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翻訳:東 照
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ジョゼフ・バルサモ

アレクサンドル・デュマ

訳者あとがき・更新履歴
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第百三十九章 リシュリュー氏の駄洒落

 既に見て来た通り、リシュリュー公爵はリュシエンヌに向かっていた。その決断の素早さと智性の冴えは、まことウィーン大使にしてマオンの勝者に相応しいものだった。

 晴れやかな様子で到着すると、若者のように石段を上り、仲睦まじかった日々のようにザモールの耳を引っ張ると、あの青繻子の閨房に乗り込んだ。サン゠クロード街に向かう準備をしていたデュバリー夫人を、ロレンツァが千里眼で見通したあの部屋である。

 伯爵夫人は長椅子に横たわってデギヨン氏に朝から指示を出しているところだった。

 物音に驚いて振り向いた二人は、元帥を目にして呆気に取られていた。

「まあ公爵閣下!」伯爵夫人が声をあげた。

「伯父上!」デギヨンも声を出した。

「さよう、わしです、伯爵夫人。無論わしじゃよ、甥っ子殿」

「あなたでしたか」

「まさしくわしです」

「遅くともせざるよりまし、ね」

「歳を取ると気まぐれになるものです」

「リュシエンヌにまた引き戻されて来たと言いたいのかしら……」

「気まぐれ故に遠ざかりましたが大いなる愛の力に引き寄せられて。まさしくそういうことです。見事にわしの考えをまとめてくれましたな」

「それで戻っていらしたと……」

「それで戻って来たというわけです」リシュリューは一番いい椅子を一目で見抜いて腰を下ろした。

「そうかしら。まだ仰っていないことがあるんじゃなくて? 気まぐれだなんて……あなたらしくもない」

「そういじめなさるな。わしは評判よりはいい男ですぞ。戻って来たのは……」

「来たのは……?」

「嘘偽りなき本心からです」

 デギヨンと伯爵夫人がどっと笑い出した。

「自分が冗談のわかる人間でよかったわ。あなたの冗談を聞いて笑えるんですもの」

「冗談ですと?」

「それはそうよ。馬鹿な人間なら冗談がわからずに啞然としたまま、お戻りになった理由をあれこれ憶測し始めるに違いないもの。あなた以外の誰が好きなように舞台に上がったり下がったり出来て? あたくしが言うんだから間違いないわ。あのモレだってあなたと比べたら大根役者もいいところ」

「すると、わしが衷心より戻ったとはお信じにならないのですな? 伯爵夫人、それはいけません。こちらも考えを改めざるを得ませんぞ。こら、笑うでない、甥っ子よ。ペトロと呼んだうえで、何も建ててやらんぞ」

「ちょっとした内閣さえも?」

 伯爵夫人はそうたずねてから再び弾けるような笑い声をあげた。隠そうともしない天真爛漫さが溢れていた。

つなり蹴るなり好きにして下され」リシュリューは伯爵夫人の反応を受け流した。「やり返したりはしませんぞ。もう歳を取り過ぎた。防御も覚束んのです。ひと思いになさるがいい、今なら苦もなく満足が得られるのですぞ」

「額面通りに受け取ってはなりませんよ」とデギヨンが言った。「伯父上がさらなる衰えを嘆こうとも、負けるのはこっちです。ねえ公爵殿、殴るつもりはありませんよ。衰えたにしろ、そう言い張っているにしろ、利子をつけて返しに来るのは目に見えてますからね。殴るもんですか。真実ははっきりしています。あなたが戻っていらしてみんな喜んでますよ」

「そうそう」伯爵夫人も夢中で口を挟んだ。「あなたの帰還を祝って、みんな爆竹や花火を鳴らしてるわ。とっくにご存じでしょうけれど……」

「何も存じませんな」元帥は子供のように無邪気に答えた。

「そうかしら。花火でお祝いされると、火の粉で鬘が焦げたり、打上花火の串で帽子が破れたりするものよ」

 公爵は鬘に手を伸ばし、帽子を見つめた。

「そらご覧なさい。何にしても戻って来てくれたのはありがたいわ。デギヨンさんが仰ったように、嬉しくて仕方がないの。どうしてだと思います?」

「いやはや、もう意地悪はご勘弁を」

「いいわ、これが最後」

「では謹んでお聴きいたしましょう」

「どうして嬉しいのかというと、あなたが戻って来たのは晴天の報せだからよ」

 リシュリューはぺこりと頭を下げた。

「そうなの。あなたと来たら嵐の終わりを告げる叙事詩の鳥と一緒。あの鳥は何と言ったかしら、デギヨンさんは確か詩をお書きになるのよね?」

「アルキュオネです」[*1]

「それだわ! 素敵な名前の鳥に喩えたからと言ってお怒りにならないでね、元帥殿」

「それどころか――」とリシュリューはにやりと笑った。それは満足している印であり、満足しているということは何か企んでいる印であった。「それどころか、譬えが適切であるだけに腹は立ちませんな」

「そうなの?」

「と言いますのも、素晴らしい吉報を携えておりますので」

「まあ!」

「いったいどのような?」デギヨンもたずねた。

「デギヨンさんたら、せっかちね。元帥にも準備する時間くらい差し上げて」

「何の。準備などせずともすぐにお話し出来ますぞ。出来合の情報と言いますか、むしろもう古い情報ですからな」

「そんな。ぽんこつ情報を教えていただいても……」

「ご随意に。取るか取らぬかです」

「いいわ、いただきましょう」

「どうやら国王は罠に嵌ったようですな」

「罠ですって?」

「まさしくその通り」

「どんな罠ですの?」

「あなたが掛けた罠です」

「あたくしが国王に罠を仕掛けたと仰いますの?」

「はてはて! よくご存じでしょうに」

「まさか。誓って存じませんわ」

「おや、誤魔化すとはお人が悪い」

「本当に存じませんの。どうか説明して下さいな」

「お願いします、伯父上」とデギヨンも言った。元帥が曖昧な笑みを浮かべているのを見て、何か企んでいることに気づいていたのだ。「伯爵夫人が待ちかねて、不安を感じていらっしゃるじゃありませんか」

 老公爵が振り返って甥を見た。

「うっかりしておったわ! 伯爵夫人がお前に打ち明けぬわけはないからのう。しかしそうなると、思っていた以上に根深いようだな」

「私ですか?」

「デギヨンさんが?」

「さよう、お前が、デギヨンが、じゃ。いいですか、伯爵夫人、率直に言って、陛下に対するあなたの陰謀の多くには……こやつが大きな役割を担っているのではありませんか?」

 デュバリー夫人が真っ赤になった。まだ朝が早く、頬紅もつけぼくろもしていなかったので、真っ赤になることもあり得たのだ。

 だが赤くなるのは危険な徴候でもあった。

「二人とも驚いた目をしているところをみると、この件について詳しい話をした方がよいですかな?」

「話して下さい」デギヨン公爵と伯爵夫人が口を揃えて答えた。

「さよう、賢明なる国王はすっかり見抜いて、恐怖を覚えたことでしょうな」

「何を見抜いていると仰いますの? あなたと来たら人を焦らすのがお上手ね」

「しかしどうしたってここにいる甥っ子と示し合わせているように見えますからな……」

 青ざめたデギヨンが伯爵夫人に向かって、「ご覧なさい、思っていた通りの嫌味っぷりですよ」と言いたげに目配せした。

 こうした場合には女の方が男よりも度胸が据わっている。伯爵夫人は直ちに臨戦態勢に入った。

「あなたにスフィンクス役となって謎々を出されるのは御免蒙りたいわね。きっと遅かれ早かれ食われちゃうに違いないもの。どうか怖がらせないで。冗談だというのなら、生憎だけど悪い冗談だと云わせてもらいます」

「悪い冗談どころか、最高の冗談ですぞ。無論わしではなくあなたにとって、です」

「ちっともそうは思わないんですけど」デュバリー夫人は口唇を咬んだ。小さな足をぴょこぴょこ動かして、見るからに焦れている。

「まあまあ。プライドは捨てて下され。国王がド・タヴェルネ嬢に惹かれているのではないかと心配なのでしょう。いやいや、何も仰いますな。わしならすべてお見通しです」

「ええその通りです。何一つ隠し立ていたしませんわ」

「それを不安に感じたからこそ、陛下の心をちくりと刺して気を引こうと考えたのでしょう?」

「否定はいたしません。それで?」

「そこですよ、伯爵夫人。ところが、突き刺すには陛下の皮膚はちと硬い。かなり鋭いエギヨンではないと……おや失礼! つい嫌味な駄洒落を申してしまいました。どうかご理解を」

 そう言って元帥はけたたましく笑った。少なくとも表向きは笑っているように見せていた。高笑いに引き攣っているようなふりをして、不安そうな二人の顔をよく確かめたかったのだ。

「駄洒落とは?」最初に我に返ったデギヨンが無邪気を装ってたずねた。

「わからんかったというのか? それならそれで、非道い駄洒落だからその方がいい。要するにだ、国王にやきもちを焼かせたいと考えた伯爵夫人が、それを実現させるために、自然の賜物と言うべき顔と頭のいい名門貴族を選んだ、と言いたかったまでのこと」

「誰がそんなことを?」と怒る伯爵夫人の様は、後ろめたい権力者そのものだった。

「誰が?……みんなそう言っておりますよ」

「みんな言ってるなんていうのは誰も言っていないのと同じじゃありませんか」

「「何の。みんなと言えば、ヴェルサイユだけで十万人。パリなら六十万。フランスなら二千五百万ですぞ! これでも、パリと同じくらい噂が飛び交うデン・ハーグ、ハンブルク、ロッテルダム、ロンドン、ベルリンは数には入れておりませんからな」

「ヴェルサイユ、パリ、フランス、デン・ハーグ、ハンブルク、ロッテルダム、ロンドン、ベルリンで話題になっていると……?」

「さよう、あなたはヨーロッパでもっとも機智に富み、もっともお美しい女性だと評判です。愛人を作ったように見せかけるという今回の独創的な企みのおかげで……」

「愛人ですって! いったいどんな根拠があって、そんな馬鹿な非難をされなくてはいけませんの?」

「非難と仰いますかな? 讃嘆ですよ、伯爵夫人! ただの噂に過ぎないのは承知のうえで、この企みに讃嘆しているのですよ。根拠と仰いますか? あなたの機知に富んだ采配と巧妙な戦術に対して、讃嘆し、熱狂しているのです。鮮やかな手並みでほかに人はいないと思わせたあの夜のことを、讃嘆しているのです。お部屋にわしがいて、国王がいて、デギヨンがいた夜。わしが最初に部屋を出て、次に国王が、三番目にデギヨンが出て来た夜のことです……」

「続けて頂戴」

「まるで愛人であるかのように、人がいない状態でデギヨンと過ごしたように見せかけた手際。朝になってから、これまた愛人のように、リュシエンヌから密かに立ち去らせたように見せかけた手際。わしのような馬鹿や間抜けがそれを見て言いふらすのを見越した遣り口。その結果、国王がそれを知って不安になり、あなたを失うまいとして大慌てでタヴェルネの嬢ちゃんの許を去るだろうという計画。そういったことを根拠に、讃嘆しておるのです」

 デュバリー夫人もデギヨンも落ち着いてはいられなくなった。

 リシュリューはそんな二人を見るでもなく煽るでもなく、それどころか嗅ぎ煙草と胸飾りばかり気にしているように見えた。

「結局のところ」と言ってリシュリュー元帥は胸飾りを指ではじいた。「確かに国王はお嬢ちゃんの許を去ったようですな」

「あなたの想像はちっとも理解できませんわ。一つだけ確かなのは、国王はそんなことを聞かされてもあたくし以上に理解できないんじゃないかしら」

「そうですかな?」

「ええ、そうですとも。あなたも世間も、あたくしのことを随分と想像力のある女だと思っているみたいですけれど、仰ったような方法で陛下の嫉妬心をつつこうなんて思ったこともありません」

「仰いますなあ!」

「誓いますとも」

「お見事。完璧な外交術です。外交にかけては女には敵いませんな。完璧な外交戦術が不発に終わったとしても、それを絶対に認めぬのが完璧な外交というものです。政治の世界にはこんな格言がありましてな。大使だったわしには身に染みております。『成功の秘訣を他人に教えてはならない。そうすれば二度目の成功を手に入れられる』」

「ですけど公爵……」

「その秘訣のおかげでまた成功しましたな。国王はタヴェルネ家と仲違いなさいました」

「ですけど公爵、実際あなたの推測って自己流のところがあるじゃありませんか」

「というと、国王とタヴェルネの間の不和をお信じにならないのですか?」リシュリューは上手く議論を避けた。

「そっちのことじゃありません」

 リシュリューは伯爵夫人より優位に立とうと考えた。

「あなたはまるで鳥ですな」

「だったらあなたは蛇ね」

「それは結構。次からは、こうしてお褒めの言葉をいただくために、吉報を急いで運んでもらえるとよいですな」

「伯父上、お待ち下さい」デギヨンが慌てて割って入った。リシュリューの策略が何処まで及ぶか気づいたのだ。「伯爵夫人ほどあなたを評価なさっている方はいらっしゃいません。あなたの話が出るたびいつもそう仰ってますよ」

「要はわしが友人を大事にしているというだけのこと。だからこそ、あなたが勝利を収めたという報せを真っ先に伝えたかったのです。タヴェルネ男爵が娘を国王に売り込もうとしていたのはご存じでしたか?」

「もう売ってしまったのではなくて?」

「伯爵夫人、あやつほど狡賢い奴はおりません! あれこそ蛇です。このわしが、友情だとか戦友だとかいうたわごとに丸め込まれておったのですからな。まんまとわしの心を捕えおって。あの田舎版アリスティデスがジャン・デュバリーという才人を出し抜こうとわざわざパリに出向くなどとは思わんではありませんか? あなたのために全力を傾けなくてはならなかったおかげで、ささやかな良識や洞察力を取り戻すことが出来たのです。悲しいかな、わしは盲目でした……」

「つまりあなたに言わせれば、すべて済んだと?」

「すべて済んだことは請け合います。あの唐変木にはきつく言っておきましたから、今ごろは甘んじて受け入れていることでしょう。そうなればこっちのものです」

「国王はどうなるの?」

「国王ですか?」

「ええ」

「陛下からは三つのことを聞き出しました」

「一つは?」

「父親について」

「二つ目は?」

「娘について」

「三つ目は?」

「息子について……まず、陛下は父親のことを、その……おべっか使い呼ばわりし、娘のことは高慢ちきだと。息子のことには一切触れず、覚えてさえいらっしゃいませんでした」

「よかった。じゃああの一家のことはすっかり片づいたのね」

「そう思います」

「田舎にお帰りいただくのは難しいかしら?」

「そうは思いません。金に困っているようですから」

「確か陛下は息子さんに聯隊の言質を与えているとか……?」

「国王よりもよほど優れた記憶力をお持ちではありませんか。フィリップ殿があなたに魅力的な流し目を送っていた美青年であることは間違いありませんからな。もはや聯隊長でも中隊長でも寵姫の兄弟でもありませんが、あなたに覚えていただいてはいたというわけですか」

 こんな台詞を言って老公爵は甥の心を嫉妬の爪で引っ掻こうと試みた。

 だが差し当たってデギヨンの心を占めていたのは嫉妬ではなかった。

 デギヨンはどうにかして老元帥の狙いを読み取り、戻って来た真の理由を探ろうとしていたのだ。

 しばらく考えてみたが、或いは寵愛の風向きが変わってリシュリューをリュシエンヌに押し戻しただけなのかもしれない。

 デギヨンがデュバリー夫人に合図を送ったのを、鬘を直していた老公爵は暖炉の鏡越しに気づいたが、見ると夫人はすぐにリシュリューをチョコレートに誘った。

 デギヨンが伯父に恭しくいとまを告げると、リシュリューも挨拶を返した。

 伯爵夫人と二人残されたリシュリューの前に、ザモールがチョコレートを載せた円卓を運んで来た。

 老元帥は伯爵夫人の手際を目の当たりにして内心で独白していた。

 ――二十年前なら、時計を確かめて「一時間後には大臣になるぞ」と呟き、実際その通りになっていただろうに。人生とは何と愚かなものか。前半では心の赴くままに肉体を行使しておいて、後半には心だけは長生きするものの肉体に縛られて何も出来ぬ。馬鹿げたことだ。

「ねえ、元帥」伯爵夫人がリシュリューの物思いを破った。「もう仲直りしたんですし、二人しかいないんですから、どうしてこれほど苦労してあの小娘ちゃんを国王の寝床に潜り込ませたのか教えていただけないかしら?」

「実はですな」リシュリューがチョコレートの器に口をつけた。「わしもそれが知りたいのです。わしにもとんとわかりません」


Alexandre Dumas『Joseph Balsamo』Chapitre CXXXIX「Les jeux de mots de M. de Richelieu」の全訳です。初出は『La Presse』紙、1847年12月10日(連載第137回)の後半部。


Ver.1 12/02/25
Ver.2 25/12/13

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[註釈・メモなど]

・メモ
・François-René Molé (1734-1802)は、フランスの俳優。コメディ・フランセーズ会員。
・アエリウス・アリスティデス Aelius Aristides/ギリシアの雄弁家 171~181頃。

[更新履歴]

・25/12/13 – Oui, dit la folle comtesse, et, en honneur de ce retour, on tire les boîtes, les fusées ; et vous le savez, duc…/– Eh bien, dans les feux d'artifice, il y a toujours quelque perruque roussie par les étincelles, quelque chapeau crevé par les baguettes. 「fusée」とは今でいう「ロケット花火」のことであり、「baguette」というのもロケット花火の竹ひごに当たる。「花火の火の粉のせいで鬘は焦げているし、帽子は杖でくしゃくしゃよ」 → 「そうかしら。花火でお祝いされると、火の粉で鬘が焦げたり、打上花火の串で帽子が破れたりするものよ」に訂正。

・25/12/13 – Eh bien, on dit que vous êtes la plus spirituelle, la plus charmante femme de l'Europe ; on dit que, grâce à cet ingénieux stratagème de paraître avoir pris un amant… デュバリー夫人は愛人を作ったのではなく、愛人を作ったように見せかけたのである。「そして今回の独創的な企みのおかげで愛人を手に入れたという噂です……」 → 「愛人を作ったように見せかけるという今回の独創的な企みのおかげで……」に訂正。

・25/12/13 – Comtesse, la parfaite diplomatie, et il n'y a pas de meilleurs diplomates que les femmes, la parfaite diplomatie n'avoue jamais qu'elle a rusé en vain ; 「無駄に策略を用いた」とは「策略が無駄に終わった」ということなので、「見事なお手並みです。女ほど優れた外交官はおりませんな。無駄に智恵を働かすということがない。」 → 「お見事。完璧な外交術です。外交にかけては女には敵いませんな。完璧な外交戦術が不発に終わったとしても、それを絶対に認めぬのが完璧な外交というものです。」に訂正。

・25/12/13 Il fit à madame Dubarry un signe que le vieux duc aperçut dans un trumeau, tout en ajustant sa perruque, et aussitôt la comtesse invita Richelieu à prendre le chocolat avec elle. リシュリューは自分の姿を鏡で見ているのではなく、「un signe」を見ているので、「老元帥が暖炉の鏡を覗いて鬘を直しているのを見て、デギヨンが合図を送ると、デュ・バリー伯爵夫人はすぐにリシュリューをチョコレートに誘った。」 → 「デギヨンがデュバリー夫人に合図を送ったのを、鬘を直していた老公爵は暖炉の鏡越しに気づいたが、見ると夫人はすぐにリシュリューをチョコレートに誘った。」に訂正。

・25/12/13 「」 → 「」

・25/12/13 「」 → 「」

 

[註釈]

*1. [アルキュオネ]
 Alcyone。オウィディウス『変身物語』によると、アイオロスの娘で、ケユクスの妻。海で嵐に遭った夫ケユクスの遺体が海岸に流れ着いたのを見たアルキュオネは、鳥となって夫の許へ飛び上がり、そのまま夫婦ともに鳥になって暮らしたという。アイオロスが風を止めるため、アルキュオネが冬に卵を温めている七日のあいだは海は荒れないという。カワセミと同一視される。また、偽プロブス(Pseudo-Probus)によるウェルギリウス註釈によると、盗賊スキロンの娘アルキュオネは夫を探すために何人もの男と寝たために父親の怒りを買って海に投げ込まれて殺され、海の女神によってカワセミに変じられたという。。[]
 

*2. []
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*3. []
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*4. []
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*5. []
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*6. []
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