この翻訳は翻訳者の許可を取ることなく好きに使ってくれてかまわない。ただし訳者はそれについてにいかなる責任も負わない。
翻訳:東照《あずま・てる》
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アンジュ・ピトゥ

アレクサンドル・デュマ

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第三十二章 国王の侍医

 数分後、王妃が侍女に伝えていた願いは叶えられようとしていた。ジルベールは驚きと僅かな不安と強い戸惑いを感じながらも、決してそれを表には出さずにマリ=アントワネットの御前に姿を見せた。

 堂々と自信に満ちた挙措、気品のある白い肌は、智識と想像力という、勉学によって後天的に培われた資質を持つ人間に特有のものだ。第三身分の黒服のおかげで白い肌がいっそう目立っている。第三身分の議員だけではなく、革命の主張に同意している者たちも黒服を着用する決まりになっていた。皺の寄ったモスリンの下から覗く細く白い手、細く綺麗で均整のとれた足は、牛眼の間(l'Œil-de-Bœuf)にいる目利きたちにも、これ以上のものを宮廷から探すことは難しかろう。それらに加えて、女性に対する敬意と遠慮、病人に対する頼りがいのある図太さを持ち合わせていたが、王妃だからといって特別な態度を見せたりはしていない。以上のことが、ジルベール医師が寝室の扉を開けた瞬間に、その外見からマリ=アントワネットが読み取った、目に見えてすぐにわかる印象であった。

 ジルベールが控えめな振舞をすればするほど、王妃の怒りはますます高まった。王妃はジルベールのことを恥ずべき人間だと見なしていたから、当然のことながら、ほとんど無意識のうちに、周りでちらほら見かけるような破廉恥な人間と同じように考えていたのだ。アンドレを苦しませた張本人、ルソーに親炙した弟子、成人した未熟児、医師になった庭師、哲学者と心の医者になった害虫駆除係に、王妃は我知らずミラボーの顔を重ね合わせていた。ミラボー、即ち、ロアン枢機卿やラ・ファイエットの次に憎んでいる人間だった。

 ジルベールを見るまでは、その巨大な意思を仕舞い込むためには巨大な肉体が必要だと考えていた。

 だが目の前にいたのは若く姿勢がよく、すらりとした優雅ななりをした、穏やかで柔らかな顔立ちの男だった。王妃にはそれが、見た目で嘘をつくという犯罪を新たに犯しているように見えた。庶民で、卑しく名もない生まれの、ジルベール。農夫で、田舎者で、平民のジルベール。王妃の目には、貴族や名門の外見を盗み取るという罪を犯しているように見えた。他人の家で嘘をつくような人間を許せない、誇り高いオーストリア女である王妃は、憤慨し、幾つもの不満の種を撒き散らした不幸な欠片に対して急に激しい憎しみを抱き始めた。

 親しい者たちなら、目に宿っているのが凪なのか嵐なのかを読み取ることに慣れている者たちなら、王妃の心の奥底で暴風雨が吹き荒れ雷鳴が轟いているのを、容易に見抜いたことだろう。

 だが一介の人間、一介の女に、情熱と怒りが渦巻くそのただ中で、胸中でぶつかり合っている相反する奇妙な感情の跡をたどることなど出来るだろうか? ホメロスが描いたような恐ろしい毒で胸を満たしている感情をたどることが出来るだろうか?[*1]

 王妃は目顔で侍女たちを、ミズリー夫人(madame de Misery)さえも、退らせた。[*2]

 一人ずつ部屋を出る。

 王妃は最後の一人が外に出て扉が閉まるのを待ってから、ジルベールに目を戻して、ジルベールがずっと自分を見つめ続けていたことに気づいた。

 何と厚かましいのだろう、怒りがこみ上げる。

 医師の目つきは見たところ無害だが、執拗であったし、企みに満ちていたし、抗わざるを得ないと感じるほどの重圧だった。

「あら先生」王妃は銃弾のように言葉を放った。「何をしてらっしゃるの? そんなところに突っ立ってわたしを見つめてないで、何処が苦しいのかたずねるべきじゃありませんか?」

 稲妻のような眼差しを伴うその乱暴な言葉を聞けば、王妃の取り巻きは誰もが身体をすくめただろうし、フランス元帥も英雄も半神もひざまずいて許しを請うたことだろう。

 だがジルベールは穏やかに答えた。

「医者はまず目で見て診断を始めるのです。医者をお呼びになった陛下に目を注いでいたのは、無意味に好奇心を満足させるためではなく、自分の務めを果たしていたのであり、仰せに従っていたまでのことです」

「ではわたしを観察していたと?」

「出来うる限りでですが」

「病気でしたか?」

「正確に申せばご病気ではありませんが、過剰な興奮状態でいらっしゃいます」

「そうですか」マリ=アントワネットは小馬鹿にしたようにたずねた。「怒りに駆られているとは仰らないのですね?」

「医者をお呼びになったのは陛下なのですから、医者が医学用語を使うのはお許し下さい」

「いいでしょう。それで……過剰な興奮状態の理由わけは?」

「陛下ほどのご見識をお持ちでしたらお気づきだとは存じますが、医者は経験と学識によって肉体的疾患を見抜きますが、人間の心の奥底というものは易者のように一目見て計れるようなものではありません」

「二度三度見れば痛いところだけではなく思っていることまで見抜くことが出来るとと言いたいのですか?」

「そのつもりです」ジルベールは事務的に答えた。

 王妃は無言のまま震えていた。口唇からは今にも煮えたぎった辛辣な言葉が飛び出そうだ。

 だが王妃は堪えた。

「信じなくてはなりませんね。学者さんの言うことですから」

 この「学者さん」という言葉に間違えようもないほどの無慈悲な蔑みが込められているのを聞いて、今度はジルベールの目に怒りの炎が灯った。

 だがそれに打ち勝つには一瞬だけあれば充分だった。

 すぐに落ち着いた表情と何くわぬ口振りで話を続けた。

「お優しいですね。どんな学識を身につけているのかも確認なさらぬうちに、学者の免状を下さるとは」

 王妃は口唇を咬んだ。

「仰る通りあなたに学があるかどうかは知りません。皆さん仰っていることを繰り返しているだけです」

「いけません」ジルベールは恭しく告げると、深々と頭を下げた。「陛下ほどのお方が、民衆(le vulgaire)の言うことを吟味もせずに繰り返してはなりません」

「庶民(le peuple)の間違いでは?」傲然と王妃がたずねた。

「民衆です」ジルベールは毅然として繰り返した。王妃は味わったことのない衝撃に、ひどく感じやすい女心の奥底を震わせられた。

「その点はもう結構。問題にしたいのは、学があるという評判のことです。何処で学んだのですか?」

「あらゆるところで」

「答えになってません」

「では何処でもありません」

「その方がましですね。何処でも学ばなかったと?」

「お任せいたします」ジルベールは頭を下げた。「ですがあらゆるところと言った方が正確なのですが」

「きっちりと答えなさい」王妃は苛立って大声を出した。「ジルベール殿、そんな言葉で誤魔化そうとしたってそうはいきません」

 それから独り言つように、

「あらゆるところですって? そんな言葉に何の意味が? そんなのペテン師の言いぐさ、インチキ医者の言いぐさ、町医者の言いぐさではではありませんか。響きのいい言葉で納得させようとでもするつもりですか?」

 王妃はジルベールを睨みつけ、口唇を震わせ、足を踏み出した。

「あらゆるところですって? はっきりと仰い、ジルベール殿」

「あらゆるところと申しました」ジルベールは動ぜず答えた。「実際にあらゆるところで学んだのです。あばら屋でも宮殿でも、都会でも田舎でも、人類のことも動物のことも、自分のことも他人のことも、学問を愛する人間ならそうするように、学問のある場所なら何処ででも学ぼうとする人間ならそうするように、つまりあらゆるところで学んだのです」

 打ちのめされた王妃はジルベールを鋭い目つきで睨んだが、ジルベールも頑として動じずに睨み返していた。

 王妃はぴくぴくと震え、後ろに退って丸テーブルをひっくり返した。テーブルにはチョコレートの注がれたセーヴル焼きの器が載っていた。

 ジルベールはテーブルが倒れるのを目にし、器が割れるのを目にしたが、動こうとはしなかった。

 王妃の顔に赤みが差した。冷たく湿った手を火照った額に押しつけ、伏せた目を改めてジルベールに向けようとしたが、果たせなかった。

 ただし傲慢ではなく軽蔑しているからだと自分に言い聞かせながら。

「誰の許で学んだのです?」王妃は先ほどの続きから話を再開させた。

「これ以上陛下を傷つけないようお答えするにはどうしたらいいか……」

 王妃はこの機会を捉えてライオンのように飛びついた。

「傷つけるですって? わたしを傷つける? 何が言いたいのです? 王妃を傷つけるとは! 間違いを犯しておいでね、ジルベール先生。医学ほどきちんとしたところでフランス語を学んで来なかったようですね。わたしのような地位にある人間は傷つけられたりはしない。うんざりさせられるだけです」

 ジルベールはお辞儀をして扉に足を向けたが、顔にはどんな小さな怒りの跡も苛立ちの徴も見出せなかった。

 反対に王妃は地団駄を踏んで、ジルベールを引き留めようとでもするように身を躍らせた。

 ジルベールはそれに気づいて、

「失礼しました。仰る通り致命的な間違いを犯してしまいました。医者として病人の前に呼ばれていることを失念しておりました。お許し下さい。二度と忘れはいたしません」

 それから改めて、

「陛下は神経性の発作を起こしそうになっていらっしゃいます。どうか発作に溺れませぬよう。じきに自由が利かなくなってしまいます。そうなると脈が途切れ、血が心臓に押し寄せます。ひどい痛みに襲われ、じきに息が詰まってしまいますから、念のため侍女を一人呼び寄せておくべきかと愚考いたします」

 王妃は部屋を一回りして腰を下ろした。

「ジルベールと仰るのですね?」

「ジルベールと申します」

「おかしなことですね。若い頃のことを思い出しました。若い頃の記憶は何故か鮮烈なものですもの、その話をすれば、あなたをひどく傷つけることになるでしょうね。構いやしません。傷ついても、ご自分で治せるんですから。学のあるお医者様であるうえに、立派な哲学者でいらっしゃるようですもの」

 王妃は皮肉に満ちた笑みを浮かべた。

「仰る通りです。どうか笑みを浮かべ、皮肉を口にして少しずつ神経をなだめて下さい。そのようにして自制できるのは、智的な方だけに許されたことなのです。どうか落ち着いて下さい、ただし無理はしませんように」

 親切で物柔らかな指示を聞いて、王妃はそこに強い皮肉が込められているのを感じながらも、背くことが出来なかった。

 ただし王妃はやりかけた攻撃の手をゆるめたりはせずに繰り返した。

「お話しするのはこんな記憶です」

 ジルベールは拝聴の印にうなずいた。

 王妃は勇を鼓して視線をぶつけた。

「王太子妃だった頃、わたしはトリアノンで過ごしていました。トリアノンの花壇には、真っ黒で土まみれのしかめ面をした青年がいて、小さなジャン=ジャックといったその青年は、節くれ立った小さな手で草を毟ったり土を耕したり虫を取ったりしていました。その青年の名がジルベールと言いました」

「それは私です」ジルベールは冷静に答えた。

「あなただったのですか?」マリ=アントワネットが憎しみを爆発させた。「ではわたしが正しかったのだ! あなたは教育を受けた人間ではなかったのだ!」

「素晴らしいご記憶力をお持ちの陛下のことですから、あの当時のことも覚えていらっしゃるかと存じます。間違っていなければ、あれは一七七二年のことでした。陛下のお話になったその庭師の青年は、たつきを得るべくトリアノンの花壇を耕していました。今は一七八九年ですから、陛下が仰ったことが起こったのは十七年前のことです。何年もの時間を生きているのです。無学な者を博識に変えるには充分ではありませんか。心も頭脳もある条件の下ではすくすくと育つものです。温室で育てられた草花のように。革命とは智性にとって温室なのです。陛下がものをご覧になるその明晰な眼差しをもってしても、十六歳の青年が三十三歳の男になったことがおわかりにならないのです。ですから、無学でうぶなジルベールが、二つの革命の息吹に触れて科学者と哲学者になったことに驚くには当たりません」

「無学なのはわかりますが……うぶだったと言うのですか?」王妃は「若い頃のジルベールがうぶだったと仰るのですか?」

「自分のことを勘違いしていたり、その青年のことを不相応に褒めたりしていると仰られても、その青年が持っている正反対の欠点を陛下が如何にして本人よりも詳しく知り得たのかわかりません」

「そんな話をしているのではありません」王妃が眉をひそめた。「そうした話は後日にしましょう。今話したいのは、目の前にいる学のある人間、進歩した人間、完成された人間のことです」

 「完成された」という単語にもジルベールは反応しなかった。それもまた侮辱の言葉だということはわかり過ぎるほどわかっていた。

「ではそういたしましょう」ジルベールは素っ気なくそう答えた。「その男にお部屋に参るようお命じになったのはどのような事情によるものでしょうか?」

「国王の侍医に志願したそうではありませんか。夫の健康を気に掛けるのは当然のことです。見も知らぬ人間に委ねることは出来ません」

「確かに志願いたしましたし、王妃陛下から能力や熱意に対する疑いを解いていただかぬうちに採用されたことも確かです。実を申しますともっぱらはネッケル氏の推薦を受けた政治上の医者なのですが、それに加えて国王陛下から医学の智識を所望された暁には、人間の智識が創造主の御業の助けになれる限りにおいて、肉体の医者としてもお役に立つつもりです。けれど何よりも、国王陛下にとって良き助言者であり良き医者であるうえに、良き友人でありたいのです」【j'ai été accepté sans que Votre Majesté puisse concevoir justement le mo

「良き友人?」王妃が再び蔑みを爆発させた。「あなたが国王の友人ですって?」

「その通りです」ジルベールは平然として答えた。「何か問題でも?」

「当たり前です。秘密の力を用いたり神秘学を利用したりするような人間が」王妃が呟いた。「どうなってしまうのでしょう? フランスはこれまでジャックリー(Jacques/Jacquerie)やマイヨタン(les Maillotins)を経験して来たというのに、このままでは中世に戻ってしまうではありませんか。あなたは媚薬と魔法を甦らせたのです。魔術によってフランスを支配し、ファウスト(Faust)やニコラ・フラメル(Nicolas Flamel)になろうとしているのです」[*3]

「そのような大それた意図は露ほどもございません」

「意図がないですって? アルミーダの園(jardins d'Armide)にいる魔物よりも冷酷で、ケルベロス(Cerbère)よりも残虐な怪物を、地獄の入口に何匹眠らせていることやら!」[*4]

 この「眠らせている」という言葉を口にした時、王妃はこれまでにも増して探るような目つきを医師にぶつけた。

 今回はジルベールも知らず赤面した。

 これがマリ=アントワネットには何とも言えない喜びを与えた。今回の攻撃が紛れもなく相手を傷つけたことを感じ取った。

「確かに人を眠らせてますものね。あらゆるところであらゆることを学んだそうですもの。同時代の催眠術師や、眠りを裏切りに変えて他人の眠りから秘密を読み取る人たちと、机を並べて催眠磁気の智識を学んだに違いありません」

「確かに、長い間にわたって幾度となくカリオストロ先生の許で学びました」

「今お話ししたように、人の心を盗み、弟子たちに盗ませた人ではありませんか。魔術による眠り、わたしに言わせれば汚らわしい眠りの助けを借りた人ではありませんか。他人から魂を奪い、またある人たちから肉体を奪った人ではありませんか」

 ジルベールはまたも当てこすりを理解したが、今度は赤くならずに青くなった。

 王妃は心の底から喜びに震えた。

「惨めな人」王妃が呟いた。「これであなたを傷つけることが出来た。勝手に血を流せばいいんです」

 だが激しい感情がジルベールの顔に現れていたのは長い時間ではなかった。ジルベールは、勝利に喜びしれ無防備に見つめている王妃に近づいて行った。

「陛下はきっとお間違えです。陛下がお話しになった科学者たちについて、その学術的成果である催眠の力をお疑いになるのは間違っていらっしゃいます。あれは催眠磁気による犠牲者ではなく被験者なのですから。分けても、探求する権利にお疑いを挟むのは間違っていらっしゃいます。ひとたび原理が世に知られ法則化されるや世界を変えるような発見を、ありとあらゆる手を用いて追い求めるのは、当然の権利なのですから」

 王妃に近づきながら、ジルベールは見つめ返した。アンドレに発作を起こさせ屈服させたあの意思の力をみなぎらせて。

 ジルベールに近づかれて、王妃は全身の血管が怖気づくのを感じた。

「おぞましい! いかがわしく邪悪な経験を濫用して魂や肉体を貶める者たちなど恥辱にまみれてしまえばいい!……カリオストロなど一敗地にまみれてしまえばいい!……」

「陛下」ジルベールの言葉には揺らぎがなかった。「人間の犯す過ちをそんなに厳しく裁くものではありません」

「何ですって!」

「人間は間違いを犯してしまうものです。人間は人間を傷つけるものなのですから、一人一人が我が身を守り治安を形作っていなければ、世界が大きな戦場になるだけです。最良の人間とは善良な人間です。悪いところのないのが最良の人間だと言う人もいるでしょう。判事の心が気高いほど、寛容の心は大きいものです。玉座という高みに坐します陛下には、他人の過ちを他人ひとより厳しく裁くご権限がございません。地上の玉座の上では、至高の寛容をお与え下さい。天上の玉座に坐します神が至高の慈悲を賜りますように」

「わたしはあなたとは違う見方で、自分の権利や義務を見ています。わたしは人を罰し人に報いるために玉座の上にいるのです」

「そうは思いません。それどころか、女であり王妃である陛下が玉座の上にいらっしゃるのは、人の間を取り持つためであり、許しを与えるためです」

「まさか説教をなさっているわけではありませんよね」

「もちろんです。ただ陛下のご質問に答えただけのこと。例えば先ほど陛下が口になさってその科学にお疑いを挟みましたカリオストロのことで覚えていることがあるのですが――トリアノンの話よりもさらに以前の話です――タヴェルネ邸の庭で、フランス王太子妃にその科学の証拠を披露したことがございました。妃殿下がその記憶を深く仕舞い込まねばならなかったことはお察しいたします。と申しますのも、証拠を目にされた妃殿下はひどい衝撃を受けていらっしゃいましたから。気を失うほどの強い衝撃を」

 攻撃するのはジルベールの番だった。出任せの攻撃ではあったものの、その出任せが見事に当たって、王妃の顔は死人のように青ざめた。

「そうです」王妃の声はしわがれていた。「あの男は恐ろしい機械仕掛けが出てくる夢を見せたのです。けれど今日の今日まで、あの機械が実在するのを見たことはありません」

「陛下が夢で何をご覧になったのかは存じません」ジルベールは王妃にもたらした結果に満足して言った。「ただ存じ上げているのは、同胞であるほかの人間に対してそうした力を行使する人間には、科学者という肩書きに疑いを差し挟む余地などないということです」

「同胞ですか……」王妃は馬鹿にしたように呟いた。

「間違っていても構いません。その力は、恐怖という軛によって、この世の王族や貴族たちの頭を同じ高さに下げることが出来れば、さらに大きくなるのです」

「おぞましい! もう一度言います。人の弱さや騙されやすさにつけ込むような者たちは、恥辱にまみれてしまえばいい」

「おぞましい? 科学を用いる者たちのことを、そう仰いますか?」

「絵空事や欺瞞ばかりの卑劣漢です!」

「何と仰いました?」ジルベールは表情を変えなかった。

「カリオストロは卑劣なペテン師であり、いかさま魔術によって眠らせるのは犯罪だと言っているのです」

「犯罪ですって?」

「ええ、犯罪です。飲み物を飲ませたり、媚薬や毒薬を飲ませたりした結果に対する、人間としての正義とは、わたしなりに考えるに、犯人が傷つき罰さられることではありませんか」

「陛下」ジルベールはなおも辛抱強く答えた。「過ちを犯した者たちに、どうか寛大なお心を」

「では認めるのですね?」

 王妃は間違っていた。ジルベールの穏やかな声を聞いて、許しを請うていると勘違いしたのだ。

 王妃は間違っていた。ジルベールは有利な状況を逃すまいとしていたのだ。

「何ですって?」ジルベールが瞳に宿る炎をいっそう燃え上がらせたので、マリ=アントワネットは陽射しに当てられたように目を伏せざるを得なかった。

 王妃は狼狽から立ち直れなかったが、何とか気持を奮い立たせた。

「王妃を傷つけることが出来ないように、王妃に質問することもなりません。宮廷に入ったばかりでしょうが、そういうことも覚えてゆくことです。それはそうと、過ちを犯した者たちの話でしたか。寛大になるようにとわたしに注文していたようでしたが」

「非の打ち所のない人間とはどのような人間でしょうか、誰の目も届かない良心の殻の奥深くに閉じこもることが上手く出来た人間でしょうか? 人はそれを美徳と呼ぶようですが。どうか寛大なお心を」

「でもそうすると」と王妃は不用意に答えた。「良心の奥底にさえ真実を求める目を向ける人間たちの弟子であるあなたにとって、美徳のある人間などいないのではありませんか?」

「それはその通りです」

 王妃は蔑みを隠そうともせず笑い出した。

「お願いですから、今は広場で愚者や田舎者や愛国者たちに話をしているのではないことを思い出していただけますか」

「どなたに話をしているのかは承知しておりますから、ご心配無用です」

「でしたらもっと敬意を払いなさい。せめてもう少し上手くやることです。これまでの人生を振り返ってご覧なさい。幾ら才能や経験があろうと、あらゆるところで励んで来た人たちにも凡人たちと変わらず備わっているその良心とやらの奥深くを覗いてご覧なさい。卑しいこと、悪いこと、罪になることだと考えられることをすべて思い出してご覧なさい、これまでに犯して来た残酷な行為、暴力行為……それから忌まわしい罪も、すべて思い出してご覧なさい。お黙りなさい。今言ったことをすべて考え合わせたなら、頭を垂れて、身の程をわきまえ、礼儀を知らない尊大な態度で国王の住まいに近づいたりはしないことです。国王とは、少なくとも新しい秩序が出来るまでは、犯罪者の心に入り込み、良心の襞を探り、情け容赦なく罪人に最終的な罰を課すために、神が定めた存在なのですから。これがあなたがなさるべきことです。あなたが悔い改めればみんなが満足するのですよ。あなたのような病んだ心を治すには、孤独の中で生きるのが一番です。自分の価値を勘違いさせるような華々しさから、遠く離れて過ごしなさい。宮廷には近づかず、病身の国王を看るのは諦めるよう忠告いたします。得体の知れぬ治療を施すよりも、よほど神に感謝される治療があるではありませんか。古代ローマには、あなたにぴったりの諺がありますよ。『医者よ、汝自身を治せIpse cura medice』」

 王妃としては屈辱的な告発だと考えていたようだが、ジルベールはこれに憤りもせず、穏やかに返答した。

「陛下のご忠告はとうの昔にすべて実行しております」

「何をしたと?」

「じっくりと思い返してみました」

「自分自身のことを?」

「その通りです」

「それから……あなたの良心について?」

「特に良心の拠り所について」

「あなたが良心の中に何を見たのか、わたしにははっきりとわかっていると思いませんか?」

「陛下が何を仰ろうとしているのかは存じませんが、仰りたいことはわかります。私ほどの年齢の人間が、いったい何度、神に背かなければならなかったか?」

「選りにも選って、あなたが神の名を口にするのですか!」

「ええ」

「あなたが?」

「いけませんか?」

「哲学者が? 哲学者が神を信じているのですか?」

「神の名を口にし、神を信じております」

「出て行く気はないと?」

「飽くまで留まります」

「いい加減になさい」

 王妃の顔が恐ろしい凄みを帯びた。

「よく考えてのことです。考えた結果、自分には人に劣るところがあるわけではないと判断したのです。人は誰もが罪を抱えています。本を繙くのではなく、他人の良心を繙くことで、そうした真理を学んだのです」

「普遍にして無謬の?」王妃が嫌味を利かせてたずねた。

「普遍にして無謬ではないにしても、人間の不幸についてよく知り、つらい苦しみを身を以て知っております。陛下の目に宿る虚ろな丸い瞳や、陛下の眉に一つ一つ広がってゆく線や、陛下の口の端を歪ませる畝――散文的な言い方をすれば皺という皮膚の縮み――をただ見さえすれば、これは間違いのないこと。陛下がどれだけの厳しい試練を受けて来たか、どれだけ苦悶に打たれて来たか、陛下の心がどれだけの回数裏切りに気づくために信頼を捨てて来たか。お望みとあらばすべて申し上げて見せましょう。否定されることは絶対にありません。読み取る能力のある目を、読み取りたい相手に向ければいいのです。この目の重みを陛下が感じたなら、水深用の錘が海溝に垂れるように探求の錘が心の奥底に入り込まれていると感じたなら、陛下もおわかりになることでしょう。私には何だって出来るのです。私がその力を止めてみれば、私に戦いを挑んだりはせずに感謝するに違いありません」

 その言葉は強い挑発の意図に満ちていた。男から女に向けられた、王妃の御前にも関わらずあらゆる礼儀作法を度外視したその言葉を聞いて、マリ=アントワネットは言語に絶するような衝撃を受けた。

 目の前に靄がかかり、頭の中は冷えて固まり、憎しみは怯えに変わり、両手は垂れ下がって動かず、見知らぬ危険が近づくのから逃げるように、自分が後じさるのを感じた。

「さあ陛下」ジルベールは王妃の心に生じていることをはっきり見抜いていた。「おわかりいただけますね、誰にも知らせず隠していることはもちろん、陛下ご自身すら気づいていないことも、容易く知ることが出来るのです。陛下の指が支えを求めて本能的に伸ばしているその椅子の上に、陛下を容易く横たえることが出来るのです」

「やめなさい!」王妃がぞっとして叫んだ。名づけようもない震えが心にまで伝わって来た。

「この私が唱えたくない言葉を心の中で唱えたとしたら、意思を曲げずに明らかにしたなら、陛下は私の力に打たれて倒れてしまうことでしょう。お疑いですか? お疑いにならないことです。私のことを試してみようと思っていらっしゃるのかもしれませんが、試したりしようものなら……いけません、よもやお疑いではありませんね?」

 王妃は倒れそうになって、息をあえがせ、胸を波打たせ、我を失って椅子の背にしがみつき、絶望に駆られながら無意味な抵抗を続けた。

「陛下」ジルベールはなおも続けた。「このことだけはわかっていただきたいのですが、この私が臣下の中でも陛下にもっとも敬服し献身し低頭している人間でなければ、恐ろしい経験をしていただいてでも説得するところです。怖がる必要はありません。王妃の御前にも増して女性の前では敬意を失したりはいたしませんから。自分の考えていることが陛下のお考えと触れ合うと思うだけで身体の震えが止まりませんし、陛下のお心を乱そうとするくらいなら死を選びます」

「おやめなさい」王妃は三歩と離れていないところに立っているジルベールを押しやろうとでもするように腕を振り回した。

「それなのにこの私をバスチーユに閉じ込めたのです。バスチーユに討ち入られたのを残念に思っていらっしゃるのも、バスチーユに討ち入って扉を開いたのが庶民だからでしかありません。個人的には何の恨みもない人間に、憎しみにたぎらせた目をお向けになったのです。おやおや、先ほどまで抑え込んでいた力を緩めてからというもの、息を吹き返した途端に疑いを新たになさらないとも限らないようですね」

 言葉に違わず、ジルベールが目と手の力を止めてからというもの、マリ=アントワネットは、真空ポンプ内で窒息しかけている鳥がそこから抜け出して歌声を取り戻しまた空を飛ぼうとするように、必死になって立ち上がっていた。[*5]

「まだお疑いですね。嘲笑い、軽蔑しておいでだ。いいでしょう! 心をよぎった恐ろしい考えを言わせていただきます。こんなことをしようとしていたところでした。陛下が心の奥深く仕舞い込んでいる苦しみや、隠し持っている秘密を、力ずくで打ち明けていただこうと思っていたのです。陛下がお触れになっているそのテーブルの上で今言ったような秘密を書いていただいた後で、陛下の意識を戻して目覚めさせてから、ご自身の筆跡であることを確認していただき、疑義を差し挟んでいらっしゃる力に何ら出任せなところなどないことを証明しようとしていたのです。それからどれだけ甚だしく我慢を重ねたかを、そうです、陛下が今さっき侮辱なさった人間がどれだけ寛大かを、侮辱する権利も理由もわずかなりとも持たないというのに陛下が一時間前から侮辱なさっている人間が、どれだけ寛大なのかを、証明しようとしていたのです」

「だったら眠らせてみればいい! 眠っている間に口を利かせてみればいい!」王妃は真っ青になって声をあげた。「やってみたら如何? それがどういうことかご存じなの? 脅した結果どうなるのかおわかり? 大逆罪ですよ。おわかりですか? わたしがひとたび目を覚まし、意識を取り戻したが最後、死罪を言い渡すような罪なのですよ」

「陛下」ジルベールは昂奮のあまり逆上している王妃を見つめながら答えた。「咎めたり脅したりするのはまだお控えになって下さい。確かに私は陛下を眠らせていたことでしょう。確かに女の秘密をすっかり聞き出していたことでしょう。ですがこうした状況の下では断じてありませんし、王妃と臣下という立場や、女と見知らぬ男という立場で二人きりおこなうものでも決してありません。王妃を眠らせていたはずなのは間違いありませんし、これほど簡単なこともありませんが、証人もなしに眠らせようとしたり口を利かせようとしたりは絶対にいたしません」

「証人?」

「ええ、陛下の言葉や身振りを残らず見聞きしてくれる証人です。それから起こるであろう場面の、疑う気持をわずかすら残さず陛下から奪い去るであろう場面の、どんな細かいところも見逃さずにいてくれる証人です」

「証人ですって?」王妃はぎょっとしたように繰り返した。「誰が証人になるというのです? いいですか、罪が二倍になるのですよ、証人を用意した場合、共犯者を持つことになるのですから」

「その証人が国王その人だったなら?」

「国王ですって!」マリ=アントワネットが声をあげた。催眠状態で告白させられると聞いた時よりもさらに激しく怯えているのを隠すことは出来なかった。「ジルベールさん!」

「国王です」ジルベールは冷静に話を続けた。「国王、あなたの夫、あなたの支援者、あなたを守って然るべき保護者です。あなたが目覚めた時に、国王がお話しして下さることでしょう。あまたの君主の中でももっとも尊敬されている方に己の科学を実践してみせることに、私が如何に敬意と誇りを感じていたかを」

 言い終えると、ジルベールは王妃にたっぷり考える時間を与えた。

 王妃はしばらく無言のままだった。乱れた息遣いだけが沈黙を乱している。

「よいですか」遂に王妃が口を開いた。「そのようなことを仰ったからには、あなたは生涯の敵となるのですよ……」

「或いは頼れる友に」

「馬鹿な。友情は恐れや疑いとは共存できません」

「友情とは、臣下から王妃に向けられた場合には、臣下が信頼を抱いている時のみ存在が可能なものです。それだけでも気づくのではありませんか? その臣下が敵ではないということを。最初の一言で敵から暴力を取り上げ、さらには真っ先に自ら武器を捨てたのであれば」

「それを信じろと?」王妃は不安と緊張を見せながらも、自信に満ちた様子でジルベールを睨んだ。

「どうして信じて下さらないのです? 私が誠実である証拠はすべてお見せしたはずです」

「人は変わるものです。違いますか」

「或る者たちが危険な武器を扱うに際して遠征に向かう前におこなっているのと同じ誓いを私は立てました。特権を用いるのは人から向けられた悪意を跳ね返す時のみであり、侮辱や弁明には用いないと。これが私の信念です」

「そうですか」王妃が譲歩した。

「わかりますよ。医者の手によって自分の心を目の当たりにするのが嫌なのでしょう。身体を医者に委ねるのも拒んだことがあったくらいなのですから。勇気を持って、信じて下さい。そうすれば医者は幾らでも助言いたします。私が陛下にお見せした寛大なところを、今日明らかにしたのは医者なのですから。私は陛下のことを愛したいのです。人から愛されて欲しいのです。国王にはこうしたことを既に伝えました。今度はそれを陛下とお話ししたいのです」

「おやめなさい」王妃がぴしゃりと言った。「罠に掛けましたね。女扱いして怖がらせておけば、王妃を操ることも出来ると考えたのでしょう」

「まさか。私はペテン師ではありません。私には私の考えがあるように、陛下には陛下の考えがあることは承知しております。ご判断を曲げろと言って脅されたと絶えず非難なさるのはお門違い。今後はそのような非難は寄せつけません。さらに申せば、女性の情熱と男性の強権を兼ね備えた陛下のような女性に会ったのは初めてのことでした。女性であると同時に友人にもなり得る方です。必要とあらば人間のありとあらゆる性質をお備えになることでしょう。私は陛下をお慕いしておりますし、これからずっとお仕えするつもりです。何も受け取るつもりはありません。ただ陛下のことを研究したいのです。陛下のためにはさらにいろいろと尽くすつもりです。私のことが邪魔っけな家具にしか思えない場合や、今日の出来事の衝撃が陛下の記憶から消えない場合には、おそばを離れようと考えております」

「そばを離れるというのですね」王妃の叫びに滲んでいる喜びは、ジルベールにもはっきりと伝わった。

「そういうことです」ジルベールは恐ろしく冷静だった。「国王陛下に伝えるべきことを伝えさえせずに、ここを離れるつもりです。果てしなく遠くまで行かなくてはご安心できませんか?」

 王妃はジルベールの自己犠牲に目を見張った。

「陛下の考えていらっしゃることはわかります。先ほど脅威をお感じになった磁気の力を誰よりもご存じなのですから、私がどれだけ遠くに行こうと危険は変わらないのではないかとお考えなのでしょう?」

「遠く離れてどうやって?」

「繰り返しになりますが――師や私が用いている力を陛下は非難なさいましたが、その力を使って人を傷つけようと思えば、距離が百里であろうと千里であろうと目の前であろうと傷つけることは可能なのです。怖がる必要はありません。決してそのようなことはいたしませんから」

 王妃はしばし考え込んでいたが、断固としていたはずの決意を揺らがせた目の前の男に向かって、どう答えていいのかわからなかった。

 突然廊下の向こうから足音が聞こえ、マリ=アントワネットは顔を上げた。

「国王です。国王がいらっしゃった」

「ではお返事を。私はここにいるべきでしょうか、いなくなるべきでしょうか?」

「でも……」

「お急ぎ下さい。お望みなら国王にはお会いしませんから、出てゆく扉をお指し下さい」

「ここにいなさい」

 マリ=アントワネットは、深々とお辞儀をしたジルベールの顔色を読もうとした。怒りや不安どころか何処まで得意になっているのか確かめたかった。

 ジルベールは平然としたままだった。

「せめて――」王妃は考えた。「喜びぐらいは顔に出すべきではないか」


Alexandre Dumas『Ange Pitou』Chapitre XXXII「Le médecin du roi」の全訳です。


Ver.1 15/10/31

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[訳者あとがき]


 

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[註釈]

*1. [ホメロスが描いたような]
 『イリアス』より、ヘクトルが城壁の外でアキレウスを待ち受ける場面か? 「それどころか、そのままに、物すさまじい勢いでアキレウスが間近へ来るのを待ち構えていた。その様子は、さながら、山中に棲む大蛇が、洞の口で人を待ち受けるのにも似ていた。はげしい毒を胎に含んで、ひどい怒りに身を占められると、孔のぐるりにとぐろを巻いて、凶暴な眼つきでじっと人を見つめる。」呉茂一訳。[]
 

*2. [ミズリー夫人]
 マリ=アントワネットの第一侍女(première femme de chambre)。[]
 

*3. [ジャックリー/マイヨタン/ファウスト/ニコラ・フラメル]
 原文「les Jacques」。「Jacquerie」のことか。最初の二つはそれぞれ暴動の名前。ジャックリーの乱(1358年)、マイヨタンの暴動(1382年)。後ろの二つファウスト(Faust)はファウスト博士、ニコラ・フラメル(1330-1418)は錬金術関係の著述家。】[]
 

*4. [アルミーダ]
 Armide(Armida)。タッソ『エルサレム解放』もしくはそのオペラ化であるロッシーニ『アルミーダ』に登場する魔女。十字軍の騎士リナルドを誘惑する。[]
 

*5. [真空ポンプ]
 17〜18世紀頃、真空ポンプ(空気ポンプ)内に鳥を閉じ込め、空気を抜いてゆくことで、空気がないと生きられないことを確かめようとした実験がある[]
 

*6. []
 []
 

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