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ファンタスマゴリア〜幽幻燈記〜

ルイス・キャロル

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作家略年譜・作品リスト

第四篇
學校


「幼い頃は日々毎日が、
楽しくて仕方ありません!
好きな柱に腰を下ろして、
バタ付きパンにぱくつきながら
紅茶をもらっておりました」

好きな柱に腰を下ろして

「今の話は本で出てるぞ!
そうじゃないなんて言わせない!
時刻表ブラッドショーに負けず有名!」
(困ったように霊は答えた、
そんなことないと思います)。

マザーグースじゃなかったろうか?
自信はないけど、確かこう――
『三匹のチビ幽霊々が』
『柱々に』腰を下ろして、
『バタつきパンパン』食べていた。

「本も持ってる。信じないなら――」
棚を探そうと振り向いた。
「待ってください! 本は無しです。
思い出すのもやっとでしたが、
あれを書いたのはわたしです。

「『マンスリー』誌に掲載したと
編集者からは聞きました。
それを目にした文学者から、
掲載された雑誌に合わせ
改竄されたと聞きました。

「わたしの父は座敷童で、
森の妖精が母でした。
母の頭に浮かんだことは、
化ける手順を教えたならば、
子どもは幸せつかむはず。

このひらめきにすっかり夢中。
始めるやいなや一人ずつ
よい才能を引き出しました――
まずは妖精ピクシー、お次は仙女フェイズ
もひとつおまけに泣き女。

「夜叉と水虎は学校に行き
いろいろ苦労をかけました。
騒がし霊と悪鬼の次は、
(規則破りの)トロルが二匹、
悪魔一匹に離魂霊――

「(嗅ぎ煙草なぞ棚にあったら」
あくびをしながら言うことにゃ、
「ひとつ下さい)――次は精霊、
そして幻妖(このわたしです)、
そしておしまいに靴小人レプラコン

「いつもどおりに白衣姿の
幽鬼が呼ばれた時のこと。
広間に行って覗きましたが、
まるで見分けがつかないんです、
見知らぬ姿に見えました。

幽鬼が呼ばれた時のこと

「不思議なことに、どうしたわけか、
頭と袋に見えました。
ところが母が見るなと言って、
わたしの髪を引っ張ってから、
背中をごつんと撲つんです。

「以来わたしは願ってました、
幽鬼に生まれて来たかった。
でも無駄でしょう?」(大きく吐息。)
やつらは霊のエリートたちで、
わたしたちなどはシカトです。

「幻妖としてやがて旅立ち。
やっと六歳になったころ、
ある先輩と一緒にでした――
最初のころは楽しかったし、
悪戯もうんと教わった。

「牢屋や城や塔に取り憑く――
行けと言われればどこにでも。
じっと座って吼えていました、
ざんざん降りにぐっしょり濡れて、
胸壁の上におりました。

胸壁の上に挿絵註

「声を出すとき吼えうめくのは
かなり古くさいことですが。
これはまったく新しいやつ――」
ここで(骨までぼくは震えた)
ぞっとするような叫び声。

「たいしたことじゃないかのように
聞こえたのではないですか?
ではご自分でお試しなさい!
一年くらいかかりましたよ、
絶えず練習を重ねても。

「叫ぶ秘訣を身につけてから、
さめざめ涙が落ちたなら、
それが始めのほぼ第一歩。
よければやってみて下さいよ!
おそらくかなりの一仕事!

「やったわたしに言えますことは
あなたには無理な手ごわきり
ゅうぎ。休まず練習しても、
そっちの方の才能だとか、
天賦の技術がないかぎり。

「シェイクスピアが書いております、
かつての時代の幽霊を、
ローマの街でおめき叫び』と。
ご記憶でしょう、帷子姿――
寒いとわかっていたんです。

「わたしもきれに十ポンド出し、
離魂霊みたく着てました。
でも一陣の風でわかった、
この問題の答えとしては
あんまり役には立ちません。

「名案だった願い事すら
請求の山がかき消した。
準備するのがいつでも鬼門。
やりたいことがたくさんあれば、
欠くべからざるは、お金です!

「幽霊塔の場合だったら、
髑髏や骸骨、帷子も。
二時間燃える青い光と、
超能力を籠めたレンズと、
それから鎖を一揃い。

「そんなこんなでレンタル品の――
衣装のローブを試着して――
色つきの火をテストしてみる――
ものによっては長持ちせずに
おしゃかになるのがあるんです!

衣装のローブを試着して――

「それにやたらと面倒なのが、
幽霊屋敷の委員会。
いつも混乱、なにしろ霊は
フランス人やロシア人から、
さらにはシティーの出身も!

「方言による応酬があり――
訛りの一つはアイリッシュ。
それでも逃げるわけにもいかず、
売りに出たのは週一ポンド、
気づけば周りは鬼だらけ!


"Phantasmagoria" Lewis Caroll, 1869 --CANTO 4 の全訳です。


Ver.1 05/11/20


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