国王一家はチュイルリー宮殿に移された。アンドレとシャルニーのあいだに愛が芽生え始め、王妃はますます孤立してゆく。今はザンノーネ男爵と名乗っているカリオストロが、さまざまに手を回す。ヴァレンヌ事件でシャルニーの弟イジドールが死に、カトリーヌは未婚の母となる。カトリーヌの父ビヨは怒り狂うがシャン=ド=マルスの虐殺で重傷を負い、ピトゥに助けられる。ピトゥはあれこれとカトリーヌの世話を焼く……。一方そのころ、フランスは諸外国に宣戦布告することを決めていた。チュイルリー襲撃、九月虐殺、タンプル塔幽閉、王や側近たちにも、そして王制にも刻々と最期のときが近づいていた……。
・四部作の完結篇です。とにかく長い! 全部で二百章近くあります。完結篇にふさわしく、ほぼレギュラー勢が総登場しています。ミラボーやラファイエットやバルナーヴなど、歴史上の人物たちも多数登場しますが、やはり読者にとっては昔なじみのオリジナル登場人物の活躍が嬉しいところです。
何分にも前作の『アンジュ・ピトゥ』が尻切れとんぼだったので、本文の前にそのことについてデュマの言い訳まえがきが載せられています。前作でも影の薄かったアンジュ・ピトゥですが、この作品でもどちらかというと脇役でした。ただ、みんながヒーローのこの時代にあって、一人だけマイペースで「いいひと」なところがかえって目立っているような気もします。
長いからというだけでなく、あらすじをまとめるのが難しい。全章通しての主役というものがなくて、この作品の場合、あるいは王妃やカリオストロすら脇役といってもよく、陳腐な言葉ですが「歴史そのものが主役」という表現がふさわしい作品でした。
しかしカリオストロは最後にこんな優等生っぽくていいのかな。 |