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ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ (1814〜1873) 
Joseph Sheridan Le Fanu    
 アイルランドの小説家。ダブリン出身。トリニティ・カレッジにて弁護士の資格を取る。M・R・ジェイムズとかのベタぼめだったらしい。
 代表作は、短編「緑茶」「吸血鬼カーミラ」、長編『アンクル・サイラス』『ワイルダーの手』。『ワイルダーの手』は瀬戸川猛資さんが褒めてた。ドロシー・セイヤーズも「探偵小説論」の中で評価してる。「緑茶」もよくミステリのアンソロジーに採られているし、なんか幻想・怪奇畑の人のはずなのに、何故かミステリ畑で有名なのかも。



パーセルの書類 1838〜1840年ごろにかけて『ダブリン・ユニバーシティ・マガジン』に連載。出版されたのは死後の1880年。
ThePurcell Papers
 レ・ファニュ最初期の作品。パーセルという牧師さんが集めたアイルランドの伝説・民話・フォークロワを公開するという形式の短編集。
 『パーセル文書』の邦題で紹介されていることが多いのですが、〈文書〉だと何だか機密文書みたいなので、〈書類〉にしときました。
幽霊と接骨医 The Ghost and The Bonesetter
 アイルランド方言(訛り)で語られる、レ・ファニュのデビュー作。当事者の息子が話す話をそのまま速記したような形式の作品。いつか訛りを活かして訳したい。'原文を見る限りでは'e'音と'i'音が入れ替わった感じなので、東北弁とかになるのかな。
 同じレ・ファニュの「カーミラ」だったか「白い手の怪」だったか、あるいは谷崎『卍』、乱歩「人でなしの恋」、『ライ麦畑』なんかもそうだけど、〈ひとり語り〉形式の小説というのは個人的に読むのが苦手なので、訳すのもたぶん苦手なんだと思います。
ロバート・アーダー卿の運命 The Fortunes of Sir Robert Ardagh
 こういう話が一番嫌だ。同じ怖い話でも、落ちのすっきりした作品の方がいい。こういう宙ぶらりんな怖さの読後感というのは、もぞもぞしてくる。語りつくされているようでもあり、つくされてないようでもあり。それとも原典・典拠があるのかな。
 同じわけのわからない怖さでも、こう言うのが好きだ。『諸国百物語』より。

「雪隠のばけ物の事」
 ある人、雪隠へ行きければ、美しき喝食来たりて、かの男を見て、けしからず笑ふ。男、驚き、急ぎ立ち返り、かくの如くと人に語る。そのとき雪隠の内より、若き人の声して、からからと笑ふと思へば、くだんの男、立ち所に死にけり。いろいろ薬を用ゆれど、よみがへらず。みな人、不審をなしける。

 死んでるのに薬を使うというのがおちゃめだが、昔は仮死状態を死んだと思い、薬を使ったら生き返った、なんてことが多かったのかな。〈薬〉というのが〈仙薬・秘薬〉のことなのかもしれないが。

 この作品には墓の碑文にラテン語が出てくる。欧米の作品には何の註釈もなしにラテン語が出てくるので困る。日本の作品に註釈なしで古文とか漢文が出てくるような感じなのかなあ? 簡単な古文・漢文なら日本人は註釈なしで読めるものね。でも外国人は困るだろうに。
 ※李さんからのアドヴァイスにより若干手直し。ありがとうございます。
大酒飲みの夢 The Drunkard's Dream
 夢の怪談。パーセル文書第四話。臨死体験の物語です。臨死体験者の妻もまた夢を見ていたのか、それとも現実だったのか。しかし怪異ばかりに目がいって、死者の魂が天国に行けたのかどうかまったく気にしてない神父さんはどうかとも思う。


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