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★著者紹介
作品一覧・年譜
このサイトの翻訳作品あらすじ・解説

A・E・コッパード (1878〜1957)
Alfred Edgar Coppard  

 イギリスの小説家。1878年ケント州フォークストンで生まれる。各種店員や事務員、賞金付きスポーツ大会に出場、という経歴を経て、43歳の時に初めて短篇小説を発表。1919年に、本格的に作家として出発する。1955年に自伝『It's Me, O Lord!』を出版。1957年ロンドンにて死去。

 平井呈一翁をはじめとして、若島正氏、西崎憲氏、山形浩生氏が評価していました。特に若島正氏は、「アダムとイブ」のことをとにかく好きな作品と述べています。

 特徴を説明するのは難しい。主に怪奇・幻想・ファンタジーと称されるタイプの作品が紹介されることが多いけれど、それは全体のごく一部なのだそうです。繊細なんだけれど、人を食ったようなユーモラスなところもあったり。どの作品にも、哀しい中に温かみのようなものを感じます。
 邦訳は『郵便局と蛇』(国書刊行会)のほか、雑誌やアンソロジーに収録されているものがいくつかあります。
 

 ――「短編の達人とはまさにこの人のためにのみあることばであろう。」(平井呈一)
 ――「(「アダムとイヴとツネッテ」は、)この世に存在するすべての短篇の中でわたしが最も偏愛する短篇であり、できることならわたしが書いたことにしてしまいたいくらい愛している」(若島正)
 ――「人々はポオの仲間になっていっしょに駆けた。コパード氏もマッケン氏も、いま彼といっしょに駆けていた。」(レイ・ブラッドベリ)
 ――「私としては、(三橋一夫を)A・E・コッパードやT・F・ポウイス、S・T・ウォークナーといった英国田園派の短篇作家たちと比較したい誘惑にかられる」(東雅夫)
 ――「コッパードは貧しい辺土の村人たちの営む魔法のような日常に幻想を見つけだした人と言えましょう。」(荒俣宏)
 ――「わたし自身は、コッパードのことを英語圏におけるすぐれた短篇作家の一人だと考えている。最高の、と言ってもいいだろう。」(シェイラ・ケイ・スミス)
 ――「誰も彼には似ていない。多くの模倣者が生まれた。中にはコッパード以上に成功した者もいるし、大衆に受け入れられた者もいる。だが彼の物語は繊細ではあるが脆くはない。淡くはあるが薄っぺらではない。いくつものイメージが浮かぶが、焦点がぼやけているわけではない。だから読者は模倣者を見抜くことができるし、コッパードこそ現代最高の短篇作家だとわかるはずだ。」(レベッカ・ウェスト)
 ――「コッパードの書いた多くの物語は――偉大な物語でもあるのだが――特に女性の胸の裡(コッパード特有の強迫観念)についての物語、「辛子の野原」「ダスキー・ルース」「オリーヴとカミラ」「不機嫌な娘たち」――は、チェーホフを超える最上の物語だ。」(フランク・オコナー)


ビブリオグラフィ  作品一覧
1921 Adam and Eve and Pinch Me 『アダムとイヴとツネッテ
 ・コッパードの第一短篇集。
邦訳 「シオンへの行進」「ピフィングカップ」「アダムとイヴ」「いまはなき王国の王女」「アラベスク――鼠」。

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1922 Clorinda Walks in Heaven 『天国を行くクロリンダ
 ・第二短篇集。『郵便局と蛇』解説によれば、Knopf版『Adam and Eve and Pinch Me』は本書と合本らしい。
邦訳 「さくらんぼの木」「天国を行くクロリンダ」。

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1922 Hips and Haws 詩集
1923 The Black Dog: And Other Stories  第三短篇集
邦訳 「うすのろサイモン」「キルシーランから来た男」「ハンサムなレディ」「バレエ・ガール」

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1925 Fishmonger's Fiddle  第四短篇集
邦訳 「幼子は迷いけり」

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1926 The Field of Mustard 『辛子の野原』 第五短篇集
邦訳 「辛子の野原」「お化けオニ」

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Pelagea: And Other Poems 詩集
Yokohama Garland: And Other Poems  詩集
1928 Silver Circus 『銀色のサーカス』 第六短篇集
邦訳 「銀色のサーカス」「ポリー・モーガン」

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The Collected Poems  詩選集
Count Stefan  短篇?
1929 The Gollan 「ゴラン
 ・短篇。
邦訳 幻想文学 63幻想文学 63幻想文学企画室企画編集(アトリエOCTA ,2002.3)
オンライン書店bk1で詳細を見る
amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。
1930 The Man from Kilsheelan 「キルシーランから来た男」 短篇
邦訳『怪奇幻想の文学 7 幻影の領域』(新人物往来社)荒俣宏訳
Pink Furniture  ジュヴナイル長篇
The Higgler  短篇
1931 The Hundredth Story  短篇
Fares Please!  選集
邦訳「うすのろサイモン」「お化けオニ」「ポリー・モーガン」
詳細不明。「Simple Simon」「The Bogey Man」「 The Almanac Man」「Polly Morgan」収録。
Easter Day  短篇
Nixey's Harlequin  第七短篇集
邦訳 「郵便局と蛇」「ゴラン」

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The Writing of Alfred Edger Coppard  コッパードによる註釈付書誌
1932 Crotty Shinkwin  
 ・短篇「Crotty Shinkwin」と「The Beauty Spot」のカップリング。
Rummy, That Noble Game  カード・ゲーム「ラミー」について
Cheefoo  短篇
1933 Dunky Fitlow  第八短篇集
邦訳 「おーい、若ぇ船乗り!」

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Ring the Bells of Heaven  短篇?
1934 Emergency Exit  短篇?
1934? Consequences  室内ゲームについてのアンソロジー?
1935 Good Samaritans  短篇
Polly Oliver  第九短篇集
邦訳 「消えちゃった」

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Cherry Ripe Poems: When I Have Fears   詩集
1937 Ninepenny Flute: Twenty-One Tales  第十短篇集
邦訳 なし

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1938 Tapster's Tapestry  短篇
1939 You Never Know, Do You?: And Other Tales  第十一短篇集
邦訳 「ロッキーの魔法」「若く美しい柳」
 詳細不明。「Ale Celestial?」「Rocky and the Bailiff」「The Fair Young Willowy Tree」収録。
1944 Ugly Anna and Other Tales  第十二短篇集
邦訳 「王女と太鼓」

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1946 Fearful Pleasures  選集
邦訳 「アダムとイヴ」「天国を行くクロリンダ」「うすのろサイモン」「お化けオニ」「ポリー・モーガン」「ゴラン」「郵便局と蛇」「おーい、若ぇ船乗り!」「消えちゃった」「ロッキーの魔法」「若く美しい柳」「王女と太鼓」「不幸な魂」

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Selected Tales: From his twelve volumes published between the wars 『物語集』 選集
邦訳 「辛子の野原」「アダムとイヴ」「銀色のサーカス」「さくらんぼの木」「アラベスク――鼠」「キルシーランから来た男」

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1947 Dark-Eyed Lady: Fourteen tales  第十三短篇集
 詳細不明。「The Kisstruck Bogey」「The Namesless One」収録
邦訳 「不幸な魂」
1951 The Collected Tales of A. E. Coppard 『A・E・コッパード自選集
 ・コッパードによる自選集。
邦訳 「さくらんぼの木」「アラベスク――鼠」「アダムとイヴ」「銀色のサーカス」「若く美しい柳」「キルシーランから来た男」「天国を行くクロリンダ」「おーい、若ぇ船乗り!」「幼子は迷いけり」「辛子の野原」

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1954 Lucy in Her Pink Jacket  第十四短篇集?
1957 It's Me O Lord!  自伝
1996 The Post Office and the Serpent『郵便局と蛇』[bk1amazon
 ・日本独自編集による短篇集。
収録作 「銀色のサーカス」「郵便局と蛇」「うすのろサイモン」「若く美しい柳」「辛子の野原」「ポリー・モーガン」「王女と太鼓」「幼子は迷いけり」「シオンへの行進」

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アラベスク――鼠」Arabesque --The Mouse 1920

 凍てつく静かな夜に部屋の中で本を読む男。暖炉の前に現れた鼠の姿を見つけ、遠い日の記憶を思い出すのであった。

 今のところコッパード作品の中で一番好きな作品。エピソードや事物を緻密に織り連ねたこの作品に「アラベスク」というタイトルをつけるところに、著者の並々ならぬ自信がうかがえます。

 ドロシー・L・セイヤーズ編『Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror』にも収録された名品です。
 寒い夜にしんみりと読みたい。

さくらんぼの木」The Cherry Tree 1922

 ジョニー・フリンは悪戯小僧。母親のフリン夫人はいつも苦労が絶えない。だけどジョニーも素直に耳を傾けるのが、フリン夫人の実家にあった大きなさくらんぼの木の話だった。

 特称な母親と健気な子どもたちの愛すべき小品。隣人や伯父さんなど、キョーレツな登場人物も忘れがたい。

天国を行くクロリンダ」Clorinda Walks in Heaven 1922

 クロリンダは雨の日には死にたくなかった。土砂降りの日に死んだクロリンダは、光り輝く静かな空間に降り立った。

 コッパードのファンタジー。コッパード作品の登場人物は、この世とあの世の境を軽々と踏み越えます。「うすのろサイモン」にしても「Father Raven」にしても、確か歩いて行くんですよね。本篇のタイトルは「歩く」というよりは「天国に行く」のようなニュアンスだとは思いますが。そもそもはっきりとは書かれてないのですが、死期が近いという設定なのでしょうか、そこらへんもいまいちはっきりしません。説話や伝説にある「うっかりやってしまったために……」パターンでもあるし、臨死体験を描いた作品でもあるのですが、どこかとらえどころのない印象を残します。


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