remain in mine longer than most people do at an introduction, and then she slowly withdrew it, still regarding me with steadfast eyes for a second or two afterwards.
Fathomless velvety eyes these were, yet before they were shifted from mine they appeared to have absorbed all my willpower and made me her abject slave. They looked like deep dark pools of clear water, yet they filled me with fire and deprived me of strength. I sank into my chair almost as languidly as I had risen from my bed that morning.
Yet I made a good breakfast, and although she hardly tasted anything, this strange girl rose much refreshed and with a slight glow of colour on her cheeks, which improved her so greatly that she appeared younger and almost beautiful.
I had come here seeking solitude, but since I had seen Ariadne it seemed as if I had come for her only. She was not very lively; indeed, thinking back, I cannot recall any spontaneous remark of hers; she answered my questions by monosyllables and left me to lead in words; yet she was insinuating and appeared to lead my thoughts in her direction and speak to me with her eyes. I cannot describe her minutely, I only know that from the first glance and touch she gave me I was bewitched and could think of nothing else.
It was a rapid, distracting, and devouring infatuation that possessed me; all day long I followed her about like a dog, every night I dreamed of that white glowing face, those steadfast black eyes, those moist scarlet lips, and each morning I rose more languid than I had been the day before. Sometimes I dreamt that she was kissing me with those red lips, while I shivered at the contact of her silky black tresses as they covered my throat; sometimes that we were floating in the air, her arms about me and her long hair enveloping us both like an inky cloud, while I lay supine and helpless.
She went with me after breakfast on that first day to the moor, and before we came back I had spoken my love and received her assent. I held her in my arms and had taken her kisses in answer to mine, nor did I think it strange that all this had happened so quickly. She was mine, or rather I was hers, without a pause. I told her it was fate that had sent me to her, for I had no doubts about my love, and she replied that I had restored her to life.
Acting upon Ariadne's advice, and also from a natural shyness, I did not inform her mother how quickly matters had progressed between us, yet although we both acted as circumspectly as possible, I had no doubt Mrs Brunnell could see how engrossed we were in each other. Lovers are not unlike ostriches in their modes of concealment. I was not afraid of asking Mrs Brunnell for her daughter, for she already showed her partiality towards me, and had bestowed upon me some confidences regarding her own position in life, and I therefore knew that, so far as social position was concerned, there could be no real objection to our marriage. They lived in this lonely spot for the sake of their health, and kept no servant because they could not get any to take service so far away from other humanity. My coming had been opportune and welcome to both mother and daughter.
For the sake of decorum, however, I resolved to delay my confession for a week or two and trust to some favourable opportunity of doing it discreetly.
Meantime Ariadne and I passed our time in a thoroughly idle and lotus-eating style. Each night I retired to bed meditating starting work next day, each morning I rose languid from those disturbing dreams with no thought for anything outside my love. She grew stronger every day, while I appeared to be taking her place as the invalid, yet I was more frantically in love than ever, and only happy when with her. She was my lode-star, my only joy--my life.
We did not go great distances, for I liked best to lie on the dry heath and watch her glowing face and intense eyes while I listened to the surging of the distant waves. It was love made me lazy, I thought, for unless a man has all he longs for beside him, he is apt to copy the domestic cat and bask in the sunshine.
I had been enchanted quickly. My disenchantment came as rapidly, although it was long before the poison left my blood.
One night, about a couple of weeks after my coming to the cottage, I had returned after a delicious moonlight walk with Ariadne. The night was warm and the moon at the full, therefore I left my bedroom window open to let in what little air there was.
I was more than usually fagged out, so that I had only strength enough to remove my boots and coat before I flung myself wearily on the coverlet and fell almost instantly asleep without tasting the nightcap draught that was constantly placed on the table, and which I had always drained thirstily.
I had a ghastly dream this night. I thought I saw a monster bat, with the face and tresses of Ariadne, fly into the open window and fasten its white teeth and scarlet lips on my arm. I tried to beat the horror away, but could not, for I seemed chained down and thralled also with drowsy delight as the beast sucked my blood with a gruesome rapture.
I looked out dreamily and saw a line of dead bodies of young men lying on the floor, each with a red mark on their arms, on the same part where the vampire was then sucking me, and I remembered having seen and wondered at such a mark on my own arm for the past fortnight. In a flash I understood the reason for my strange weakness, and at the same moment a sudden prick of pain roused me from my dreamy pleasure.
The vampire in her eagerness had bitten a little too deeply that night, unaware that I had not tasted the drugged draught. As I woke I saw her fully revealed by the midnight moon, with her black tresses flowing loosely, and with her red lips glued to my arm. With a shriek of horror I dashed her backwards, getting one last glimpse of her savage eyes, glowing white face and blood-stained red lips; then I rushed out to the night, moved on by my fear and hatred, nor did I pause in my mad flight until I had left miles between me and that accursed Cottage on the Moor.