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1942 Lay On, MacDuff! 『さあこい、マクダフ!』
 ・元歴史学教授 MacDougal Duff もの第一作。タイトルは『マクベス』より。
邦訳  →このサイト
あらすじ

 わたしベッシー・ギボンは20歳、もうすぐ結婚する。だけど二月にあれが起こったときにはまだ19歳だったのだ。両親を亡くし、ニュー・ヨークのおじに引き取られることになったわたしを、駅に迎えに来たのはヒュー・ミラーという30歳くらいの青年だった。おじは家から出られないのだという。おじと友人のバートラム・ガスケル、ハドソン・ウィンベリー、ガイ・マクソンが、習慣通りにパチーシ(インド起源の双六)をする日なのだ。ゲームは異様な雰囲気に包まれていた。まるで命がかかっているような……。おばが帰ってきたとたんお開きになった。おばのレナは若くて綺麗だった。眠っていると電話のベルで目が覚めた。おじの声が聞こえる。友人の一人が射殺体で見つかったという報せだった。死体にはゲームの駒が添えられていた……。

解説

 シャーロット・アームストロングのミステリデビュー作。本書を含めた初期三部作はサスペンスではなく、元歴史教師のマクドゥガル・ダフが探偵役を務める謎解きミステリです。

 本書の特徴は、何と言ってもとにかく大量の仮説の山。決定的な証拠がないために、マクダフはいくつもの可能性を徹底的にシミュレートします。真相が明らかになるまでは、可能性に可能性を重ねるしかなく、もはや推理というより砂上の楼閣、風前のトランプピラミッド。危うい机上の論理の綱渡りを最後まで渡りきってしまったアクロバティックな本格論理ミステリです。

 可能性を一つ一つ潰していく過程で、一つの事実が二つの可能性を示唆しているのが明らかになったりするのが非常にうまい。どっちとも決めかねるまま、また新たな可能性が出てきたりして、けっこう複雑なんだけれど、一つの可能性が潰れた段階でもう一つの可能性も確定できたりと、けっこう考え抜かれた構成でした。意外なことに(?)伏線もいたるところにあるので要注意。

 容疑者の人数が限りなく絞り込まれてさえ、あくまで論理にこだわる終盤には凄みすら感じました。これで最後に意外性さえあれば、クリスチアナ・ブランド級の大傑作になっていたかもしれません。が、読みどころが意外性にあるわけではないあたりに、むしろその後のアームストロングらしさを感じます。探偵ものの論理とはミスマッチな、語り手によるサスペンスも、往年のアームストロング節を堪能できました。

Lay On MacDuff Zebra Books版(1993年)    ・邦訳→このサイト


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