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1913 Magic: A Fantastic 『魔術 幻想的な喜劇』
 ・戯曲。三幕。
邦訳 『魔術 ― ある幻想的な喜劇』 →html という邦題で第一幕がネット上で翻訳されています。


(第一幕)

 公爵のところにアイルランドの甥と姪がやって来る。二人は妖精を信じているが、アイルランドでならともかくイギリスでそんなものを信じることはまかりならんと、公爵は奇術師を呼び寄せた。甥のモリスはアメリカ帰りで進歩的になったが、姪のパトリシアは森を歩いていた「妖精」に恋に落ちた……だが彼こそが公爵に呼ばれた奇術師だった。パトリシアは残酷にも「お伽噺」を盗んだといって奇術師を責めるのだった。


(第二幕)

 「確かにあなたがものを消すことができるというのは嘘じゃない。でも真実を話してくれなかった。あなたが奇術師だという真実を」「でもね。ぼくにはそれ一つしかお伽噺がなかったんだ。本当のことが言えなくても責められるかい?」「それでもいんちきな魔法ほど最低なものはないわ」。モリスは奇術師のトリックを暴こうとする。「聖書の奇蹟もトリックだが、時代に先駆けた新しいトリックだった。でも奇術師のトリックなんて古ぼけたトリックさ」。スミス司祭が口を挟む。「あのご先祖の絵は複製です。ですがそれであの人がいなかったということにはなりません。奇蹟が偽りであっても、聖人がいなかったことの証明にはなりません。魔術もそう考えることはできませんか。本物の幽霊がいるからこそ、ハロウィーンの作り物もあるのです。贋札を摘発したからといってイングランド銀行を廃行してはなりません」。「ぼくは科学を信じています」とモリス。そのとき、向かいの医師宅のランプが赤から青に変わる。モリスは雨のなか外に確かめに出る。


(第三幕)

 モリスが寝込んでいるあいだ、奇術師のトリックについて話し合う。トリックを知らせてやらないとモリスは気が狂ってしまうと医師は訴える。「ぼくがトリックを明かさないのは、話しても信じてもらえないからです」と奇術師。公爵は奇術師に小切手を切る。「話しても信じませんよ。あまりに単純すぎるからです」と奇術師。「あれは魔術なんです」。医師は不可知論者だから信じない、公爵は明白すぎるので信じない、だが司祭は……「わたしも悪魔を信じられたらと思うのだが……」。ではパトリシアは……。「妖精を信じているのに悪魔は信じないのかい?」「わたしは信じる。でもモリスは無神論者だし……」。公爵の秘書が真っ青な顔をしている。司祭が何かに「立ち去れ!」と叫ぶ。公爵が椅子に倒れ込む。奇術師が庭に向かって「地獄に戻るがいい!」と叫び、モリスを納得させられるような説明を思いついたから伝えてくると宣言する。モリスは元気を取り戻した。「さようなら」と奇術師はパトリシアに言った。「さよならなんて言わない」「お伽噺はかならず終わるものなんだ」「お伽噺の終わり方は一つしかないわ」「つまり?」「現実になったの」

 見たままを信じられず、だれもが魔術を信じずに奇術のトリックを疑います。それも理性によって、ではなく、ある意味では信仰によって。リベラルで進歩的、とは、進歩を保守(盲信)すること。公平に、視野を広く、常識に囚われず、だから単純なことが信じられない。司祭が奇術のトリックを信じるのは魔術を信じないから、つまりその使い手の悪魔を信じられないから。医者は科学を信じている、だから魔術を信じない。はたしてパトリシアはお伽噺を信じ続けることができるのか。。。
 

(邦訳)
 『魔術 ― ある幻想的な喜劇』 →html という邦題で第一幕がネット上で翻訳されています。


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