アイルランド南部で五十年近くにわたり教区司祭を勤め上げた、尊敬すべき得難い友人である故フランシス・パーセルの書類に目を通していたところ、以下の文書に出くわした。これは数ある文書の一つである。というのも、古い民間伝承には目がない蒐集家であったうえに、住んでいた地域は幸に恵まれていた。そうした言い伝えの蒐集と整理が、覚えているかぎりでは彼の趣味だった。だが驚異と奇異を愛する気持が研究成果を書き留めるところにまで駆り立てていたとは、遺言によって残余財産受遺者として原稿を手にするまでは知らずにいた。このような作品を書き上げるのは田舎司祭の性格や習慣と矛盾しているとお思いになるような方には言っておかねばなるまいが、司祭という保守的で今や絶滅間近の人種は存在したのである――その広い教養は、メイヌースの卒業生がそれまでに明らかにしてきた以上に文学的な味わいを産み落とすことも多かった。
以下の物語で描かれている迷信について一言しておく必要もあろう。すなわち、埋葬されたばかりの死者は、埋葬されて間もないあいだ、煉獄の燃えるような渇きを癒すための新鮮な水を、墓所の隣人たちに差し出さなくてはならない、という迷信がアイルランド南部には広く分布している。ティペラリーの国境に住む立派で裕福な農場主の事例がそうだ、と書かれてある。亡き妻の足のたこを気遣って、棺には頑丈な靴を二足、軽いのと重いのとを入れた。一つは晴れの日用、もう一つは雨の日用である。そうして、水を手に入れて煉獄の渇いた魂に与えるために歩き回らなくてはならない疲れを和らげようとしたのだ。共に同じ墓地に向かっていた二つの葬列の場合には、壮絶悲愴な争いが引き起こされた。それぞれの死者の墓に対する優先権を確保することで、一番新しくやってきた死者に課される放浪権を免除させようと互いに尽力したのである。それから間もなく、参列者たちのどちらかが、亡き友に対するこうした特典が失われることを恐れて、墓所まで近道をしようとして、強い迷信をものともせず、実際に棺を塀越しに放り投げ、門を通ってなかに入る時間を無駄にしまいとした。似たような例が無数に引用され、南部の農民たちのあいだではこうした迷信がどれだけ強くもてはやされているかを明らかにしようとしていた。しかしながら、前口上によってこれ以上読者を引き止めるつもりはないが、以下のことは読者の前にお見せしておくつもりだ。
ドラムクーラフの故フランシス・パーセル師の手稿より抜粋
わたしは以下の物語を、思い出せるかぎりもとのままの語り手の言葉でお伝えしよう。言っておかねばならないのは、この語り手が話し上手と呼ばれる類の人物だったことだ。それというのもある状況を公言するのに都合がいいと気づいて、一般教養や科学などを長いあいだ生まれ教区の利発な若者に教えてきたためである――そのある状況というのが、この話のなかに意味の正確さよりも響きの良さが目立つもったいぶった言葉がちらほら出てくる理由になるかもしれない。それではこれ以上の前置きはやめて、テリー・ニールの驚くべき冒険をお目にかけることにしよう。
「ええ、さうです、ふしぎな話です。しかもあなたがそこに座つてゐるのと同じくらゐほんたうの話なんです。間違ひありません、七教区でも公正な話ができる教区民は私だけですよ、私の父に起こつたことなので、本人の口から何度となく聞いたんですから。このことははつきりと断言できますし、同時に誇らしくもありますが、父の言葉は國中の地主の誓ひと同じくらゐ信じられないものでした。さういつたしるしに加へて、貧乏人が不幸にも問題を起こしたなら、裁判に訴へて証明するやうな人だつたんです。ですがそんなのは意味のないことですね――父は正直で真面目な人間で、少しばかり酒をたしなみ過ぎるきらひはありましたが、一日歩いてもあれほどの人間は見つからなかつたでせう。力仕事と
「それで司祭さん、お話の途中でしたが、一家が城を出て一、二週間ダブリンに滞在してゐたときのことでした。いつものやうに、借地人の誰かが城で夜を明かさなくてはなりませんでした。三日目の夜、父の番がやつて来ました。『ああ気が重い!』と独りごち、『徹夜しなくてはならないのだらうか? さまよへる古き魂が、ああ神さま、家中を歌ひながら、あらゆるいたづらをしてゐるといふのに』 さうは言つても、仕事からは逃れられませんから、平気な顔を装つて、密造ヰスキイと聖水を手に黄昏を過ごしました。
「父が到着したのは、雨が激しく、薄暗く暗澹とした夜でした。雨に降られたうへに聖水を自分に振りかけたので、間もなくヰスキイを一口すすらなくては冷静でゐられませんでした。ドアを開けたのは老執事のローレンス・コナーでした――二人とも立派な人たちでした。ですから相手が誰だかわかると父は城の見張りのことを話し、一緒に寝ずの番をしやうと申し出ました。父が申し訳なく思つてゐなかつたと思はれるかもしれませんね。するとラリーが言つたんです。
『応接間で火に当たつていませう』と。
『なぜホールではないんですか?』と父がたづねました。応接間には地主の絵が掛けられてゐることを知つてゐましたから。
『ホールでは火を熾せません。煙突にカー助の巣があるものですから』
『それなら調理場に寄らうじやありませんか、俺みたいなのが応接間に腰かけるなんてもつたいない』
『テリー、それはいけません』とローレンスが言ひました。『しきたりを守るのであればしかるべく守らうぢやありませんか』
『しきたりなんか悪魔に食はれちまへ!』と父が言ひました――心のなかで、です、ご心配なく。いつそう怖がつてゐるとローレンスに見られたくありませんでしたから。
『わかつた、さうしませう、ローレンス』と言つて、二人して調理場に向かひました。応接間の暖炉が暖まるまでです――長くはかかりませんでした
「ですから司祭さん、二人はすぐにまた戻つて、暖かい暖炉のそばに気持ちよく腰を下ろすと、話をしたり煙草を喫つたりヰスキイを一口やり始めました。そのうへ、木炭や泥炭の火も大きくなつたので、足を暖めてゐました。
「さういふわけで、二人はくつろいで煙草とおしやべりを続けてゐましたが、そのうちローレンスが眠気に襲われ始めたんです。仕方ありません、年老いた使用人で、いつもぐつすりと眠つてゐたんですから。
『あり得ない。眠くなつたんですか?』
『とんでもない、目を閉じてゐるだけです。煙草の煙の匂ひを締め出して、目をうるほしてゐるんですよ。他人のことは構はないでください』とラリーはきつぱり口にしました。眠りたくて仕方がなかつたんですから(魂よ安らかに)。『話を続けてください、聞いてゐますから』目を閉じたままさう言つたんです。
「ええ、父は議論するのが無駄だと悟り、話を続けました。同じやうに、話したのはジム・スーリヴァンとおぢいさん山羊の話でした――楽しい話ですよ――気晴らしにはもつてこいで、眠りネズミの目を覚ますのはもちろん、眠りかけた
『ああ、これはまづいんぢやないか? 友だちぶつておいて、おまけにこんなふうに寝たふりされて、幽霊の出る部屋に二人きりだなんて。くそ神さまめ!』と言つて、ローレンスを揺すつて起こさうとしたのですが、目を覚ましたとしたら寝床に向かふのは間違ひないから、さうなつたら父は完全に一人きりになつて、ますますひどいことになると思ひ出したんです。
『仕方ない、坊やはそつとしておかう。寝てゐるのを邪魔するなんて友情でも親切でもないからな。俺も見習ひたいものだな』
「さうして祈りを唱へながら行つたり来たりしてゐたので、おかげさまでそのうち汗びつしよりになりました。でもまつたく役に立ちませんでした。そこで一杯ばかしアルコールを飲んで、心を落ち着けやうとしたんです。
『ああ、このラリーのやうに気楽になれればいいのに。あるいは眠らうと思へば眠れるかもしれないな』と言つて、ローレンスのそばまで大きなアームチェアを引つぱつてきて、できるだけ楽な姿勢で沈み込みました。
「でもおかしなことがあつたとお話しするのを忘れてゐました。父は無意識のうちにときどき絵に目をやらずにはゐられなかつたんですが、肖像画の目につけ回されてゐることにすぐに気づいたんです。父がどこに行つても見つめたり目配せしたり。それを見た父は『ああ、もう駄目かな。こんな不吉な場所に来た日にやあ、俺もついてない。だがとにかく今おびえたつて仕方がない、もし死ぬのなら、堂々としてゐた方がいいだらうし』
「ええ司祭さん、父は落ち着かせやうとか気を楽にしやうとして、自分はとつくに眠つていたはづなのにと何度か思つたものの、生憎と風ががうがうと鳴つて戸外のどつしりした大枝をぎしぎし軋ませ、城の古い煙突をひうひう吹き鳴らしてゐたんです。それで、一陣の突風がびうびうと唸つて、崩れ落ちるのかと思ふくらゐに城の壁を震はせていつたあとのことでした。風がぴたりと止んで、七月の晩のやうにすつかり静かになつたんです。それが司祭さん、三分間唸つてゐた風が止んでからやうやく、マントルピースから何かの音が聞こえることに気づいたんです。さういふわけで父は生の一端に目を開いたのですが、老地主が絵から抜け出したのを見るには充分でした、それがどう見ても乗馬服からすり抜けるやうにしか見えないんですから。やがてマントルピースからすつかり出てきて、床に飛び降りました。それからそのペテン師は――父としては最悪の当番だと思ひましたが――よからぬことを始める前に、二人とも眠つてゐるのかどうか立ち止まつてしばらく耳を澄ましてゐました。大丈夫だと判断するとすぐさま手を伸ばしてヰスキイの壜をつかみ、少なくとも一パイントは飲んでゐました。それで司祭さん、自分で決めた分だけ飲むと、えらく利口なことにまつたく同じ場所に壜を戻したんです。それから部屋をあちこち歩き回り出したのですが、まつたくそんなことをしなかつたのかと思ふくらゐ素面でしつかりしてゐました。父のそばを通るたびに、強い硫黄の匂ひがしたやうな気がしたので、父はすつかり怖くなつてしまひました。畏れながら地獄で燃えてゐるのが硫黄だと知つてゐましたから。とにかくマーフィー神父からよく聞かされてゐたので、それがどういふものなのかも当然ながら知つてゐました――ずつと前に死んでゐたんです、神よ安らぎを。ですが司祭さん、幽霊が近づいてくるまでは落ち着いてゐられたんです。近くにくると、神よ我らに憐れみを、硫黄の匂ひで息もできないほどでした。父はたまらず咳込んで、座つてゐた椅子から飛び上がらんばかりでした。
『おいおい!』と地主が言つて、何歩か歩いてぴたりと止まると、父の方を向いて、『おまへさんぢやないか――調子はどうだね、テリー・ニール?』
『畏れながら』と父は(恐怖にせかされるやうに)言ひました、(なにせ生きてゐるといふより死んでゐましたから)。『今晩かうしてお会ひできてうれしく思ひます』。
『テレンス』と地主が言ひました、『おまへは立派な人間だ』(それは本当のことでした)、『勤勉で真面目な人間だし、教区中の酔ひ見本だ』。
『ありがたうございます』と、父は勇気を出して言ひました、『あなたは以前から丁寧な方でらつしやいました、あなた様に神の安らぎを』
『わしに安らぎを?』と、幽霊が(怒りで顔を赤く染めて)言ひました、『わしに安らぎを? なんて無学なやつだ、無駄にしみつたれたばかものが、礼儀をどこに流したんだ? わしが死んでゐるとしても、それはわしのせいではない。おまえのやうなやつから、ことあるごとに責められる覚えはない』と言つて、床を踏みならしたために、足許の床板が砕けさうなほどでした。
『ああ』と父が言ひました、『あたしは馬鹿で無学な男にすぎません』
『さうに違ひあるまい』と地主は言ひました。『だがそれより、わしが上がつてきたのは――つまり降りてきたのは――(たいした間違ひではありませんでしたが、父は気づいてゐました)、おまへのたはごとを聞くためでも、おまへのやうなやつと話すためでもない。よいか、テレンス・ニール。わしは主人としておまへの祖父パトリック・ニールによくしてやつた』
『その通りです』と父が言ひました。
『そのうへ、真面目で模範的な紳士だつた』と地主は言ひました。
『確かにその通りでございます』と父は言ひました(ものの、それは大嘘だつたんですが、どうにもできないぢやありませんか)。
『まあな』と幽霊は言ふと、『わしはたいていの人間と同じくらゐ真面目だつた――少なくともたいていの紳士くらゐには真面目だつたが、ある面では即席のキリスト教徒だつたし、貧乏人に慈悲深く冷淡だつた。結局のところ、わしが今ゐるところは楽ぢやないのだ、当然かうだらうと予想してゐたほどにはな』
『残念ですね。きつとマーフィー神父と言葉を交はしたいのではありませんか?』
『口を閉ぢていろ、この悪党めが。わしが考へてゐるのは自分の魂のことではない――自分の魂の面倒くらゐ見られる人間と、どうしてじつくり話ができないんだ? さういふ問題を解決したいときには』と腿を打ち、『さういふやつらのところに行くさ。わしの魂のことではない』と言つて、父の向かひに腰を下ろしました。『困つてゐるのは魂のことではなく――右足が痛いのだ。ブラック・バーニーを死なせた日にグレンヴァーロッシュでやつちまつたんだ』
「やがて父は気がつきました、地主を振り落とした愛馬が、谷に沿つて建てられた大きな柵を飛び越えてしまつたんでした。
『どうか、死なせたことを心を痛めていらつしやるのではありませんか?』と父は言ひました。
『口を閉ぢるんだ、馬鹿者めが。どうして右足が痛いのか教えてやらう。わしがいま過ごしてゐる場所では、時間を見つけてここにぶらりと遊びにくるのを除けば、これまで経験したこともないほど歩かなくてはならんのだ。しかもわしの限度を遙かに超えてゐる。これは言つておかねばならんが、わしがゐる場所の人間は冷たい水が異常に好きだ、それに勝るものなど手に入らないからな。そのうへ、気候は快適からはほど遠い暑さなのだ。水を運ぶのを手伝はされ、ひどくわづかしか分けてもらえんし、ひどく面倒でしんどい仕事だ。誰もがみな驚くほど喉が渇いてゐて、わしが大急ぎで運んだ端から飲んでしまふ。だがもつぱら何がわしを苦しめると言つて、足がよれよれなことだ。何度か引つ張つてしつかり固めてもらひたい。早い話がさういうことさ』
『どうかどうか』と父は言ひました(幽霊に触れるのはごめんでしたから)。『あなた様にそのやうなことをするのはやぶさかではありませんが、やるのはあたしのやうな貧乏人に過ぎませんです』
『おべつかなど要らん』と地主が言ひました。『ほらわしの足だ』と言つて父に足を差し出しました――『命がけで引つ張るんだ。さうしないと、あの世の力を使つて粉々にもせず体に骨も残さんぞ』
「父はそれを聞いて、いくら頼んでも無駄だと悟り、足をつかんで何度も何度も引つ張り続け、そのうち汗が、神よお恵みを、顔にしたたり始めました。
『ちやんと引つ張れ!』と地主が言ひました。
『仰せの通りに』と父は言ひました。
『もつと引つ張るんだ』と地主も言ひます。
「父は鬼のやうに引つ張りました。
『ちよつと飲まうか』地主がさう言つて壜に手を伸ばしました。『馬力をつけなきやなるまい』。さうしてしやつきりさせやうと思つたんですね。ところが気取つていたために、ここでアウトになつてしまいました。別の壜を取つてしまつたんです。『おまへの健康を祝して、テレンス。さあ鬼のやうに引つ張ぱるんだ』。さうして聖水の壜を持ち上げましたが、ほとんど口に入れないうちに金切り声をあげたので、部屋がそれで真つ二つにならうかといふほどでした。放り出された足が体からもげて父の手のなかに残されました。地主はテーブルから転げ落ち、はづみで父は部屋のなかごろまでふつ飛ばされて床に仰向けになりました。意識を取り戻したときには気持のいい朝日が雨戸の向かふで輝いてゐて、父は床にひつくり返つたまま、大きな古椅子から引つこ抜いた椅子の脚を手にして天井に掲げてゐたんです。ラリーは相変はらず眠りこけて大きないびきをかいてゐました。父はその日の朝マーフィー神父のところに行きました。その日から死ぬ日まで、父は告解もミサも怠りませんでした。父の話はめつたにしか話さなかつたことが信じられました。そして地主、つまり幽霊についてですが、酒が嫌ひになつたからなのか、足を失くしたからなのか、二度とさまよひ歩かなくなりました」
Joseph Sheridan Le Fanu"THE PURCELL PAPERS Vol.1" 'THE GHOST AND THE BONE SETTER'の全訳です。
Ver.1 03/02/03
Ver.2 03/09/04
Ver.3 10/07/06
[更新履歴]
・10/06/05 第三パラグラフまで。▼「supply with」という文法が理解できずに構文を取れていなかったため、「すなわち、埋葬されたばかりの死体には、しばらくの間、煉獄の燃えさかる渇きを癒すために、死者の眠る墓地に知人が真水を供える決まりがあるのだが、これは南アイルランドでは一般的なことだ。」というとんちんかんな訳文だったところを、→「すなわち、埋葬されたばかりの死者は、埋葬されて間もないあいだ、煉獄の燃えるような渇きを癒すための新鮮な水を、墓所の隣人たちに差し出さなくてはならない、という迷信がアイルランド南部には広く分布している。」に訂正。「墓所の隣人たち」というのは「ほかの死者たち」という意味です。▼この迷信を理解していなかったうえに長い文章構造を理解せずに単語レベルで和訳していた「死者の墓の優先権を確保したり、新参者の歩行権に課された税金を免れようとお互いが尽力したのだ。ことが起こってからいくらも経たぬうちに、一方の参列者が、亡き友への計り知れない利益が失われることを恐れて、近道をして墓地に進んだ。強い偏愛による違反行為によって、現に棺は教会にほったらかしで、残りの時間は門を抜けた入り口を作るのに費やされた。」の箇所を→「それぞれの死者の墓に対する優先権を確保することで、一番新しくやってきた死者に課される放浪権を免除させようと互いに尽力したのである。それから間もなく、参列者たちのどちらかが、亡き友に対するこうした特典が失われることを恐れて、墓所まで近道をしようとして、強い迷信をものともせず、実際に棺を塀越しに放り投げ、門を通ってなかに入る時間を無駄にしまいとした。」に訂正。
・10/06/19 パーセル本文〜ラリー眠る。▼何を思ったのか「narrator」を「客観的」などという日本語に置き換えていたので、「語り手」に訂正する。▼「well-spoken」というのは「雄弁」というより「話し上手」。▼「native parish」というのは「生まれ故郷の教区」ということだろうから、「地元の教区」でもいいけど「生まれ教区」とした。正確には何というのかわからない。▼ニール息子は訛っているうえに破格なのでものすごくわかりづらい。我ながらよくこんなの訳そうと思ったな――というか、まったく内容を理解できずに単語を適当に当てはめていたのが自分でもわかる。▼訛りの例、「iv, av, o'」「id」「counthry」「ould」「pervint」……。いろいろ考えた結果、歴史的仮名遣いで表記することにしました。「さうです」と書いて「ソーデス」と読むのではなく文字どおり「サウデス」と読むような感じで。▼「here wasn't the likes of him in the counthry round for nate labourin' an' baan diggin'」がわからないので「くにじゅうを見ても手際よく働く一生懸命な人はほかにいなかった。」と適当にごまかしていた。「baan」は原文イタリック体、つまりドイツ語で「道路」のことだと判明。「nate labourin'」はいまだに判らず。文脈から「力仕事」「土木仕事」とかそんななんだろうけど……? ひとまず「力仕事と
・10/07/06 〜最後まで。▼ごく当たり前の if 構文すらできてなかったので、「起きていようってことをちゃんとおぼえてたなら、きっと寝床から出てきたんだろうけどね、父はかんぜんに一人ぼっちになって、ますます不安になるばかり。」→「目を覚ましたとしたら寝床に向かふのは間違ひないから、さうなつたら父は完全に一人きりになつて、ますますひどいことになると思ひ出したんです。」に訂正。▼地主がテリー・ニールのところに来た理由。なぜか「right leg」を訳し落とし、、怪我ではなく自責の念で苦しんでいることになってしまっていたので、「『何が好みか知っているやつらのところに行くさ』って言いいましたね。『そんなことはどうでもいい』と言うと、父の向かい側に腰をおろした。『どうでもいいんだ、いらいらする――心配で死にそうなんだなんだよ』、『グレンヴァーロッシュでブラック・バーニーを殺した日に責めさいなまれるんだ』」→「『さういふやつらのところに行くさ。わしの魂のことではない』と言つて、父の向かひに腰を下ろしました。『困つてゐるのは魂のことではなく――右足が痛いのだ。ブラック・バーニーを死なせた日にグレンヴァーロッシュでやつちまつたんだ』」に訂正。その先の段落でも「my leg」が訳文から抜け落ちてどこかに行ってしまっていたので訂正。