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アナトール・フランス | (1844〜1924) | |
Anatole France | ||
フランスの小説家。本名ジャック・アナトール・フランソワ・チボー(Jacques
Anatole Francois Thibault)。1921年ノーベル文学賞受賞。大きく分けて、聖書に材を採ったキリスト教の愛に満ちた奇跡譚と、人間や社会批判を描いた二種類の作品があります。 青空文庫に、芥川龍之介が訳した「バルタザアル」という作品があるとおり、芥川をはじめとした目利きの文学者に愛された作家でした。 代表作は長編『シルヴェストル・ボナールの罪』『神々は渇く』『舞姫タイス』『赤い百合』、短編集『螺鈿の手箱』など多数。 |
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ノーベル文学賞受賞演説 わたくしは自分の晩年に、多くの勇者や美女たちを生んだあなたがたの美しい国を訪れてみたいという希望を、長いあいだ持ち続けてきました。感謝の念をこめて、わたくしは自分の文学的な経歴に花を飾るこの賞を受けることにいたします。高貴な感情を持つひとりの人物によって創設され、公正にして、かつ有能な審査員各位によって与えられる賞を受けることは、かけがえのない名誉だと思っております。フランス・アカデミーの会員として、ノーベル賞の文学部門について意見を述べるために、あなたがたに招待されたわたくしは、数回にわたり、あなたがたの選択に方向を与える喜びを持ったのであります。輝かしい文体と偉大な独立の思想を兼ね備えたメーテルリンクの場合もそうでしたし、また、ロマン・ロランの場合もそうでありました。あなたがたのほうでは、ロランのなかに、正義と平和を愛する人をお認めになりましたし、一方、ロランのほうでは、善良な人間としてとどまるために、不評とたたかうことができたのであります。 もしわたくしがいま、ノルウェー国会ノーベル委員会に言及するとしたら、わたくしはおそらく自分の能力の限界を踏み越えている、ということになるかもしれません。それにもかかわらず、わたくしがそれをするのは、同委員会の成した選択を讃えるためであります。ことによったら、わたくしは次のように言うことを許されるかもしれません、わたくしの見解によれば、あなたがたはブランティングのなかに、正義のために熱情を燃やす政治家を讃えられたのであります、と。民衆たちの運命が、そのような人物たちによって導かれますように! もっとも恐ろしい戦争に続いて平和条約が結ばれましたが、これは平和の条約ではなくて、戦争の継続なのであります。大臣たちの閣議において、良識がついに席を占めない限り、ヨーロッパは滅びてしまうでしょう。ヨーロッパ諸国のあいだで、結合と調和が勝利を収めるのを、十分な理由を持って望み得ないならば、わたくしは、紳士淑女のみなさま、すくなくとも次のように信じたいのです、あなたがたのように勇敢で、公正で、誠実な人たちのなかでは、時としては善意が勝利を収めるものであります、と。(鈴木力衛氏の訳文より) |
『螺鈿の手箱』 | 1892年発表 |
L'Etui de Nacre | |
アナトール・フランスの代表的な短編集。中井英夫が幼いころ愛読していて、氏の代表作『とらんぷ譚』に収録した〈ダイヤ〉の作品集のタイトルに、「真珠母の匣(L'Etui
de Nacre)」すなわち「螺鈿の手箱」と名付けたことも知られています。 前半にキリスト教を題材とした回心譚や奇跡譚、後半に恋と革命の話が収録されています。ちょうど真ん中に当たる「義勇兵の覚書き」は、敬虔な少年がやがて戦争にとられていくという、前半と後半の橋渡し的な作品です。巻頭と巻末にはそれぞれボーナス・トラックのような少し毛色の違った一編(「ユダヤの総督」と「鉛の兵隊」)が収録されていて、これがどちらもいい作品なんです。 |
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「ユダヤの総督」 | Le Procurateur De Judee |
巻頭にふさわしい素晴らしい作品です。わたしは〈ポンティウス・ピラトゥス〉というユダヤの総督が何者なのか知らずに読んだのですが、おかげでたいへんな衝撃を受けることができました。知ってから読み返してもものすごい作品です。普通はこんな角度からものを書けるものじゃありません。 登場人物がローマ人つまりローマ教徒なので、英語だと「Oh my God」とか「God bless you」に当たるようなセリフが、「Oh my Gods」とか「Gods bless you」みたいな複数形になっていたのが面白かった。(フランス語だと「dieu」と「dieux」ですね)。 |
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