この翻訳は翻訳者の許可を取ることなく好きに使ってくれてかまわない。ただし訳者はそれについてにいかなる責任も負わない。
翻訳:東 照
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アルフレッド・テニスン『二つの声』

二つの声

静なる細微き声の囁けり、[*1]
なれ悲しみに沈めるは、
生きるべきより死すべきや?」

静なる細微き声に我答えし、
「果てなき蔭に我をな捨てそ 5
匠の手になる業なれば」

その問いに答えて声ののたまわく、
「生家の池より飛び立ちし
蜻蛉を見しは今日のこと。

内奥の力はじけて古皮の 10
殻を破りて。総身の
蒼き鎧となりにけり。

羽根広げ。薄絹の如く乾かせば。
露に湿りし草原を
閃光となりて飛び去れり」 15

我曰く、「天地発けし初めには
若き自然は五廻りし、
たびで人を生み出せり。

人類に心を与え、優れたる
調和を与え、何よりも、 20
知恵と情けを授けけり」

静かなる声の答えてのたまわく。
「盲に等しき自惚れ屋よ。
夜空を仰げ。世は広し。

心にて斯かる真理を唱うべし、 25
果てなき宇宙そらの向こうには
果てなき善も、悪もあり。

ああ希望と恐怖で出来た土くれなど
彼方の星の住人と
変わりは無しと思わぬか? 30

だが声の、我の心に話しけり。
「よしや汝が風に散れど、
代わりの者の数多あり」

声を張り、我は答えを口にせり。
「地球に出でし被造物は 35
かけがえのなき者ばかり」

我が弁に声は答えり、嘲りて。
「よし言い分を認めれど、
汝が失せて誰が泣かん?

或るはまた、汝の持てる本性が、 40
意識の世界で途絶えせば、
輝きなどは衰えん」

「知りもせぬ癖に」と我は思えども、
心は満ちて、胸ふたぎ、
目より溢れて落ちにけり。 45

声がまた我に向かいて話しけり。
なれ悲しみに浸ちたらば、
生きるべきより死すべからん。

苦しみに、眠ることさえままならず、
理性の維持もあたうまじ。 50
涙なくして物も思えず」

我曰く「年も積もれば好転せむ。
我が面容かおかたち色失せば、[*2]
希望の扉をいざ閉ざさん。

されどこの病を癒すものもあらん」 55
だが声曰く「痛風の
震えを止める薬はあらじ」

我嘆き「我は死せどもことごとく、
薄薔薇色の雪のなか
荊の周りで花咲かせん。 60

人類よのひとは、未知の思考の領域を、
真理まことを求め転々と、
我死してのち、見出さん」

「しかれど」と、声はささやき「いつの日か、
栄華は翳り、青草も 65
たちまち霜で白くならん。

少なからぬ魂が疾く光求め、
空飛ぶ星にあくがれて、
夜昼となく過ぎゆかん。

少なからぬ蜂が巣穴をさまよいて、 70
針金雀枝ハリエニシダが谷に燃え、
狐之手袋ジギタリスが鈴をつけん」

我曰く「年々は物を生み出せり。
月々は世にさまざまの
あまた進歩を奉らん。 75

良からずや? 時節を待ちて、人類の
力の如何に育たんと、
荒れた塔より望むるも」

声曰く「高き心は今も見む、
尊き朝の広がりや、 80
しんと聳えし頂を。

いくつもの時が過ぎれば、地や海を
押し流しつつ、残り居る
寂し光を褪せさせん?

いや朝が、冷たき冠や、忍び寄る 85
結晶化せし静寂しじまより、
町を光で溢れさせん?

なれが友、汝が時代に、先駆けよ
千歳未来の、夢にだに
見ぬ知のなかに、足を入れよ。 90

しかれども真の高みに手は届かず、
光に近づくこともなし、
梯子は無限なるがゆえ。

息もせず口も慎むべかりけり、
力を求め、力なく、 95
ぬか喜びして、追うよりも。

さらにまた、ぬか喜びして、求めけん、
捨てられし意思、持たぬもの、
強き体に、静心」

我曰く「我もし黄泉に立ち去らば、 100
かれ早まれり』と皆人言いて、
我が土くれに唾吐かん」

声答えり、「永らえながら忌み嫌い、
生きて嘆くは、苦しみに
怯え死ぬより、卑しけり。 105

汝病めり――病を恐れ、人を恐れ
積み重ねられし「ばらばらの
意思」にしてまた「臆病者」。

そもなれは愛されけるや? 汝を呼ぶ
声の途絶えず、地に眠る 110
汝を悩ますほどなりしか?

絶え間なき季節のなかで朽葉わくらば
秋の実りの記憶より
取るに足りなき定めかな。

魂よ、真理に抱かれ、目を閉じよ。 115
塵に埋もれし右耳は、
正邪を聞き取ること能わず」

我叫ぶ、「あの深淵や自惚れの
虚しき広き荒野より
答えを出すは、難きこと! 120

否や否――人の讃辞を恋う日々に
我を励ましし夢希望を
駆り立てらるのあるといえども。

心広く、口はばからず、天幕の
あいだで休み、口ずさみ、 125
遠き戦の鳴りしとき。

勝鬨を胸高らかに歌いけり、
腰を下ろして、剣や楯、
槍を恐れず磨きけり――

戦いを待ちわびながらおりにけり、 130
嘘と死闘を繰り広げ、
生の真価を守るため――

隠されし真実まことを動かし、まとめ上げ、
分けて証して、憎しみと
愛の区切りを分かつため―― 135

万人の心が軌道を描くかぎり、
人の懐疑を忘れじと、
自由空間を拓くため――

見聞きせしものより、生のきらめきと
畏怖の深さを探すため、 140
法なる法をつかむため。

少なくも野草のごとく腐らずに、
思いと行為をもたらさん
豊かな種を蒔きてのち、

人生の光が消えしそのときは、 145
正しからざる自賛にも、
手前勝手な理由にも――

我がことのためにもあらず、善がため、
武人のごとく、惜しまれて、
世に名も知られ、逝かんため。 150

渠の目が光る涙で薄霞み、
気高き塵にまみれつつ、
祖国の歌を聞きながら。

運命の一撃により殉じつつ、
敵の幾度と破られし。 155
戦はけぶり立ち落ちぬ」

声曰く「蕾のままでありしかば、
夢も大いによろしからん。
血のたぎりとて済むものを。

自然ことわりが花咲かせむとその業を 160
顕わすことのあらざれば、
が一時とて生きられよう?

阻止、変化、転落のやがて訪れむ。
痛みは高まり、喜楽朽つ。
万病に効く薬あり。 165

果てしなき痛みのさなか、月ごとに、
編まれし意図の鎖もて
結べども、みな無益なり。

死と生のあわいにありし世の謎を
汝は絶えて解かざりし。 170
ゆえに苦労もむなしかり。

智者たちは戯れるのみ、と我言いけり、
徐々に梯子を登れども、
まるで近づく気配なし。

ましてこの夢想家、聾盲、選民は、 175
心にかかる真実を、
見つけることを望みしか。

何となれば月下で虫が、糸を引き、
追いつ追われつ、骨折りて
それぞれ繭を紡ぎおり。 180

へこたれず、叫べ。真理が、北極の
微光の果てに生まれども、
朝の戸口で生まれども。

へこたれず、叫べ、上れ。希望から
遠き夜の果て、天も地も 185
曇りし坂の頂を。

雨催う霧の先にて、松陰の
輝く丘を登りしに、
片隅で光るもののあり。

我はゆく、と汝言いて、我はもはや、 190
真理を見つけ損なわじ。
見よ、安息地はその上に。

ゆく道の一路か蛇行か知らずして。
汝は影を打ち据えて、
雲を抱きしイクシオン。 195[*3]

獣より小さきものしか持たずして、
足も動かず哀れなまま、
天使などより低きものと

名乗りしか。嘆ずるなかれ、鳴くなかれ!
少しずつ闇に這うは如何に? 200
万病に効く薬あり」

「ああ馬鹿で横暴な声よ」と我言ひ、
「我を死に向け鼓舞せんと、
すべて偽るつもりならん?

我は知る、口や手足の音高く、 205
制度、信条の衣鉢が、
時から時へ継がるるを。

敢えて言わむ、平和を求め、戦いを
おこないし人の、天主と
交わる喜びを賜りしを。 210

渠、倦まず流れに逆らい船を漕ぎ、
遠きエデンの門を見て、
夢だとは夢に思わず」

「されど聞け、密かに通る水路より、
死者の墓のなかにさえ、 215
水源の音は聞こえけり――

その者は望みしことを成し遂げし――
こらえ忍びて倦まざるは、
さながらステファノ、消えぬ炎。[*4]

あしざまな声を気にせず、難癖に 220
心を売らず。嘲罵され
石に石もて打たれども。

だが慈悲に満たされ天を仰ぎ見て、
祈れば、聖なる場所より
神の栄光が顔を打てり」 225

そこでまた色なき声の走りける、
「希望の基は定まらず、
中身は種々に交わらず」

我曰く、「我は呪われ酷使されど、
世を知らずして、わろきより 230
悪きに落つるを恐れし。

そしてまた、一つの謎を解かんとし、
真実をこそ求めけれ、
新たに百を結ばんとす。

またはこの苦悶をここより遠ざけて、 235
心の重荷を解き放ち、
永久とわに釘づけ凍らせんと。

ゆえに行く、この苦しみに萎えながら。
ただ我は行く、ただ一人。
恐るまじかるものは如何?」 240

「考えよ」と声答えし。「死してより
一刻を経し、かんばせに。
意気、苦、自負の、何を見む?

命令を受けてそれに従わん?
手に触れられて答えしか? 245
答えはおろか、理解もせず。

掌は胸の上にてたたまれり。
意味するものはほかならぬ
安らぎに潜む長き不安。

口唇は飽くまでもろく柔らかく。 250
頬や口をぶたれども、
もはやその口を開くまじ。

死者がその見目よき顔に口づけし、
抱きしめ去りし幼娘おさなごは、
血を辱める者とならん―― 255

死者の名を継ぎし息子の長じれば、
栄えある者も、愚者もあれど――
死者は褒めるも責めもせず。

北風の怒号も聞かず、遺族らが
墓打つ冬の雨はばむ 260
屋根を求めし声も聞かず。

天高くもや重なりて棚引けり。
薄暮の死者に垂れ込めり。
故郷も死者を忘れけむ。

「声よ、みな闇に成らば」と我曰く、 265
「みな疑られ恐れられ、
なれ『死』を『死』とも言うべからず。

蜜は枯れ、草木は萎えて。より深き
虚構そらごとを我は見抜かん。
我、『死』を知らず、その印は? 270

いとけなきみぎりに我は死者を見し。
我は知りけり、墓上の影、
村の木陰の暗がりを。

墓石よりまた墓石へと影這えり。
静かなるなか、朝泣けり。 275
死者の足下に、花眠りし。

ただ一つ知覚が死者を包みけり。
『死よ! 汝こそ主人なれ、
死者はつゆとも動かざる』

夢も見ず人の眠りて朽ちなば、 280
この定かなる事実あれど
人の死すこと信じざらんや?

感覚を疑わせける外圧や、
内なる熱き証拠をば、
鍛え上げける者は誰そ? 285

その者の天に授かりし双眸は、
聡き心を読み取るも、
死すものほどに無垢ならず。

ここにありて翼を作り飛ばんとす。
心は謎を予言せん。 290
名づけて呼ばん、『永遠』と。

胸のうちに思い抱きし『完璧』を
あまねく自然に見出せず。
風に己を蒔きにけり。

天上にまします友に耳傾け、 295
終わりまで動く働きを
ヴェール越しにて捉えんとす。

始まりと終わりが理性を悩ません。
多くのものが、動き回り、
邪魔、妨害で困らせん。 300

善きものと斯く怪しからず戦いて、
血の卑しきを自覚せば、
せむとせしことせざらんや。

天国は内に開きて、口裂けたり。
暁光のなか大き像が 305
半ば見え、破れ、撤退す。

嗚呼! きっと人の内にも、外にても、
暗き知性を見出さば、
謎の答えのあるならん。

しかれども汝は二度と答え得ず。 310
己が武器にて屠らるるか、
答えはすれど詮無きか。

謎はなお残さるるとも、解かんとせじ。
堂々巡りを繰りかえさん。
確信のみが解決なり」 315

大波の、風にあおられ、落つる如く、
楯突きけりしあの声の
しばしやめども、また曰く。

が父の、自由な野にて遊びおり、
日向日陰で少年の、 320
日を過ごすころに、汝は何処に?

そのときの渠は少年と呼ばれけり。
二度と戻らぬ去りし日に
大人の膝に腰下ろす、

細き管の、まだが骨を湯あかにて 325
太らせずして、走りゆき、
なれも大人になる日まで。

妻をとりり、子孫を残し、その顔に
しわ刻まれて、生涯の
苦労の数の現れん。 330

何も無く、価値だにも無き、その命、
生まれる前の無に発し
地下に眠りし無に終うる!」

我曰く、「それもこれまでの繰り返し。
判然とせぬ、胸のうちの 335
朧な疑念に過ぎぬこと。

だが或るは、己がつもりを飽くまでも、
汝は申し立つるならん――
始めは終わりと訴えん。

だが我は如何にして把握せんや、 340
かつて人型にありしことを?
衰えゆきし記憶にて。

このことを明らむること能わざれど、
無益なれども射放たん、
脳の奥より盲矢めくらやを。 345

ただ一つ結ばれにける機関部に
落つるのみならず、巡りやまぬ
命は無きにあるべからん。

そのかみの神話の語る如くにや、
忘却川レテの滴が、おちこちに 350
滑り落ちしを待つべからん。

今我ら昏睡するが如く、渠ら
さきに見し夢を忘れけり、
また昏睡に落つるまで。

若し我れらさきの世と変わらざらば、 355
見覚えあるももっともなり、
二者の触れ合うべかりけん。

しかれども、我高きより落ちたらば、
落ちけるたねは、我が恥を、
ただ言い伝え仄めかさん。 360

高きを遙か見上ぐる喜びは
ただわけもなく高ぶりて、
夜の明かりを求めけむ。

或るは若し、我が生活の見劣らば――
心も体も解け合いて 365
如何なる功を経けれども――

いよ劣る運命を我忘れしか。
生まれし年を忘れざらん?
記憶の底ぞ響かざる。

人はみな、長く理性を持たざりて、 370
狂気の部屋より放たれて、
暗き心を失わん。

さらにまた、剥き出したりし核の如く、
我の自由に漂わば、
我が記憶など無益ならん。 375

何となれば、記憶の連れは「時」ばかり、
人が「事実」と接するに、
記憶は己を越ゆらんや?

なおもまた、忘れられける夢の如く、
妙なる光の触れにけり、 380
或るは触れると思えけり――

何らかの、何かに似たる、感じけり。
何かが為されし、いずこかで。
如何な言葉も用い得ず」

静なる声の笑いて、「我が輩は 385
なれの夢とは語らわじ。
汝の痛みは真なり」

「だが汝は、地上をすべて闇に変え、
我が棺桶を欠くことに
しくじりけり」と、我言いし。 390

「若し我が斯かる軽挙をおこなわば、
古き御霊みたまの、新しき
器に盛らむを言うまじや?

狂おしく嘆きて何を言いしかど、
如何な命も息をして 395
心より死を願うまじ。

其は命、力乏しき命なれど、
死ならぬ命、請い願わん。
さらに満ちたる命あれ」

我黙り、一人寂しく座りけり。 400
すると声せし、嘲りて、
「見よ安息日のあしたなり」

立ち上がり、窓を開けば、暁の
東の息吹、輝ける
光をさらに輝かせり。 405

かすめ吹く柔らかき風の如くして、
湖水の氷、溶けるころ、
教会の鐘、響きけり。

人はみな神の家に押しかけて。
みな眠るべき場所を抜け、 410
賓客の如く入りけり。

妻と子に挟まれ歩く男あり、
軽くしっかと足合わせ、
時折りまめに笑いけり。

慎ましき一世の伴侶の、善く、尽くし、 415
優しく、薔薇を女らしく
身に飾りつけ、寄り添いし。

父母ちちははの二つの愛に守られし
幼き娘は、恥じらいて、
澄みし目を伏せ歩きけり。 420

三人の甘き絆を見るにつけ、
凍てし心も打ち始め、
古き熱さを思い出さん。

恵みあれ、と祝げば、渠ら歩み去る。
我はたずねど、音もなし。 425
暗苦き声、立ち去れり。

二つ目の声のが耳に届きけり。
鈴の如くささやきて、
「心安かれ」とつぶやけり。

幸せな隣人からの声の如、 430
かすかに気づき理解せり、
「我、終わりを見、善を知る」

苦しみを和らげさせん導きの、
かするる声がささやきて、
「我知ることを話すまじ」 435

如何様な風こそ起てざれ、分別を、
風鳴琴の立てし
遙かに超ゆる如くにも。

耳元にささやく声は似たるかな。
「声、何を知るや?」と我問えば。 440
「ひそかな望み」と声は言う。

天上の響きを聞きしそのときに、
暗き心より力発ちて
顔を見せるは、雨後の虹、

言葉では明かし立てねど、群雲の 445
空に広がり愛を覆う、
それも愛だと、感じけり。

いざ我は野原に向かい歩を進め、
天然自然の活動は
不満に希望を与えけり。 450

冬雨の降りそぼちけるその果ての、
夥多かたの時間をいぶかりし。
花に見とれて草を見ず。

いぶかりて、我は歩みを進みけり。
森には歌が満ちあふれ、 455
悪き心は見あたらず。[*5]

万物の個々に動くと見えければ、
暗き思いに囚われし
心なりしと呆れけり。

それゆえに、ことさら我が選びしは、 460
つまらぬ声との対話なり、
「喜べ!」と言いし声よりも。


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[註釈]
*註1 [静なる細微き声]。旧訳「列王紀(上)」第19章第12節。

 又地震の後に火ありしが火の中にはヱホバ在さざりき火の後に靜なる細微き聲ありき(文語訳)。/地震の後に火があったが、火の中にも主はおられなかった。火の後に静かな細い声が聞えた(口語訳)。

 ※この詩を文語調で訳したのは、一行目に聖書からの引用があり、該当箇所を文語訳聖書から採用したからにほかなりません。[
 

*註2 [面容《かおかたち》]。旧訳「ヨブ記」第14章第20節。

 汝は彼を永く攻めなやまして去往《さりゆ》かしめ、彼の面容《かほかたち》の變らせて逐ひやり給ふ。(文語訳)/あなたはながく彼に勝って、彼を去り行かせ、彼の顔かたちを変らせて追いやられる。(口語訳)[
 

*註3 [イクシオン]。イクシーオン、イクシーオーン。ギリシア神話。

 不遜にもゼウスの妻ヘラに恋をしたイクシオンは、ヘラに似せて作られた雲と交わり、そこから生まれたのがケンタウロス。イクシオンは車輪に縛りつけられ永遠に回り続ける罰を受けた。[
 

*註4 [ステファノ]。ステパノ。新約『使徒行伝』第7節ほか。

 7:58 ステパノを町より逐ひいだし、石にて撃てり。證人らその衣をサウロといふ若者の足下に置けり。/7:59 かくて彼等がステパノを石にて撃てるとき、ステパノ呼びて言ふ「主イエスよ、我が靈を受けたまへ」(文語訳)

 7:58 彼を市外に引き出して、石で打った。これに立ち合った人たちは、自分の上着を脱いで、サウロという若者の足もとに置いた。/7:59こうして、彼らがステパノに石を投げつけている間、ステパノは祈りつづけて言った、「主イエスよ、わたしの霊をお受け下さい」(口語訳)[
 

*註5 [悪き心は見あたらず]。ルイス・キャロル『シルヴィーとブルーノ完結編』第8章「こかげにて」→ html に引用された箇所。[
 

▼メモ。万病に効く薬=死。みな眠るべき場所=墓地。

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