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秘密

シャーロット・アームストロング


第七章

 木曜日、アリスは簡素で事務的なグレイのスーツ姿で歩いてゆくと、開店の十五分後に銀行の支店に入った。行員が笑みを浮かべて挨拶をする。考えてきたとおりに臆せず挨拶を返した。「アリス・ペイジですが、夫が急用で出かけるときに、いつでも使えるようにとトラヴェラーズ・チェックにサインしてくれたんですけれど。おじのグレゴリー・スタフォードが……」(わかったというように頷く行員を見て一安心した。)「……必要があれば電話するようにと言っていました」

「かしこまりました、ええ……ペイジさま」アリスは小切手帳から一枚破り取った。行員は小切手を調べてから慎重に笑みを浮かべた。「恐れ入りますが、お電話で確認させていただきます」

「そうしてください」淑やかにカウンターに体重を預けた。

 今朝は誰にも会わずに来た。エレンに言伝を頼んだ。散歩に出かける。散策してくる、と。

 行員はグレゴリーのことをよく知っていたようだ。

「どうも。ハンク・ボウマンです。アンソニー・ペイジ夫人がお見えですが……このトラヴェラーズ・チェックはどのような?」

 結局は満面の笑顔だった。「問題ないそうです、ペイジさま」

 今や完璧なものとなった小切手をアリスは手渡した。

 十五分後には、バッグに三百ドルを入れて銀行をあとにしていた。

 ピール夫人がいるはずの住所は、アリスにとって何の手がかりにもならなかった。通りを見回したが、流しているタクシーは見つからない。そこで電話を探してタクシーを呼んだ。行き先の番地を告げるとドライバーは驚いたようだった。「七ドル半かかりますよ」気が進まぬ様子で忠告した。

 アリスは気にせずうながした。遠慮は要らない。あの家から離れるのが気持ちよかった。ピール夫人について知っていることを考え始めた。

 長い移動が終わったところでタクシーを帰した。帰りも乗れるほど贅沢をする余裕がない。

 目立たぬ家並みの中にたたずむ二階建ての建物を見上げた。二棟に分かれていたので、どちらのドアから入ればいいのかわからなかった。

「アリス!」頭上から呼ぶ声がした。「上がんなよ! 右側のドア」

 右側のドアを開けると、狭くて暗くて急な階段を上っていった。てっぺんにたどり着くとドアからピール夫人が招き入れた。

 見回すと、床の上にスーツケースが何個かある。控えめな黒服姿で旅行用に着替えていたのだ。アリスはスーツケースを見つめ続けて目で問いかけた。

「出かけたかったんだけどさぁ」いらいらと興奮していたせいで、必要以上に親しげだった。「ケリーがね、支度はできてんだけど半日仕事でね。まぁあんたと仕事を待っていた、っつうとこだね」

「わかった」アリスはバッグを開いた。黒い瞳がその手に吸い寄せられる。「ここにあるけど、でも息子さんには何て言ったの?」

 すぐに答えが返ってきた。「何も。あんたの名前も。知り合いだってことも。特別手当がもらえるんだって言っといたよ。納得してた」

 アリスはなおもゆっくりと話しつづけた。「これをあげなかったとしたら、どうします?」

「へぇ、どうやって出かけたらいいんだい」怒りがにじんでいた。「期待してたんだ。わかってるだろう」

「じゃあ出かけられないとしたら、どうするの?」

 夫人は腹を立てたようだった。「ねえいいかい。親切は親切だ、そうだろう。期待してたんだよ。あんたが自分で言ったことをやらないっていうんなら、あたしもどうだろうね?」顔が戦いを挑んでいた。

 アリスは札束をテーブルの上に置いた。ピール夫人の手が矢のようにのびた。すかさずアリスが言った。「今あなたのやっていることは犯罪よ。ことによると刑務所行き」

 ピール夫人はひるんだが――お金から手を離しはしなかった。

「いま話したのは恐喝のことです」アリスはきっぱりと伝えた。「でもお金は返してもらわなくていい。あげます。言いたかったのは――万がいち取引の条件を守らなかったときは、刑務所に送ることもできるし、そうするつもりもあるってこと」

「なに言ってんだい? 恐喝! 恐喝って聞こえたけど」

「ええ、そうでしょう? 脅迫というのは両刃の剣だと覚えておいて」

 ピール夫人が息を呑んだ。「ちょっと、もし何かうまくいかなかったとして、しかもあたしに責任がないってときはどうなのさ?」

「そのときはわかる」アリスは冷やかだった。

「あたしが話に乗ると思ってんのかい」

 アリスは冷たく答えた。「きっとそうすると思う。だってお金は返さなくていいんだもの。黙ってさえいればいいの。それだけ。じゃあさよなら、ピールさん」手をあげた。「旅行を楽しんできてね」

「そう願うよ」ピール夫人が機械的に答えた。手にはお札があった。「お互い納得したわけだね」

「間違いなく。二人とも、誰にも何にもしゃべらない。わたしがここに来たこともしゃべらないでね」

「ああ、わかったよ」呼鈴が鳴った。「あんたもね。誰だろう?」夫人は窓に近寄った。「黄色い車に乗ってる人だね」

「この階段のほかに、下りる方法はない?」息を呑んだのが自分でもわかった。アリス・ハンセン・ペイジはこの階段で誰とも会わない方がいい。そう思いながら、頭の中で記憶を探っていた。黄色い車? 「見られない方がいいと思うの」息が苦しくなる。

 ピール夫人は薄い口唇を噛んだ。視線がさまよっている。おそらく『犯罪』という言葉が記憶に残っているのだ。「そこの廊下じゃだめかい? なら台所に行きな。たぶんセールスマンだよ」ピール夫人はスカートをたくし上げると、太股とストッキングのあいだにお金を差し込んだ。「誰だか知んないけど、帰ったら教えるよ。いいね?」

 アリスは居間を出て狭い廊下に足を入れた。棟の真ん中を通って裏手の日向部屋に通じているようだ。ドアを引いて閉めた。埃だらけで静まりかえっていた。ピール夫人が応える声がした。「誰だい?」

 次に、半ば予期していたとおりの、馴染みのある落ち着いた声が聞こえた。「ピールさんですか? デヴォンと言います。ドクター・ウォルター・デヴォン。スタフォードの友人です」

 夫人がすぐに答えた。「十ドル未払いなんだ。持ってきてくれたのかい?」

「実はそのようなわけでしてね」声音の裏に、おもねるような調子と、かすかに驚きながらも楽しんでいるような調子が聞き取れた。

「そりゃありがとう」喜んでいるようだ。「助かるね」

「いや、ここに来たのは、ペイジ夫人の友人でもあるからなんですがね」医師の目と微笑みが目に見えるようだった。「できるかぎり力になりたいものですから」

 静寂ができた。すぐにピール夫人がひとこと答えた。「ああ、そうでしょうとも」

「すっかり話してもらったんですよ」医師が喉を鳴らす。「あの問題のことを」(不意にアリスは鼻を鳴らした。)

「はあ?」ピール夫人は曖昧に答える。(アリスは両手を握りしめた。)

「あなたも力になろうとしてらしたんでしょう」優しげな声が続ける。「インディアナでお知り合いだったそうですが、確かそうでしたな……?」

「はあ?」ピール夫人は笑い飛ばした。「なに言ってんだかわかんないよ。あんた誰だい。問題なんて知らないし。これからもないだろうね。十ドルありがとさん、それじゃあ。ちょっと忙しいんだ」

 アリスは心臓をばくばくさせながらドアの後ろに立っていた。眩暈を感じて、身体を楽に支えようと壁に手をついた。よくわからない。でもデヴォン医師は嘘をついている! ピール夫人はそれに気づかないほど間抜けではなかった。アリスの側につけと勘が働いた!

「待つんだ」もはや優しくはない声が聞こえた。

 がらんとして、簡素で、廃墟のような部屋の中で、医師の目が夫人を問いつめていた。ババアのくせに。親切にやっていたんでは駄目なタイプらしい。愛想も駄目か。「話をしようじゃないか」荒々しい声だった。「その方がよくはないかな」

 夫人が口を広げて嘲るような笑いを見せた。

「アリス・ペイジからイヤリングをもらったな」脅すような響きがあった。

「だけど返しちまった」食ってかかった。

「馘首になっただろう」

「それで?」相手をしっかりと睨みつけていた。

「アリスが言うには、あんたの息子と結婚していたそうだ」とうとう蔑むような笑みを見せた。否定されることを予期していたのではなく、わかっていた。

「まさか!」鼻を鳴らした。「そんなこと言うわけないよ!」

「断言しよう」喉が渇いたように口唇を開いた。

「嘘だね!」完全に馬鹿にしていた。端から信じようとはしていなかったから、たとえ真実だったとしてもいらいらするだけだった。

「なぜそう思うんだ」ぞんざいにたずねた。

「へえ、知りたいかい?」怒ったように頭を揺らす。「けどあんた誰さ?」

あなたをひどい目に遭わせることのできる者です」そのつもりはなくとも脅すような色を帯びていた。

「そうかい?」見えざる危険を感じ取った。

「息子さんをひどい目に遭わせることもできます」さらに圧力をかけようとした。

 ピール夫人の黒い瞳がきらりと光った。「ふん、できるもんか。もう帰ってもらえないかい? あんたに用はないよ」面と向かって挑むような顔には怒りが見えていた。

「今日アリスに会ったか?」

「いいや。帰っとくれ」

 医師は夫人を見つめた。「息子はどこだ? ここにいるのか?」

「誰もいないよ。それに、せがれがどこにいようとあんたにゃ関係ないだろう」

 医師は落ち着いて態度を硬化させた。「ピールさん、アリスには言いたくないことがあるはずだ」

「そうなのかい?」まるでからかっていた。「アリスに話を聞いたなんて言ったのはあんただけだよ。ねえ、先生、だいたいあんた誰なんです?」ピールは強く手ごわかった。騙すことはできなかった。脅すこともできない。圧力もかけられない。

「あなたは教えてくれるだろうね」

「へえ、あたしが? このいかれぽんち!」

 医師は一縷の望みを覚えて、冷たく言い放った。「教えないと言うのなら、息子さんを逮捕させる」

「ふん、黙んな」もううんざりだ。

 医師は怒りが湧くのを感じていた。

「警察に友人がいるんだ……」

「馬鹿にすんじゃないよ。そうなんだろうさ」攻撃的な一言。「お疲れさん!」

 危険な人物であるとは思ってもいないのだ。

 けれど医師こそが! この男こそが!

「とっとと帰んな。忙しいんだよ」頑丈そうな腕を持ち上げ、大きな手を医師の胸に当てると、わがままな子どもをあしらうように押しやった。

 よろめいて医師はかっとなった。こんな侮辱を受けては我慢できない。「いいか、ばあさん」声は悪意に満ちていた。「ヤクの密売で息子を逮捕させたいのか?」

「頭おかしいんじゃないの」

「ほう、そう思うかね?」医師は夫人の手首をつかんでねじあげた。怒りで我を忘れ、それがいっそう怒りを注いでいた。「もういいだろう。たわごとはたくさんだ。アリス・ペイジと何があった?」

「知りたいだろう?」怒りに燃えたピール夫人の目があざ笑っていた。「たわごとって言ったね、いい加減にしたらどうさ。逮捕するって! 麻薬の密売!」おかしさのあまり夫人の声が裏返った。

「逮捕させることなど簡単なのがわからぬようだね。信じた方がいい」

「信じるもんか! 出てった方がいいよ、じゃないと階段からほうり出してやる」

 医師が指に力を込めたので、夫人が声をあげ、すぐに取っ組み合いを始めた。

 馬鹿力のある夫人の腕を、医師は片手で押さえていた。いつの間にか、少しドアの方に移動していた。すぐに階段の手前にたどり着く。歯を食いしばりながら医師が言った。「話してくれたら、帰してやる……」

 あえぎながら夫人が答える。「勘違いしてるようだね、先生。あたしにはあんたを帰すつもりはないよ……もうすぐせがれが帰ってくる……あんたなんかこてんぱんにぶちのめしてくれるよ……」

 医師の手がきりきりと痛んだ。

「麻薬だって!」夫人が叫んだ。「麻薬だって? ふん、あんたと麻薬のことを話そうじゃないか。警察に友だちができたのかい。前にあんたみたいなおせっかいの話を聞いたことあるよ。試してみたってわけだ……さぞや警察の聞きたい話だろうね!」

 しゃべりすぎたことに医師自身も気づいた。がむしゃらになって両手、両腕に――力ずくの人生のなかでも初めてといっていいほどの力を込めて――そしてすべてが終わった。夫人がよろめくと、一言も発さずに、ビルのような身体のバランスが崩れた。大きな音を立てて階段を落ちていった。


 ドアの後ろに隠れていたアリスの背筋が冷たく震えた。手に汗がにじんでいた。ありったけの力で両手を壁に押し当てた。二人がどんな取っ組み合いをしていようと、ドアを開けて止めに行くべきだった。でも止められただろうか? それに二人は何をしているのだろう? アリスにはわからなかった!

 何も聞こえない。静まりかえっていた。夫人の金切り声はもちろん話し声すら聞こえない。物音がするまではどうしても動けなかった。

 静かなままだった。医師は帰ったのだろうか? 夫人はうまく逃げたのか?

 階段を上る足音が聞こえた。

 身体中に緊張が走って硬くなり、麻痺してしまった。ピール夫人なら声を出すはずだ。誰の声もしない。ということは、あれは医師で、ドアの外を歩き回っているのだ。

 医師が犯人だった、犯罪者だった! 騙していたのだ! 脅迫していたのだ! 麻薬患者が脅されていたのだ! そして脅迫は犯罪だ! 医師が犯人だ

 暴力もお手のものなのだろう。ピール夫人はどこかで殴り倒されてしまったに違いない。夫人のものらしき物音はなかった。

 突然、二フィート先のドアノブが音を立てたので、アリスは壁にぴったりと貼りついたが、指のあいだから汗がしたたり落ちていた。息も止めていた。

 そばのドアが開いた。扉が顔の前で揺れていた。動くことも息をすることもできない。扉がアリスの身体に当たって軽く押し戻されたとしたら、医師も気づいただろう。アリスを見つけていただろう。

 扉はそれほど大きくは揺れなかった。

 医師の呼吸が聞こえる。部屋に入っては来なかった。きっと廊下越しに台所の方を確かめているのだろう。

 建物中が静かだった。まったくの無音。

 不意に扉が揺れて離れた。かちゃりという音。遠ざかる足音が聞こえた。

 足音は忍び足でゆっくりと階段を下りていった。アリスは息をついたが、身体を動かしはしなかった。

 同じ場所で石のようにかたまっていた。すぐに人がやってくる。息子のケリーが帰ってくる時間だ。動かなければならないのはわかっていた。秘密を守るために体を張って戦い、脅しに屈しなかった、信頼できるピール夫人を助けるために何かできるはずだ。行かなくては。助けなくては。

 こうした思いが四肢を恐怖から解放した。

 震えながら壁から離れた。ドアが開くとき大きな音をたててしまい、心臓が止まりそうになった。静まりかえった居間には誰もいなかった。スーツケースが床に置かれている。かすかな風が窓の薄いカーテンを揺らしている。

 足音を忍ばせて通りを見下ろした。黄色い車はない。車は一台もなかった。

 ピールさんはどこ?

 部屋を出て階段口まで向かった。

 ピール夫人が階段の中ほどにさかさまに倒れており、スカートが膝までまくれていた。

 アリスは壁に手をついてぶるぶると、ぶるぶると震えながら下りていった。

 夫人の首が曲がっていた。生きているわけがない、それほどねじれていた。

 夫人には触らなかった。スカートの下のストッキングにお金が挟んであるのも思い出さなかった。頭に浮かんだのは殺人のことだ。警察。それが何度も頭に浮かんだ。

 新たな疑問が湧いて出てきた。叫び声や物音を聞きつけた人はいないのだろうか? 下の部屋には誰かいなかったのだろうか? いないのだ。聞こえたのなら、とうに見に来ているだろう。

 汗ですべる手にバッグを握る。横たわる身体を慎重によけて階段を下りた。引きつる心臓がピール夫人に別れを告げた。外に出ようと肩でドアを押した。ドアが開いた。

 表に飛び出すと、足を震わせながらもできるだけゆっくりと落ち着いて歩いた。一階の部屋にはブラインドが下りていた。まわりには誰もいない。ありがたいことに曲がり角まではほんの少しだった。事務所の窓から時計が見える。一一:一〇。アリスは道を曲がった。あの事務所には誰もいないのだろうか? 折れた坂道を上り始めた。次の角を曲がる。そして次――理由などない、ただ離れたいだけだった。


 アリスは殺人を目の当たりにしたのだ。なのに一言も洩らすことはできない!

 二マイル歩くうちに、どこに来たのかもわからず道に迷ってしまったアリスは、心の中でそう誓った。何度も何度も繰り返した。

 一言も洩らせない。

 デヴォン医師こそが、トニーが追っていた裏切者だったのだから。警察は、囚人が連絡を取れないようにすることはできないのだから。ピール夫人の死について見聞きしたことを話せば、警察は間違いなくデヴォン医師を逮捕する。でも弁護士がいる。伝言を託すことができる。

 警察に話せば、アリスが現場で何をしていたのか知りたがるだろう。どうしてあそこに行ったのか? どうして隠れていたのか? どうして夫人にお金を渡したのか?(そうだ、お金だ! お金は持って帰るべきだった。もう遅すぎる。)

 理由を言わずに何をしていたかを話すだけで、警察の尋問を乗り切れるとは思えない。不可能だ。警察はしつこい。ノウハウがある。トニーの居場所は知られてしまうだろう。警察が秘密を守ってくれるだなんて信じられるだろうか? 法制機関も腐敗しているのだ、さもなければトニーが出かける必要なんてなかった。

 たとえ腐敗してなくとも、アリスの話はデヴォン医師の耳に入るのだ。デヴォンと弁護士は、一番の利害関係者なのだから、知る権利がある。そうすればデヴォンはメキシコに伝言を送ることができる。トニーは罠にはまる。トニーは死んでしまうだろう。死体。ピール夫人のような死体。

 いやだ、一言も洩らせない。

 第一の隠しごとに、もう一つ恐ろしい隠しごとが加わってしまった。

 トニーが無事に戻ってきたら、そのときに話すことができる。


 寒くて気分が悪かった。服が背中の水分を吸い始めていた。カウンターでスープを一杯飲んだ。温もりが心地よかった。ようやく落ち着きを取り戻し、帰り道で自分の立場を考えた。やることは一つだし、一つしかない。家に戻ったらピール夫人がまだ生きているかのように振る舞わなくては。


Charlotte Armstrong "THE GIRL WITH A SECRET" CHAPTER 7 の全訳です。


Ver.1 05/01/05

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