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 作品紹介
1849 Le Collier de la reine 『王妃の首飾り』
 ・『ある医師の回想』第二部。マケ共作。首飾り事件。
邦訳 『王妃の首飾り』大久保俊郎訳(創元推理文庫)。→[amazon.co.jp]

 リシュリウ、デュ・バリー、タヴェルネ男爵らが集う晩餐の席上、カリオストロ伯爵が口にしたのは、各人の最期を告げる恐ろしい予言だった。一方そのころ、王妃マリ=アントワネットは侍女アンドレとともに、ヴァロワ家末裔を自称するラ・モット伯爵夫人のもとを訪れていた。後日、ロアン枢機卿も伯爵夫人のもとを訪れたことから、夫人はそれを利用してある計画を練り始める……。宮廷では戦争の英雄シャルニー伯爵が王夫妻に謁見していた。王妃を拝顔したシャルニーは愕然とする。目の前にいる人こそ、先夜ラ・モット家から馬車で送った謎の女ではないか! 王妃の美貌と勇気に一目惚れしたシャルニーは、やがてアメリカから戻ったフィリップと、王妃を巡り恋の鞘当てを演じることになる……。同じころ、それまで恋に無縁だったアンドレにも一つの恋心が芽生え始めた。放浪から戻ったニコールはボーシールとよりを戻していたが、王妃に瓜二つのニコールは、行く先々で良からぬ噂の種となっていた。放蕩がおさまらないボーシールは、一攫千金を夢見て仲間とともにぺてんを企てるが……。すべての中心には首飾りがあった。

 

 ・フランス革命期を舞台にした四部作のうち、恐らく日本人にももっともなじみ深いマリ=アントワネットと王妃の首飾り事件を扱った作品です。実行犯は史実と同じでありながら、すべての人物が何らかの形で関わっているという点に構成力が光ります。また、実在の人物をモデルにしたオリヴァ・ルゲを「王妃そっくり」にすることで、フィクションとして物語がぐんと面白くなっています(こういうはったりめいた豪腕の巧さがデュマの魅力の一つです)。

 それから本書の特徴は、何といっても「恋愛小説」としての側面です。デュマ作品には多かれ少なかれ恋愛要素が含まれていますが、本書くらい詰め込まれているものはなかなかないでしょう。詳しくは本書を読んでいただくとして、マリ=アントワネット、フィリップ、アンドレ、シャルニー、ラ・モット夫人、ロアン枢機卿、オリヴァ(ニコール)、ボージール、都合八人(だと思う)が、片思いだったり両思いだったり三角関係だったり、面白いことこのうえありません。もちろんほかのデュマ作品同様、歴史小説や冒険小説としても魅力充分。特に冒頭に描かれた予言の場面は何度読んでもわくわくします。

 一方カリオストロ伯爵は、前作以上に裏方で策を弄します。(とはいえ「地味」とは程遠いところがこの人らしさです)。直接的な行動ではなく、醜聞によって王妃と王制を打倒しようと画策するのです。その甲斐あってか(?)本書のなかで何度か王妃は醜聞の危機に見舞われます。翻せば、醜聞によってぽしゃってしまうようなところにまで体制にガタが来ていたということなのでしょうか。

 『ジョゼフ・バルサモ』の登場人物のその後が語られているので、できれば前作を読んでから読むのが望ましいのですが。。。

邦訳

 王妃の首飾り『王妃の首飾り』(創元推理文庫)大久保俊郎訳
 [amazon.co.jp]



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