アレクサンドル・デュマ | (1802〜1870) | |
Alexandre Dumas | ||
十九世紀フランスの大作家。息子も同じ名前であるため、大デュマ(Dumas Père)と通称される。代表作『三銃士』『モンテ・クリスト伯』ほか多数。 1802年、ヴィレル=コトレの町でトマ・アレクサンドル・デュマとマリ・ルイズ・ラブーレの長男(第三子)として生まれる。父トマ・アレクサンドルはナポレオン麾下の将軍であり、冗談だとしか思えないほどの怪力の持ち主だった。 ヴィレル=コトレで読んだ詩に感銘を受け、パリで見た芝居に感動して、文学者を目指す。1824年、カトリーヌ・ラベーとのあいだに一児をもうける。これがデュマ・フィスである。 生涯に書いた作品は厖大な数にのぼる。資料集めや構成や下書きを担当した“共作者”がいた。なかでもオーギュスト・マケが有名であり、著名な作品のほとんどはマケとの共作である。凡庸な下書きにデュマが手を入れると途端に見違えるように面白くなったともいう。こうして作品リストを作ってみると改めて驚いたのですが、同じ1845年に『王妃マルゴ』『モンテ・クリスト伯』『モンソローの奥方』を書いているとは、やはりただ者ではない。 |
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――「いいかい、君はいまフランスが生んだ文学史上最大の天才作家と話をしてるんだ。」(アレクサンドル・デュマ、『ラインの虜囚』田中芳樹) ――「昔のフランスの小説に出てくるじゃない。なんだったかしら? デュマの小説? まばたくのよ! ほら、老人がまばたいて合図するんですよ!」(ファニー、『見えない蜘蛛の巣』シャーロット・アームストロング) ――「『貴公の杭はとがらせておこう、ヴァルダレク。そして真上に心臓がくるようはからおう。すみやかに終焉が訪れるように』コスタキは約束した。」(コスタキ、『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン) ――「戦友たちはアルセーヌ=ルパンと呼んでいたが、上官たちはもっと簡潔に〈英雄〉と呼んでいた。『三銃士』のダルタニャンのように勇敢で、ポルトスのように強い、という意味でね。」(ダストリニャック伯爵、『虎の牙』モーリス・ルブラン) ――「この一月というものルナの社交界は彼の噂で持ち切りよ!(中略)モンテ……クリスト伯爵。ふざけた名前でしょう?」(G侯爵夫人、『巌窟王』前田真宏) ――「『パピヨン』に『モンテ・クリスト伯』。ほかにもたくさんある。彼らにできたなら、私にもできる。」(ミレーデ・ルンゴー、『特捜部Q 檻の中の女』ユッシ・エーズラ・オールスン) ――「しばらく前から彼(=ベスター)は、デュマの『モンテ・クリスト伯』にならった復讐譚を書きたいと思っていたらしい。」(浅倉久志) ――「(『モンテ・クリスト伯』は)大衆小説ながら、長い生命を保っており、それは復讐という行為の普遍性によるものだろう。」(小谷野敦) ――「(『ニューゲイトの花嫁』は)たぶんに、アレクサンドル・デュマの影響が見られる。『赤い館の騎士』あたりから触発されて書かれたものであろう。」(二階堂黎人) |
ビブリオグラフィ | 作品一覧 | ||
1829 | Henri III et sa cour 『アンリ三世とその宮廷』 | ||
・戯曲(散文)。メジャーデビュー作。 | |||
1836 | Kean 『キイン』 | ||
・戯曲(散文)。実在の俳優エドマンド・キーンに基づいた作品。 | |||
1838 | Pauline 『ポーリーヌ』 | ||
邦訳 | 『ポーリーヌ』(近代文芸社)小川節子訳 [bk1・amazon] |
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1840 | Les Crimes célèbres 『有名な犯罪』 | ||
・ヴランヴィリエ夫人、ボルジア家など犯罪史を彩る人物や事件を扱った歴史物語。うち『Marie Stuart』が邦訳されています。 | |||
邦訳 | 『メアリ・スチュアート』(作品社)田房直子訳 [bk1・amazon] |
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1844 | Les Trois Mousquetaires 『三銃士』 | ||
・『ダルタニャン物語』第一部。マケ共作。 ・いわずとしれた代表作。「三銃士」と銃士見習の物語。 |
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邦訳 | (1) 『ダルタニャン物語』1・2(復刊ドットコム)[amazon・楽天] (2) 『三銃士』上・下(岩波文庫)[amazon・楽天] (3) 『三銃士』上・中・下(角川文庫)[amazon・楽天] ほか多数 |
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1845 | Vingt Ans après 『二十年後』 | ||
・『ダルタニャン物語』第二部。マケ共作。 | |||
邦訳 | 『ダルタニャン物語』3〜5(復刊ドットコム)[amazon・楽天] | ||
1845 | La Reine Margot 『王妃マルゴ』 | ||
邦訳 | (1)『王妃マルゴ(上・下)』(河出文庫)榊原晃三訳[bk1・amazon] (2)『王妃マルゴ』(文藝春秋)鹿島茂編訳[bk1・amazon](抄訳だが鹿島氏による解説とコラムが充実) |
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1845 | Le Comte de Monte-Cristo 『モンテ・クリスト伯』 | ||
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邦訳 | 『モンテ・クリスト伯(1〜7)』(岩波文庫)山内義男訳 [bk1・amazon] |
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1845 | La Dame de Monsoreau 『モンソローの奥方』 | ||
邦訳 | 『モンソローの奥方』(近代文芸社)小川節子訳 [honto・amazon] |
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1846 | Le Chevalier de Maison-Rouge 『赤い館の騎士』 | ||
邦訳 | (1)・『赤い館の騎士』(角川文庫・ブッキング)鈴木豊訳[amazon] (2)『世界の恋人〈世界大衆小説全集2〉』(小山書店)大倉Y子・木村毅訳 ※メゾン・ルージュの騎士は本文中で「紅楼の騎士」と訳されており、かっこいい! 実際、旧訳題は『紅楼の騎士』だったそうです。 |
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1846 | Joseph Balsamo 『ジョゼフ・バルサモ』 | ||
・『ある医師の回想(Mémoires d'un médecin)』第一部。マケ共作。ルイ十五世時代。 | |||
邦訳 | このサイト | ||
1848 | Hamlet, prince de Danemark 『ハムレット、デンマークの王子』 | ||
・戯曲(韻文)。シェイクスピアの『ハムレット』 Paul Meurice との共訳。 | |||
1848 | Le Vicomte de Bragelonne, ou L'Homme au masque de fer 『ブラジュロンヌ子爵』 | ||
・『ダルタニャン物語』第三部。その一部が『鉄仮面』として有名。マケ共作。 ・ | |||
邦訳 | |||
1849 | Le Collier de la reine 『王妃の首飾り』 | ||
・『ある医師の回想』第二部。マケ共作。首飾り事件。 |
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邦訳 | |||
1851 | Ange Pitou 『アンジュ・ピトゥ』 | ||
・『ある医師の回想』第三部。マケ共作。1789年バスチーユ〜。 | |||
邦訳 | このサイト→html で読む。 | ||
1851 | Le trou de l'enfer 『地獄谷』 | ||
・ナポレオン時代のドイツを舞台にした二部作の第一作目。 | |||
1851 | Le Vampire 『吸血鬼』 | ||
・ポリドリ作品を脚色したノディエの戯曲に想を得た散文戯曲。マケ共作。 | |||
1853 | La Comtesse de Charny 『シャルニー伯爵夫人』 | ||
・『ある医師の回想』第四部(完結)。チュイルリー〜タンプル〜処刑 | |||
1854 | Catherine Blum 『カトリーヌ・ブルム』 | ||
・帯に曰く、「フランス初の推理小説」。 | |||
邦訳 | 『カトリーヌ・ブルム』(近代文芸社)小川節子訳 [bk1・amazon・楽天] | ||
1854-1859 | Les Mohicans de Paris, Salvator 『パリのモヒカン族』『サルヴァトール』 | ||
・誘拐事件と殺人事件の謎と、帝政復活の陰謀を描いた大長篇。 | |||
1858 | Le Capitaine Richard 『リシャール大尉』 | ||
・ナポレオン時代を描いた歴史小説。 | |||
邦訳 | 『リシャール大尉』(グーテンベルク21)乾野実歩訳 [グーテンベルク21] |