翻訳(不定期)日記〜2003年上半期〜
HOME 翻訳作品 戻る 2003年下半期に
翻訳作品について |
翻訳がらみのことやサイトについての連絡 |
03/06/30 |
『知りすぎた男』第八話「像の復讐」を改訳改訳。まったく進みません。訳す前にまずは歴史を勉強しなければならないのですが。 戦時中(開戦前夜)が舞台なのですが、イギリスとどこが戦っているのかいまだにわかりません。いろいろ調べてはいるのですが。 (1)アイルランド人がイギリス軍に混じってる。 (2)ドーバー海峡らしきところで合図を送った。 (3)西に本部がある。 (4)シベリアの新勢力を日本が支援している。 (5)中国人労働者を雇っている。 (6)イギリス本土(ドーバー)で砲撃が行われたような形跡がある。 以上すべてを満たす(特に6を満たす)歴史上の出来事って見つからないんですよね。 |
03/06/29 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第十三章「トトルズの本気」の冒頭up。「What Tottles Meant」と「and he meant it.」を上手く訳せなくて、やたら時間がかかってる。そのくせ、地を這うようなリズム感のない詩の訳になってしまった。そもそも「Tottles」って誰? |
03/06/29 |
太田という議員が「レイプする人はまだ元気があるから」とか言ったのを陳謝してたけど、根本的に間違ってるような。「プロポーズする勇気のない男が増えた」という喩えだったらしいのだが、そもそも「プロポーズ」と「少子化」って関係ないじゃん。〈結婚=子供〉って短絡的な発想してる時点ですでに問題発言のような気が。 |
03/06/20 |
やっぱり一つの作品は一息に訳さないとダメですねえ。久しぶりに『知りすぎた男』第八話「像の復讐」の訳に取りかかったのだけれど、自分なりのキャラ設定読解・セリフ口調をすっかり忘れてしまっている。 しかしそれにしてもフィッシャーはかっこいいな。ハロルド・マーチとツーリング。バイクにまたがる名探偵なんて、まるで『異邦の騎士』みたいじゃないか! こうなってくると、今までブラウン神父みたいに訳してたのに、御手洗潔みたいに訳したくなってくる。 「気怠い」という設定から、フィッシャーに〈だらだら敬語口調〉でしゃべらせていたのだけれど、考えてみるとホームズだって御手洗だってやる気のないときはとことん無気力なんですよね。でもってこのふたりは〈だらだら敬語口調〉でなんかしゃべっていないわけで。 自分の中の「気怠い」のイメージの貧困から〈だらだら敬語口調〉にしてしまったけど、愛国心あふれる熱血漢でもあったんですよねえ。 |
03/06/19 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第十二章「妖精の調べ」、ようやく完了。 『知りすぎていた男』第七話「忘れられた神殿」もそうだったが、訳が進まないというのは話がつまらないということなのだろうか? 確かにこの章のミステル=教授の話は、これまでのような与太話というよりアーサーが話すような風刺・批判的な話ではあったけれども。 少し訳しづらい表現が多かっただけかな。おまけにフランス人のちんちくりん英語だし。 日本語の「鈍器」の意味がわからない子供などいないのと同様、「フランス語」という単語の意味のわからない日本人の子供など存在しないと思う。ところが英語だと「france」と「french」(「フランス」と「フレンチ」)のあいだのつながりに気づかないこともあり得るのでしょう。ところがそれを日本語に訳すとなると難しい。何しろ「フランス語」という日本語を聞き間違える子供などまず存在しないのだから。拙訳では結局「フレンチ」と「ハレンチ」にしたのだけれど、今度は逆に、「ハレンチ」なんてことばを今時の子供は知っているのだろうか? ちなみにブルーノは「french」を「flench」と聞き間違えました。イギリス人でも「R」と「L」を聞き間違えるのだとわかってうれしい。そういえばビートルズの「ノルウェイの森」にも「rug」は「log」の間違いだという説があったような。 P.S. WOWOWで放映していたブレンダン・フレイザーの『タイムトラベラー/昨日から来た恋人』を見ていたら、「ハレンチ」「フランス語」というやりとりの字幕が出てきたので、もしかするとこの章と同様のやりとりだったのかもしれません。セリフを聞き取る気など全くなく鑑賞していたので、英語で何と言っていたのかは不明ですが。また放映されたらビデオにとって確認してみようと思ってます。 |
03/06/18 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第十二章、結局途中までしか終わらない(T_T)。たった三ページ。いったいいつまでかかるのだろう。 |
03/06/18 |
暑い夏が苦手なこともあって、訳が全然進みません。こればっかりはどうにもならない。頭がまったく働きません。 キャロルの訳なんて、一章訳すのに十日以上もかかってるんですね。今日中に訳し終えられるだろうか? |
03/06/11 |
飽きっぽいもので、チェスタトンやキャロルを一気に終わらせられずに、今回は〈ホームズのライバルたち〉に息抜きです。 『森林探偵ノーヴェンバー・ジョー』第一章「アンドリュー卿の助言」を追加しました。ホームズパロディはやりたいなあと思っていたのですが、厳密にはパロディではなく〈ライバルたち〉になっちゃいました。 この作品を知ったのは小山正編『バカミスの世界』の「ホームズのライバルたち」の章。 今回訳した第一章にはまだ主役のノーヴェンバー・ジョーは登場しませんが、堂々バカっぷりを披露してくれてます。『バカミスの世界』を読んだときは、「なぜ木こりなんだ!?」とその意味不明さに悶絶したものですが、今回読んでみてさらに困ってしまいました。 アンドリュー卿に言わせると、「シャーロック・ホームズは犯人を狩る狩人」であり、それは「狩猟のガイドを務める木こり(森番)の日常と同じ」なのだそうです。 さらにノーヴェンバー・ジョーの年齢が24才という微妙さがたまりません。「少年」とか「青年」「若者」ならともかく、具体的な年齢を明かされてもなあ。 ワトスン役が過労気味のやり手実業家だとか、とにかくつっこみ所満載です。 |
03/06/10 |
以前ラテン語のことで「李」さんからアドヴァイスをいただきました。そこで、ラテン語の教授をなさっている方のホームページを捜したのですが、たどり着いてみるとそこにはラテン語の文法の基礎が書かれておりました。個人的な趣味のことでいきなりプロの方に質問するのは気が引けるので、まずはそのページをじっくり拝読。 目から鱗が落ちましたね。ラテン語では主語代名詞を省くこともでき、動詞の格変化で主格の性数人称が表されるんだそうです。なーる。それがわかってみると手強いのは格変化だけで、構文は英語と変わらないような気もします。 李さん&宮崎助教授に感謝!! |
03/06/09 |
『知りすぎた男』第八話(最終話)「像の復讐」に取りかかりました。というか前から少しは取りかかっていたんですけど、七話の「忘れられた神殿」が長いしつまらないしでなかなか進まなかったもので、気づけばいつのまにか六月。(しかもまだ「忘れられた神殿」は清書の推敲をしてないし)。 最終話にふさわしく、お決まりのあれです。そう、あれなんです。 う〜ん、だけど。〈お決まりの〉なんて書きましたけど、この作品が発表された頃には「ドルリー・レーン」も「エルキュール・ポワロ」もまだ書かれていないんですね。もしかしてこの作品が元祖?と思っていろいろ記憶を探ってみたのですが、いましたね「隅の老人」が。 ただし意外性だけを狙った「隅の老人」とは違い、この作品のこの趣向は、テーマから言っても、こうなるべくしてなった、という感じです。 |
03/06/08 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第十一章「月の人」が終わりました。‘world’の意味がわからなくてちょっと時間がかかってしまいました。辞書をちゃんと調べれば何のことはない「天体」とか「地球」という意味も載っているのに、日本語の感覚ではどうしても「世界」が「丸い」ということが理解できなくて、なぜ‘on opposite side’に立つとシルヴィーが見えないのか悩みまくってしまいました。 そりゃあ二人分の大きさしかない星で、一人が南極に立っていたら、もう一人は北極しか立つ場所がありません。 しかしこの章のミステルの挿絵はひどいな。水木しげるの妖怪図鑑でこんな妖怪見たことある。人間はおろか妖精ですらない。教授自身は愛嬌のある顔のはずなんですけどね。 |
03/06/04 | |
チェスタトン第七話「忘れられた神殿」、ようやっとひととおり終わりました。全八話の中で一番長い話。時系列的には一番早い話。 と聞くと、『知りすぎた男』を全部お読みになってくれた方ならおわかりと思いますが、第二話「消える王子」が〈最初の事件〉だ、とフィッシャー自身が述べておりましたことと矛盾するのではないか、といぶかりますが、つまりは本作は刑事事件ではないということですね。 では何事件だ、というと、刑事事件もないわけじゃないのですが、でもメインは政治事件とでもいうべきなのか? 正直言って作品集の中で一番つまらない! 一番長い話なのにもかかわらず、です。これはぼくが政治が苦手だからそう思うだけなのか、作品自体がつまらないのか、政治好きの人に判断してもらいたいところです。 |
03/05/31 | 『英語の感覚』大津栄一郎 |
原理を論じるなら、ある程度は抽象論にならざるを得ない。だけどあまりにピンと来なすぎ。 例えば冠詞の扱いにしても、同じ岩波新書のマーク・ピーターセンの〈エッセイ〉と比べるとよくわかる。 ピーターセンは「鶏肉」という具体的なエピソードから話し始め、そこから原理を結論づける。それに対し本書は、先に結論(原理)を述べてから後々論証していくという、〈論文〉の手順の一つを踏んでいる。だけどこれが論文としてはおそろしく独りよがり。自分で否定の論証をあげておきながらそれを無視したり、「名詞の人格化」とか「動く自己」とかセンスのない感覚的すぎる独自の用語を多用したり。 ところがところが。肝心の原理はどうか、というとこれがいちいち納得の内容なのです。 たぶん新書ということで、わざとわかりやすくかみ砕いた独自の用語を使ったり、専門的にならないように感覚的な筆運びにならざるを得なかったんだろうけど、中途半端と言わせてもらいましょう。☆原理だけ盗め! |
03/05/30 |
今さらながらというか何というか。対応する日本語が何というのかちょっとわからなかったりする。選挙事務所の‘agent’は、「代理人」でいいのだろうか? |
03/05/28 |
キャロル『シルヴィーとブルーノ完結編』第十章「おしゃべりとジャム」を追加。 「year」と「ear」だけじゃなく、音楽的な「ear」とか、ミステル(マイン・ヘア)の「hair」とか、微妙にリンクしている気もするのですが、こればっかりはぴったりの日本語がないとどうにもなりません。理屈にこだわるあまり、単純な取り違えを複雑にしてしまってもしょうがないし……。 「耳」「髪」ときて、タイトルは「口」に関係があるというのはあまりにも穿ちすぎかな? |
03/05/24 |
キャロル『シルヴィーとブルーノ完結編』第九章「お別れ会」が完成しました。〈ミステル〉がちょっと不完全燃焼で残念。アーサー、自分たちのおめでたい席でそんなこと言うなよ。しかし‘honeymoon’を何と訳せばいいんでしょう? 内容から言えば「新婚旅行」ではなく、「婚約旅行」なんですよね。 さらに無謀にも、〈詳註版〉『シルヴィーとブルーノ』を作ろうと考えております。地道に取りかかります。 |
03/05/22 |
チェスタトン『知りすぎた男』第七話「忘れられた神殿」ようやくめどがついてきました。(そうは言ってもようやくイントロの1ブロックを公開しただけですが) こんなに難しかったかなあ? チェスタトン? 今までのでいちばん難しい。今までは、長いセンテンスは途中で切ってなるべくわかりやすくしてたんだけど、この話はセンテンスに切れ目がない感じ。 でもそのせいで節をつけたみたいな文章になって、訳してて楽しい(ような気がする)。読みやすいかどうかは別問題だけど。 |
03/05/20 | 『不思議の国のアリス』 |
う〜ん、訳が進まないのは、読んでばかりいるのも原因だ。昔買った子供向け『アリス』、金子國義の挿絵がほしくて手に入れた『アリス』、ガードナーの『詳注版』と『新注版』。ことばのセンスを磨こうと、上記四冊×(『不思議』+『鏡』)なのだから、通読でないにしたって時間がかかる。Webの訳もあるし。 「ティーパーティ」の訳を高山さんので読むと、帽子屋と三月ウサギがやたらキツかったり(もっと愛嬌のあるイメージだったんだけどな)、山形さんって意外とことば遊びは苦手なんだなって思ったり、いろいろ発見はあったけれど、むしろそれより解説(訳者あとがき)で訳者が自分の『アリス』訳の方法論・ポリシーなんかを表明していて、たいへんためになった。 |
03/05/20 |
やっと『シルヴィーとブルーノ完結編』が、第八章「こかげにて」まで終わりました。なんかどんどんペースが遅くなってきます。ことば遊びの罠にはまっていっているようです。 ここまで訳して、序文からもう一度確認してみると、また以前は気づかなかったことば遊びが見つかるものなんですね。ひとまず序文・一章・七章を訳し直しました。 だけどチェスタトンにもことば遊びは多いし、いつか訳したいと思っているシェイクスピアにもことば遊びはあるし、イギリス人ってのは……。 |
03/05/20 | 『三つ目がとおる』 三つ目登場 |
単行本未収録の「文福登場」が収録されているというのにつられて買ってみました。コンビニ向け廉価コミック。 きっとこの〈文福〉って、登場したきり退場してしまったんだろうな。(→その後、そんなことなかったことが判明。文福は他作品にも登場してました。)「著者の意向で……」とかいう理由で発表したきり埋もれてしまう作品もあるというのに、こんな形で復刻されるのは嬉しい。単行本ではなく雑誌扱いのコンビニコミックだから可能、ということか。 でもディズニーとかサザエさん、手塚プロダクションというのは、「○○の精神を守り続ける」とか言って自由がきかないのという印象だったのに、見直しました。 でもだとすると、アニメ化のたびにロビタのデザインが変わるのは手塚治虫の意向なんだろうか。あれは〈ロビタ〉という一つの人格を、単なる「ロボット」としてしか見ていないようで気になるのだけれど。〈アトム〉のデザインはアニメ化のたびに変えないものね。 |
03/05/17 |
The Rabbit Holeという、ルイス・キャロルに関するホームページを見ていたら、『シルヴィーとブルーノ完結編』の献詩にもアクロスティックが織り込まれていることが判明。訳し直さねば……。 何もないのは変だとは思っていたんだけれど、三番目の文字を拾って読むと、なんて普通気づかないってば。 |
03/05/16 |
チェスタトンの訳がなかなか進まない。気分転換にほかの作品を訳し始めてますます進まなくなる。 |
03/05/15 | 村上博基さんについて | |
アイリッシュ(ウールリッチ)の翻訳者としては稲葉明雄氏が有名ですが、創元の短編集も外せません。「ハミング・バード帰る」の冒頭なんて、一生忘れません。 無知とは恐ろしいもので、あんまり聞かない地味な訳者だけど、けっこういい訳するんだよなあ、くらいに思ってました。が、そのうち読み比べたりして、村上さんの訳が決定的に好きになりました。 例えば「送って行くよ、キャスリーン」の一節。 「夜はダーク・ブルー、頭上には大きな銀貨が一枚はめこまれて、月になっていた。」 ほかの訳者さんの訳ではこう。 「夜はダークブルー、空には大きな銀貨のような月が貼りついていた。」 原文は a big silver-doller for a moon was stuck it up above. 直訳すると、「空には月のかわりに大きな銀貨が貼りついていた」でしょうか。 ウールリッチ好きは、こーゆーこてこての比喩が大好きなんです。だからもうこれでもかっていうくらいにウールリッチ節に訳してくれている村上さんの訳を崇拝したくなっちゃうわけなんですが、 山岡洋一さんが『翻訳通信』で「翻訳ベスト50」に挙げてらっしゃって、己の不明を恥じました。周知の名翻訳家だったんですね。 |
03/05/01 |
アナトール・フランス『螺鈿の手箱』巻頭の「ユダヤの総督」を訳し始めました。 サイトの名前をフランスの作品から採っているくせに、今頃になってやっと取りかかることができました。 短編集『螺鈿の手箱』は、前半が宗教譚、後半が恋と革命の話、という構成になっています。巻頭と巻末の一編がそれぞれプロローグとエピローグみたいな一種の番外編になっていて、ほかの作品とは少し毛色の違った作品になっています。お気に入りはやっぱりこの二編でしょうか。 「ユダヤの総督」はマイ・最後の一行大賞ですね。ポンティウス・ピラトゥスに対する知識がなかったもので。なんというか、こういう作品を書いて、悪意ではなく敬虔さを感じさせるところがすごい。 |
03/04/29 |
『知りすぎた男』第六話「塀の穴」を追加しました。これまでは、英語の駄洒落があってもできるかぎり日本語で訳そうと思っていたのですが、とうとうこれはルビで対応するしかなくなってしまいました。ミステリとして肝心なところに言葉遊びが使われているのだからどうしようもありません。 「霊媒師ならとうに修道士の幽霊を目撃したことだろう」というさりげないひとことに、評論家としてのチェスタトンが顔を覗かせているように思います。修道士の幽霊がいるから目撃するのではなく、昔修道院があったと思っているから目撃すると言っているわけでしょう。〈幽霊とは自己暗示なり〉。迷信を嫌ったチェスタトンらしい一文だと思います。 〈考古学者と建築家〉の共通点はわかりますが、〈アル中患者と外交官〉や〈ねずみ取り業者と論理学者〉の共通点は何でしょう? まるでキャロルのなぞなぞみたいです。 |
03/04/21 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第五章「マチルダ・ジェーン」を追加しました。ブルーノが暗唱させられる〈詩集〉ってのがなんのことだか始めはわからなかったのですが、どうやらイギリスのマザー・グースみたいな詩集には、ナンセンス詩だけじゃなく、なぞなぞ、アルファベットや数字の勉強、そしてマナーの詩というのがあるようです。 『アリス』二作にくらべ説教臭さが目立つと言われる『シルヴィーとブルーノ』ですが、ここは説教臭さをからかってるようにも見えます。アリスが学校で習った詩を暗唱しようとすると、デタラメでとんでもない歌詞が口をついて出てくる、というのにくらべると、ブルーノの〈教訓〉はややおとなしいですが。 |
03/04/04 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第四章「犬の王様」を追加しました。いきなり登場のこの「犬の王様」ネロですが、正編の第十三章に出てくる犬の国の王様です。 前章でも本章でも、いかにも「いたずら好きの妖精」といった〈妖精〉のイメージどおりなところがあります。シルヴィーは〈きまじめなお姉さん〉とか〈ヴィクトリア朝の教育ママ〉みたいなつまんない人のイメージがあったのですが、もしかするともうちょっとぶっ飛んだ女の子なのかも知れない。ブルーノの言ったことを訂正するのだって、場合によっては、「姉が教育する」というよりは、「アリスがちょっと知ったかぶりしてみた」、というのに近かったりするのかも。 前章、前々章には聖書の引用が多数見られましたが、本章における「林檎の木」や「足を元に戻す」というエピソードにも聖書を連想するのは、穿ちすぎでしょうか。 |
03/04/02 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第三章「夜明けの光」を追加しました。相変わらずの説教臭さですが、シルヴィーとブルーノが珍しく「妖精らしい」ところを見せています。どうもこの章の語り手とアーサーの議論は、自分は貧しくもなければ裕福でもないという、日本人の中流意識と同じ立場に立った上で議論しているみたいで、まさに机上の空論というか論理の面白味というか、無頼派ふたりの社会批評ですよねえ。弥次喜多というか、『吾輩は猫である』というか、そういう変な面白さはありました。 |
03/04/02 |
実際に自分で翻訳をしてみると、聖書やシェイクスピアなどの文献からの引用が思った以上に多いのに驚きます。なのにネット上には、文語訳聖書は〈公開〉されてないし、シェイクスピアの翻訳もほとんど見つからないというのも事実でした。シェイクスピアくらいはネットで全文日本語で検索できるようになってほしいなあ、と感じた次第です。 |
03/03/27 |
『シルヴィーとブルーノ完結編』第二章「愛の晩鐘」を追加しました。第一章は第一章でブルーノの言葉遊びがたいへんでしたが、第二章は聖書の引用が多くてたいへんでした。どうせなら文語訳で引用したいんですが、文語訳聖書ってないものなんですね。この章にはシルヴィーもブルーノも出てこず、ずうっと現実世界の話ばかりが続くので、訳していて正直ちょっと退屈でした。ミュリエル嬢との「約束」についての議論も、やはり当事者を目の前にした議論だからでしょうか、続く第三章で語り手とアーサーが論じる「慈善」についての議論ほど突拍子のないものではありませんでした。 |
03/03/24 |
チェスタトン『知りすぎた男』第五話「釣り人の習慣」を追加しました。前話「底なしの井戸」がいかにもチェスタトンらしい逆説にあふれた作品だったのに対し、本話は何だか日本の新本格みたいなトリックで面白かった。前話でも、そして第一話でもそうでしたが、フィッシャー氏には個人の犯罪と大勢の幸せを秤にかけているようなところがあります。前話の舞台が一次大戦だったように、戦争に直面すると、個人と社会をいやでも秤にかけてみなければならないのかもしれません。 とにかくブラウン神父には絶対にできない解決方法です。 ただ本話のフィッシャーはあまりにも「知りすぎて」ますよね。どうやって知ったんだろう? |
03/03/24 |
ルイス・キャロル『シルヴィーとブルーノ完結編』第一章を追加しました。比較的短いのに、原文は言葉遊びの嵐なので、ものすごく時間がかかります。読んでいると楽しいんですけどね。うまい語呂合わせがないものです。「ブルーノの勉強」という章題どおり、ほぼブルーノの独擅場ですが、「カワセミの歌」では語り手もはめを外し、シルヴィーもブルーノに議論をふっかけるなど、楽しい一編でした。 訳の参考にと、いろいろ検索していたら、細井勉さんという数学者(数学人)の方の「数学から見たキャロルの数学的な遊び」というページがヒットして、たいへん面白かったです。特に『シルヴィーとブルーノ』の教授が「いつまでも続く長い詩を三つ朗読した」というフレーズ。いかにもナンセンスですが、実は数学的に考えるとごく普通のことなんだとか。例えとして「0.111...+0.222...=0.333...」という式があげられていました。なるほど。ほかにも面白いことがいろいろ書かれていたので、興味のある方はぜひ上記のタイトルで検索してみてください。(勝手にリンク貼るのはまずいと思うので……。) |
03/03/24 |
デ・ラ・メアってまだ著作権切れてなかったんですねえ。危ない危ない。『死者の誘い』面白そうだったんだけどな。残念。 |
03/03/13 |
ナサニエル・ホーソーンの「白髪の勇士」を追加しました。ホーソーンといえば『緋文字』ですが、この代表作は読んだこともないし、読もうとも思いませんでした。なのになぜホーソーンを読もう(訳そう)と思ったかというと、わけがあります。 瀬戸川猛資氏の『夢想の研究』を読み返していると、「夢のなかの生涯」と題する一章がありました。そこでホーソーンは、「夢想家」「文学における最高傑作(短編「ウェイクフィールド」へのボルヘスの賛辞)」「不思議な後味」「エドガー・アラン・ポーは天才である。しかし、彼より四つ歳上のナサニエル・ホーソーンもまた天才なのである」などと紹介されているのです。 「白髪の勇士」は、夢想家としてのホーソーンというよりも、ピューリタン作家としてのホーソーンが前面に出ている作品かもしれませんが、勇士が現れるシーンなど、やはり夢想・幻想らしく感じてしまいます。 この作品が収録された短編集は、一般には『トワイス・トールド・テールズ』というタイトルで知られています。 なお、背景の壁紙は「スタジオ・ブルー・ムーン」さんの素材を使わせていただきました。http://www.blue-moon.jp/ |
03/03/13 | |
本日、移転させていただきました。 |