将校はしばらくの間、考えに没頭したままだった。正気に返って、大広間の多彩な集団の中に行ったときには、少しの間失われていた冷静な様子が彼の顔つきに再び戻っていた。
 それにもかかわらず、これら迅速に交わされた言葉が引き起こした重大事は、近衛将校やキーソフ将軍がことによると推測したほどひどくはなかった。公式に話したわけではなかったし、不自由な話しぶりから非公式でもなかったのも確かだ。だが若干の名士には、国境を越えたところで起こったできごとが、多少は正確に知らされた。とにかくこのことは、ほんのわずかしか知られていないし、外交団のメンバーの間でさえ大きな話題ではなかった。が、制服も着ておらず着飾ってもいないため周りから浮いていた二人の客が、この新王宮のレセプションで、どうやら正確な情報をもとに、低い声で話し合っていた。
 どんな手段で、どんな鋭敏な行動で、この二人の凡人は、最高ランクの要人の多くがほとんど疑ってさえいないことを確かめたのだろう? それを述べることはできない。予知と洞察力の賜物であろうか? 彼らは人類の観察力の限界点を超えた視力という、新たな感覚を持っていたのだろうか? 極秘事項を予知する特別な力を手に入れたのか? 情報のなかで暮らすという習慣の恩恵を受け、今や第二の天性となり、心の構造が変化したのか? この結論は避けがたい。

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