〔翻刻〕
「この門の上へのぼり給へ」といふ。いかにものぼりぬべくもおぼえねど、男のたすけにてやすくのぼりぬ。すなはちはむ、てうととりむかへて、「かけ物はなにをかし侍べき。われまけたてまつりなば、君の御心に見めもすがたも心ばへもたらぬところなくおぼさむさまならむ女をたてまつるべし。君まけ給はば、いかに」といへば、「我は身にもちともちた〔らむ〕たからを、さながらたてまつるべし」といへば、「しかるべし」とて、
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〔現代語訳〕
「この門の上に登って下さい」と言う。どうしたところで登りようがないと思ったが、男の助けで難なく登ることが出来た。時を移さず半・丁と向き合わせ、「何を賭けましょうか。わたしが負けましたなら、姿形も気立ても絶対に満足なさる女を差しあげましょう。貴殿が負けなさったときはどうします」と男がたずねた。「俺は持てる財産をすべて、そっくりそのまま差しあげようではないか」と答えると、「よいでしょう」とうなずく。
〔画像〕
平安京の朱雀門は、現在復元されている平城京の朱雀門より扉が二つ多く、五つあります。が、造り自体はあまり変わらなかったようです。