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翻訳:東 照
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プロジェクト杉田玄白 正式参加テキスト

シルヴィーとブルーノ完結編

ルイス・キャロル


第七章
ミステル

 そこでぼくは一人寂しく道を歩いた。ホールに着くと、ミュリエル嬢が庭木戸のところでぼくを待っているのが見えた。

お祝いの言葉を贈る必要も幸せを祈る必要もありませんね?」とぼくは切り出した。

何にもいりません!」子どものように嬉しそうな笑顔だった。「贈り物というのは持っていない人に贈るものですし、祈りというのはまだ訪れていないもののために祈るものですもの。私には何もかもここにあるんです! 何もかも私は持っているんです! ところで」と急に話をやめ、「そもそも天が地上に開けるのは、誰かのためだとお思いですか?」

「そうですね、たぶん、純真で無邪気な人たちのためでしょう。『天の国は、このような子どもたちのものである[*註1]』と言いますからね」

 ミュリエル嬢は手を握りしめ、曇り空を見上げた。シルヴィーがそういう目つきをしているのをぼくは何度も見ていた。「天が開けたのはのためだったと錯覚しそうなほどなんです」ささやくような声だった。「まるで幸せな子どもたちの一人になったようでした。人から引きとめられそうになったのを、あの方が自分のところに来させた子どもたちのことです。そうなんです、あの方は人ごみのなかから私を見つけました。私の目に宿る焦がれるような気持ちを読み取りました。私をおそばに手招いたんです。ほかの人たちは私のために道を開けなくてはなりませんでした。あの方は私を腕に抱き上げ、手を置いて、祝福してくださったんです!」話を終えたミュリエル嬢は、得も言われぬ幸せのあまり息を弾ませていた。

「そうですね。あの方がそうしてくださったんだと思いますよ!」

「ぜひともお父さまとお話しになってください」とミュリエル嬢に言われたとき、ぼくらは門の前に並んで立ったまま、日陰になった小径を見下ろしていた。ところが、ミュリエル嬢がその言葉を口にした瞬間、ぼくは〈あやかし〉い感覚に洪水のように襲われていた。懐かしい教授が近づいてくるのが見えたのだが、なんと奇妙なことに、ミュリエル嬢にも教授が見えているのがわかった!

 何が起こったのだろう? 妖精世界が現実世界と融合してしまったのだろうか? それともミュリエル嬢にも〈あやかし〉が訪れ、ぼくとともにこうして妖精世界に入ることができたのだろうか? ぼくの唇に(「小径に友人がいます。まだお知り合いでなければ紹介させてください」)という言葉が出かかったとき、とりわけ奇妙なことが起こった。ミュリエル嬢がこう言ったのだ。

「小径に友人がいます。まだお知り合いでなければ、紹介させてもらえますか?」

 どうやら夢から覚めたらしい。「らしい」というのは、〈あやかし〉感がまだ強く残っていて、その人物の見かけが万華鏡のように絶えず変化しているように見えたからだ。今は教授だ、また今は別人だ! 門にやってきたときには、完全に別人だった。ということは紹介するのに相応しいのはぼくではなくミュリエル嬢だろう。ミュリエル嬢は愛想よく挨拶して門を開け、その雰囲気ある老人――見るからにドイツ人――を招き入れた。その老人も夢から覚めたばかりのように、ぼんやりした目で周りを見た!

 そうだ、教授ではないに決まっている! このあいだ会ったときからこれほど豊かな顎髭が伸びるわけがない。それに教授ならぼくに気づいたはずだ。ぼくはあれからたいして変わっていないのは確実なのだから。

 現実には老人はぼくにそれとなく目を向けただけで、「ミステル[*2]をご紹介します」というミュリエル嬢の言葉に合わせて帽子を脱いだ。言葉には強いドイツ訛りがあった。「お近づきになれて光栄です!」以前に会ったことがあると思わせるようなそぶりはこれっぽっちもない。

 おなじみの木陰に案内されると、そこにはすでにお茶の用意ができていた。ミュリエル嬢が伯爵を呼びに行き、ぼくらは安楽椅子に腰をおろした。すると「ミステル」はミュリエル嬢の作品を手に取り、大きな眼鏡越しにじっくりと観察し出した(この眼鏡がまた小憎らしいほどに教授を連想させる要素なのである)。「ハンカチの縁取りとは?」と考え込むように言った。「そうすると英国のご婦人はこうしたものに心夢中なのかね?」

「ひとつの才能ですよ」ぼくは言った。「そういうことに関しては、男が女に勝てた試しはありませんね!」

 ミュリエル嬢が父親と一緒に戻ってきた。伯爵と「ミステル」が気さくに言葉を交わし、ぼくらが大事な「肉体的恩恵」を補給し終わったところで、老人がふたたびハンカチの話を持ち出した。

「幸運の財布のことを聞いたことがありますかな、お嬢さん? ほう、そうですか! きっと驚かれるでしょうな、この小ッコヒ三枚のハンカチで幸運の財布を作れるのですぞ。ちょちょいのちょいです」

「やってみようかしら」ミュリエル嬢は乗り気を見せ、膝にハンカチを重ねて針に糸を通した。「どうか作り方を教えて、ミステル! お茶をおかわりする前に一つ作ってみますから!」

「まずはですな」[*3]ミステルは二枚のハンカチを手に取り一枚ずつ重ね、角を二か所をつかんで持ち上げた。「まずはこんなふうに上側の角を二か所、留めてくだされ。右と右、左と左を。するとそのあいだが財布のになります」

 針を何度か動かすだけでこの指示は済んだ。「これで残りの三辺を縫ったら、バッグのできあがりですか?」ミュリエル嬢があてずっぽうを言った。

「違いますな。下側の縁をまず綴じ合わせて――ああ、そうではありません!」(と言ったときにはもうミュリエル嬢は縫い始めていた)。「一枚を裏返し、右下の角をもう一枚の左下の角に重ねて、あべこべとでも言うんですかな、そんなふうにして下側の縁を縫い合わせてくだされ」

「了解!」ミュリエル嬢はてきぱきと指示を実行した。「ずいぶんとよじれた不格好で怪しげなバッグができそうね! でも教訓は素晴らしいわ。無限の富を手に入れるには、あべこべに行動するほかない! どうやって縫えばいいのかしら、こんなおかしな口ばかりある財布――違った、おかしな口一つ?」(こんがらかったようにくるくるとねじれていたのだ)。「確かに口は一つだわ。一瞬二つあるかと思ったんだけど」

「『謎の紙の輪』をご存じで?」ミステルは伯爵に話しかけていた。「細長い紙切れはありますかな? 一回ねじってから両端をつなげるのです。一端表側ともう片端裏側をつなげるわけですな」

「つい昨日、出来上がったのを一つ見ましたよ」伯爵が答えた。「おまえがお茶に呼んだ子どもたちに作ってやっていなかったかね、ミュリエル?」

「ああ、あの『謎』ね」ミュリエル嬢が言った。「あの輪には表面が一つしかないし、端が一つしかないんです。不思議でしょう!」

「このバッグも似たようなものなんじゃないかな?」ぼくはそれとなく言ってみた。「外側が内側とつながっていませんか?」

「ほんとだわ!」ミュリエル嬢が声をあげた。「でもこれではバッグじゃありませんよ。どうやってこの口をふさぐんですか、ミステル?」

「さよう!」老人は力強く答えるとバッグを受け取り、興奮して立ち上がって説明を始めた。「この財布の口はハンカチの四つの縁から成っております、口がぐるりと一回りしてつながっているのをご確認くだされ。一枚目のハンカチの右端を降りて、もう一枚の左端を登り、一枚目の左端を降りて、もう一枚の右端を登っておるでしょう!」

「仰る通りですね!」ミュリエル嬢は眉間にしわを寄せてもごもごとつぶやき、頬杖をついて老人をまじまじと見つめていた。「それに口が一つしかないのが証明されちゃった!」

ミステル

 不思議なことにミュリエル嬢が難しい勉強に頭をひねる子どものように見えたし、いつの間にかミステルも不思議なことに教授のようになっていたので、ぼくはすっかりまごついてしまった。〈あやかし〉感にどっぷりと押し寄せられて、ぼくはこう言いたくて仕方なかった。「わかるかい、シルヴィー?」。だが何とかこらえて、その夢の(本当に夢だとしたらの話だが)消えるにまかせた。

「さて、この第三のハンカチにも」ミステルは話を続けた。「縁は四つあって、それが途切れることなく一周りしておるのを確認いただけましょうな。すべきことはこの四つの縁を財布の口の四つの縁と縫い合わせることです。それで財布は完成し、外側が――」

「わかりました!」ミュリエル嬢が勢いよくさえぎった。「外側内側とつながるんですね! でも時間がかかりそうだから、縫うのはお茶のあとにしますね」バッグを脇に置き、ふたたびティーカップを手にした。「だけどどうして幸運の財布と呼ばれているんですか?」

 老人がにっこりと微笑みかけると、それまで以上に教授に生き写しだった。「わかりませんかな、お嬢ちゃん――お嬢さんというべきでしたか? その財布の内側はどこも外側であり、外側はどこも内側なのですぞ。ということは世界中の富がこの小ッコヒ財布の中に入るのです!」

 生徒は手を叩いて惜しみない喜びを送った。「第三のハンカチも必ず縫うことにします――いつかきっと。でも今はそうやってお時間を取らせるわけにはいきませんから。もっと不思議なことを聞かせてください!」その顔も声もどう見てもシルヴィーを思わるので、ぼくは半ば期待を込めて辺りを見回さずにはいられなかった。ブルーノも見えやしないだろうか、と!

 ミステルは思案顔で、ティーカップの縁でスプーンのバランスを取りながら、このお願いについてじっくりと考え込んでいた。「何か不思議なこと――幸運の財布のような? それがあれば――完成したあかつきには――夢に見た以上の財産が手に入る。だが時間は手に入らない!」

 引き続いた沈黙を――ミュリエル嬢は、お茶のお代わりを注ぐというきわめて現実的な目的に利用した。

「あなたのお国では」ミステルが出し抜けにしゃべり出した。「無駄にした時間はどうなるのですかな?」

 ミュリエル嬢は真剣な面持ちで、独り言つように答えた。「どうにもなりはしないでしょう? 子どもだって知ってるわ、過ぎてしまって――取り戻すことができないことくらい!」

「はて、わしの――つまりわしが訪れたとある国では、蓄えておりましたな。何年かあとになってから、非常に重宝しておるのです! 例えばの話、長々と退屈な夜があったとします。話相手もいない、やるべきこともない、そのくせ寝るのには早すぎる。あなたならどうしますかな?」

ずいぶんとむしゃくしゃして、部屋じゅう投げちらかしたくなるわ!」ミュリエル嬢はすっきりと答えた。

「わしの――わしの訪れたその国では、そんなことはしませんぞ。ちょちょいのちょいと――説明することは叶わんのですが――無駄な時間を蓄えておくのです。また別の機会に時間が余分に必要な事態にでもなれば、また時間を下ろすわけです」

 伯爵は疑わしげな笑みをかすかに浮かべて聞いていた。「どうしてそのやり方を説明できぬのです?」

 ミステルは反駁の余地のない理由を用意していた。「あなたがたの言語には、必要な概念を伝える単語がないのですわ。だからと言ってウホン――ウホン――語で説明したところで――あなたがたには理解できんだろうて!」

「それはそうね!」ミュリエル嬢は未知の言語の名前をそつなく避けた。「そんなの習ったことありませんもの――最低限すらすらとしゃべれるほどには。お願い、もっと不思議なことを聞かせてくださらない?」

「その国の鉄道は動力装置なしで走っております――停止用装置のほかは何にもいらぬのです。これは存分に不思議かな?」

「でもどこから動力を取っているんですか?」ぼくは疑問を口にせ…ざるを得なかった。

 ミステルは素早く振り返って、口を挟んだぼくを見た。そうして眼鏡をはずしてごしごし拭いてから、明らかに困り切った様子でもう一度ぼくを見た。考えているのだ――ぼくと同じように――間違いなく以前に会ったことがあるのではないかと。

重力を用いております。あなたのお国でも周知の力でしたな?」

「しかしそれには下り坂の線路でなくてはならんでしょう」伯爵が言った。「すべての線路を下り坂にするのは不可能な相談なのでは?」

すべてですぞ」ミステルが答えた。

どちらの端から見ても下り坂なのではないでしょう?」

どちら側から見てもです」

「これは参った!」伯爵が言った。

「どうなっているのか説明していただけますか?」ミュリエル嬢がたずねた。「あの言葉、私がすらすらとは話せない言葉を使わずに、ですけれど?」

「おやすいご用で」ミステルが言った。「どの線路も完全に真っ直ぐなトンネルのなかにありましてな。であるからして当然のごとく、トンネルの真ん中は両端よりも地球の中心に近いということになります。それゆえどの汽車も片道を下り坂で走る、したがって残り半分の上り坂を走る勢いもつくわけです」

「ありがとうございます。すっかり理解できました」ミュリエル嬢が答えた。「でもトンネルの真ん中では、ぞっとするようなスピードなんでしょうね!」

 ミュリエル嬢の飲み込みのよさに、どうやらミステルの知的関心が存分に満たされたようだ。見る見るうちにさらに饒舌でさらに流暢になったように思える。「馬の御し方をお知りになりたくはありませんかな?」ミステルはにこにこしながらたずねた。「われわれにとって、暴走した馬など問題ではありませんぞ!」

 ミュリエル嬢がかすかに身震いした。「私たちのところでは、それはすごく危険なことなんです」

「それは馬車が馬の後ろにあるからで。馬が走る。馬車がついてゆく。あなたの馬が暴れたとします。誰に止められましょうか? どんどん速度が上がる一方です! ついには横転は避けられますまい!」

「でもあなたのところの馬も暴れようとするんじゃありませんか?」

「心配ご無用! われわれには関係ありません。わしらのところでは馬は馬車の真ん中に繋いでおります。車輪二つは馬の前に、二つは後ろに来るように。屋根には太い綱の端が繋がれておりましてな。これは馬の胴体の下を通って、反対端は小ッコヒ――確か「巻き上げ機」でしたかな、それに繋がれております。馬が暴れる。暴走する。時速十マイルのスピードですわ! 巻き上げ機を回して、五巻き、六巻き、七巻き、すると――ほいッ! 馬が宙に浮かぶ! こうして馬は喜び勇んで宙を駆けとりますが、馬車は相変わらず地上のままですわ。われわれは馬の周りに座って見張っとりまして、馬が疲れたら降ろしてやるわけです。ふたたび地面に足が触れたときには、馬のやつは喜びますよ、そりゃもう大喜びですぞ!」

「素晴らしい!」耳を傾けていた伯爵が声をあげた。「あなたがたの馬車にはほかにも変わったところがあるのですか?」

「場合によっては、車輪にも。あなたがたは健康のために海に行きますわな。ばたついたり、泳いだり、ときどき溺れたり。われわれはそういったことをすべて陸でやりますぞ。ばたつく、泳ぐ、そこまでは同じです。だが溺れることはありません! 水がないのですから!」

「それで、どういった車輪なんでしょうか?」

楕円形をしております。ですから馬車はがたぼこ浮き沈みいたすわけです」

「なるほど、それに埃がばたつきますね。だがどのようにして泳ぐんです?」

「車輪がちぐはぐなのですな。片側の車輪の長径が、反対側の車輪の短径に合わせてあるのです。ですからまず馬車の片側が上がり、それから反対側が持ち上がって、車体が横に泳ぐわけですな。そのあいだも埃はばたついております。われわれの船馬車を操るには、優れた船員でなくてはなりませんぞ!」

「それはそうでしょうな」伯爵が言った。

 ミステルが立ち上がった。時計を確かめると、「もうそろそろおいとませ…ねばなりません」と言った。「別の約束がありましてな」

「余分な時間を貯めておけばよかったわ!」握手を交しながらミュリエル嬢が言った。「そしたらもうちょっと引き留めておけるのに!」

そうであれば喜んで留まりましょうに」ミステルが答えた。「だが実際のところは――お別れせ…ねば!」

「どこで知り合ったんですか?」ミステルが立ち去ったあとで、ぼくはミュリエル嬢にたずねた。「それにあの人はどこに住んでるんです? 本当の名前は?」

「あの人に――初めて――会ったのは――」考え込んでいる。「おかしいですね、思い出せません! それにどこに住んでいるのかわからないし! 名前も聞いたことがないわ! 不思議ね。謎の存在だってことに初めて気づきました!」

「また会えるといいな」ぼくは言った。「ずいぶんと面白い人だ」

「二週間後のお別れ会にいらっしゃるはずですよ」伯爵が言った。「もちろんあなたも来てくれるでしょうね? ミュリエルがもう一度友人を勢ぞろいさせたがってるんですよ、ここを発つ前に」

 と言ってぼくに説明してくれた――ぼくらを残していなくなっていたミュリエル嬢の代わりに――リンドン少佐との婚約解消にまつわるつらい思い出のあるこの地から、娘を連れ出したいので、ひと月後のこの日に結婚式を挙げるべく準備をしてきたのだという。式のあとでアーサーと妻は海外旅行に出かける予定になっていた。

「再来週の火曜ですからね!」伯爵が別れ際に握手して念を押した。「あの可愛い子どもたちも連れてきてくれるでしょうね、夏に連れてきた子どもたちです。ミステルの謎と言ってたな! あの子らにまつわる謎に比べれば何でもありませんよ! あの素晴らしい花を忘れられますか!」[*4]

「できたら連れてきますよ」ぼくはそう言ったが、どうやって約束を果たせばいいのか、宿に戻る道々ずっと考えていた。ぼくの手に余る問題だ!


Lewis Carroll"Sylvie and Bruno Concluded" CHAPTER VII 'Mein Herr' の全訳です。

Ver.1 03/05/11
Ver.2 03/05/20
Ver.3 03/10/08
Ver.4 11/01/31


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[註釈]
*註1 [天の国は……]。マタイ福音書・第19章第14節より。次のミュリエル嬢の台詞も同じく第19章第13節〜第15節に基づく。

(13)そのとき、イエスに手をおいて祈っていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。/(14)するとイエスは言われた、「幼な子らをそのままにしておきなさい。わたしのところに来るのをとめてはならない。天国はこのような者の国である」。/(15)そして手を彼らの上においてから、そこを去って行かれた。(口語訳より)[
 

*註2 [ミステル]。原文「Mein Herr」。ドイツ語。直訳すると「My Mr/My Sir」、発音は「マイン・ヘア」。1.ドイツ語っぽい響きで、2.意味も言語に近い訳語を――と考え、邦訳では「ミステル」としました。「Mister」のインチキドイツ語読みです(『トンデモ本の世界』に引用されている矢追氏の文章より借用)。

 ※2011/08/06追記。2011年8月4日付けのプヒプヒ日記によると、ドイツ人も「ミステル」という呼び方を使うことがあるようです。[
 

*註3 [まずはですな]。以下、「幸福の財布」の作り方が説明されいます。文章だとわかりづらいのですが、要するにハンカチ二枚分の長方形で作った「メビウスの輪」です。下の挿し絵にあるような、三角巾ふうの袋が出来上がります。[

*註4 [あの素晴らしい花を]。正編第二十章。植物学が趣味の伯爵は、ブルーノが〈幻核〉で作った花に大興奮。しかし〈幻核〉はあわれ一晩で消えてしまうのでした。[

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