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1944年 Ugly Anna and Other Tales  
 ・コッパード第十二短篇集。18篇収録。
邦訳  短篇集としては未訳。収録作のいくつかは邦訳あり。


「レイヴン神父」(Father Raven)
  ――レイヴン神父は教区の住人をつれて海辺にでかけていた。ハットフォール家の子供たちが楽器を演奏している。気づくとレイヴン神父は鼓笛隊長のように先頭に立って行進していた。四十人の教区民も続いた。天国を目指して。だが天国は遠かった。次第に不安になる教区民たちを神父は勇気づけた。ようやく天国の丘が近づいてきた。偉大なる声がする。「止まれ! ここにいるのは穢れなきものたちか」「はい」「間違いないな」「間違いありません」四十人は橋を渡るのを許された。だが神父が渡ろうとすると、障害が立ちはだかった。声は言った。「おまえは悪事を犯したことがある」神父は声をあげたが無駄だった。ハットフォール家の子どもが鳴らす楽の音が聞こえる。やがてそれも聞こえなくなり、神父は自分の魂がしぼむのを感じた。

 待ってましたのファンタジーです。全体の雰囲気はおとぼけ系キリスト教譚なのですが、結末には苦い現実が待ち受けています。トライアングルの音が実に効果的に使われていてぐっときました。

 なんだかわかりませんが日常から地続きのままごく当たり前に天国をめざしちゃうところが、いかにもコッパードのファンタジーらしい。「うすのろサイモン」「王女と太鼓」「ピフィング・カップ」あたりが好きな方にはお薦めです。
 


「」(Ugly Anna)
 


「」(Coat of Many Colours)
 


「」(The Cream of Creation)
 


「」(Return Match)
 


「」(Home Guard)
 


「」(Amy, Agatha, and Ruth)
 


「」(The Three Captains)
 


「」(Jubal and Jackson)
 


「」(Smulvey at the Junction)
 


「王女と太鼓」(The Drum)
 ――キンセラは孤児だった。鳥捕りのレインズビーという老人と暮らしていた。幼い頃に時計職人の爺さんが予言したことがある――キンセラはいつの日か世界の頂に登りつめるだろうと。だからキンセラは旅立った。行くあてもなく。

 『郵便局と蛇』(国書刊行会)[bk1amazon]に邦訳あり。

 すっとぼけた語り口があいかわらずの、神話を夢見た少年の一夜の夢みたいな物語。王女になれない王女は、王女になるための教養を身につけようとはしない。太鼓を叩いて人民を困らせるばかり。だけど国内に留まるのが王女としての義務。――と、いうのが少年の成長(物語)に対する暗喩かなにかだと考えてもつまらない。ただただ予定調和のくつがえされるほんわかした神話を楽しみましょう。
 


「」(Cobbler Butticass)
 


「」(Sweet Enemy)
 


「」(The Family Tree)
 


「」(Chinfeather)
 


「」(The Other Woman's Story)
 


「」(Barber's Rash)
 


「」(Cheese)
 

 


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