デギヨン公爵は一人残されて初めはかなり戸惑った。伯父に言われたことはすっかり理解していたし、デュ・バリー夫人がそれを聴いていることもすっかり理解していた。頭の切れる人間ゆえに、目下の状況もやはり理解していた。誠実な人間であらねばならぬし、リシュリュー老公爵が協力させようとしていた勝負に一人で挑まねばならぬ。
国王のお成りによって、幸いにもデギヨン氏は伯父に言い訳せずに済んだ。そうでなければ自らの潔癖のせいで言い訳せねばならぬ事態を招いていたところだった。
リシュリュー元帥はいつまでもはぐらかされたままでいるような人間ではないし、ましてや自分の良さを殺してまで他人の良いところを現実以上に輝かしく磨き上げるような人間ではないからだ。
だが一人残されたおかげでデギヨンもじっくり考えることが出来た。
確かに国王は到着していた。早々と近習が控えの間の扉を開け、ザモールが飴玉目当てで国王に飛びついていた。そんないじらしい親愛の表現に対し、不機嫌な時のルイ十五世はその若きアフリカ人の鼻をはじいたり耳をつまんだりするという不愉快な行為で報いていた。
国王は中国の間(le cabinet des chinoiseries)に収まった。デュ・バリー夫人と国王の会見が一言目からデギヨンにも完璧に聞こえたため、デュ・バリー夫人もデギヨンと伯父の会話を一言洩らさずに聴いていたのだとデギヨンも確信した。
国王は重い荷物でも背負っていたかのように疲れた様子だった。アトラスが十二時間にわたって両肩に天を背負い、一日を終えた後の方がまだ手足の自由が利いていたはずだ。
ルイ十五世は寵姫から感謝と喝采とねぎらいを受け、ショワズール氏の罷免がどのような余波を生んだのかを聞かされ、大いに楽しんだ。
デュ・バリー夫人はここで危険に踏み込んだ。危険ではあったが、政治の話をするにはよい風向きだった。それに、今なら四大陸の一つを揺り動かせるほど逞しい気分だった。
「陛下、破壊と解体はお見事でしたわ。でも大事なのは再建することじゃありません?」
「もう済ませた」国王は素っ気なく答えた。
「内閣を組みましたの?」
「うむ」
「早業ね、息つく間もないくらい」
「能なしばかりだがね……そうだ、そなたは女だ。いつぞや言っていたように料理人を馘首にするような時、事前に新しい料理人を確保してはおかぬのか?」
「内閣を作った話をもっと聞かせて下さいまし」
国王は広々とした長椅子から身体を起こした。坐るというよりも寝そべって、伯爵夫人の肩をクッション代わりにしていたところだった。
「勘繰られはせぬかね、ジャネット。そなたが気にしていることが噂になれば、内閣のことを知りたがるのはくさすためだとか、組閣の腹案を余に吹き込もうとしているのだとか思われかねぬぞ」
「でも……あながち見当違いでもありませんわ」
「まさか……腹案があるのか?」
「陛下もお持ちでしょう」
「それが仕事だからな。ではそなたの考えた顔ぶれを聞くとしようか……」」
「あら、陛下のをお聞かせ下さいまし」
「いいだろう。参考までに」
「まずは海軍大臣、これまではプラランさんでしたけれど?」[*1]
「新任する。好人物だが、海を見たことはない」
「ご冗談でしょう?」
「我ながら名案だぞ。余の人気も上がるだろうし、いずれ遠く離れた海の向こうでも戴冠されることだろう、無論肖像の中でだが」
「それより、いったいどなたですの?」
「絶対に当てられぬだろうな」
「陛下の人気が上がるような方……駄目だわ、わかりません」
「高等法院の人間だよ……ブザンソンの院長だ」
「ボワーヌさん(M. de Boynes)?」[*2]
「ご名答……たいしたものだ!……あの連中を知っているのか?」
「しょうがないじゃありませんか、陛下が一日中高等法院の話をなさるんですもの。でもその方、櫂を見てもそれが何なのかわからないんじゃありませんの」
「それでいいのだ。プラランは仕事に詳し過ぎたし、造船には金がかかり過ぎる」
「では財務総監には?」
「うむ、財務総監となるとまた別だ。専門家を選んだ」[*3]
「財政家ですか?」
「いや……軍人だ。財政家どもには長いこと食い物にされていたからな」
「では陸軍大臣は?」
「慌てるでない。財務官のテレーを考えておる。あれは数字にうるさいからな、ショワズールの帳簿の中から間違いを幾つも見つけてくれるだろう。実を言えば陸軍大臣には人品卑しからず実直と評判の者を就かせようと考えておったのだ。哲学者どもの受けは良かったであろうな」[*4]
「どなたですの? ヴォルテール?」
「惜しい……デュ・ミュイ騎士だ……現代のカトーだよ」[*5]
「怖がらせないで下さいまし」
「上手く行っておったのだがな……呼び寄せて、任命状に署名はもらってあったのだ。感謝していたぞ、余が天使か悪魔にそそのかされて、今夜リュシエンヌで食事しながら語らわぬかと招いた時にはな」
「お断わりよ!」
「デュ・ミュイも同じことを申しておった」
「そんなことを仰いましたの?」
「言い回しは違ったがね。とにもかくにも国王に仕えるのは願ってもないが、デュ・バリー夫人に仕えるのは難しいと言いおった」
「たいしたものね、哲学者ってのは」
「後はお察しの通りだ。手を伸ばして……任命状を取り返し、笑顔は絶やさぬままびりびりに破いてやると、デュ・ミュイは姿を消したよ。とは言えルイ十四世であればバスチーユにぶち込んで肥やしにしていたところだ。だが余はルイ十五世、しかも鞭打ちを喰らっているのは高等法院ではなく余の方なのだからな。と言うわけだ」
「そんなのどうでもいいじゃありませんか」伯爵夫人は口づけの雨を降らせて国王を覆い尽くした。「あなたは申し分のない方ですもの」
「みんながみんなそうは言うまい。テレーは憎まれておるしの」
「そうじゃない人なんているかしら?……ところで、外務大臣は?」
「あのベルタン(Bertin)だ、知っているだろう」[*6]
「さあ」
「まさか知らぬのか」
「そんなことより、一人として大臣に相応しい方には思えませんの」
「まあよい。そなたの考えた内閣の顔ぶれを聞かせてくれ」
「顔ぶれと言っても一人だけですけれど」
「言わぬのか、怖がっておるな」
「元帥です」
「どの元帥だね?」国王は顔をしかめた。
「リシュリュー公爵です」
「あの老いぼれか? あの臆病者のことか?」
「あのマオンの英雄を、臆病者ですって?」
「色惚けの爺さんではないか……」
「陛下の戦友です」
「ふしだらな男だぞ、女がみんな逃げ出すような」
「何を仰るやら。それは女の後を追わなくなってからの話じゃありませんか」
「リシュリューの名は出さんでくれ、あれは天敵だ。あのマオンの英雄にはパリ中の賭博場を連れ回され……世間から囃されたものだ。ならん、ならん! リシュリューだと! その名前を聞いても気分が悪くなるだけだ」
「ではみんなお嫌いですの?」
「みんな?」
「リシュリュー一族のことです」
「憎んでおる」
「一族全員を?」
「全員だ。フロンサックが大公爵で重職貴族とはな。何度車責めの刑にしても飽きたらぬ」
「ご随意に。でも世間にはほかにもリシュリューはいますでしょう」
「ああ! デギヨンか」
「ええ」
この言葉を聞いて私室(boudoir)の中でデギヨンの耳がピンと立ったかどうかはご想像にお任せしよう。
「誰よりも憎むべき人間のはずなのだがな。フランス中の不満分子を押しつけて来おって。だがそれこそ余の克服できぬ弱点だ、ああも図太い奴は嫌いになれぬ」
「頭の切れる方ですわ」
「勇敢な男だ、粉骨砕身して王権を守ろうとしておる。あれこそ真の重職貴族だ」
「幾らでも同意しますわ! 何かして差し上げたら?」
国王は伯爵夫人を見つめて腕を組んだ。
「どうしてそんなことを申すのだ? フランス中がデギヨン公爵の追放や解任を望んでいる時だというのに」
今度はデュ・バリー夫人が腕を組んだ。
「さっきリシュリューを臆病者とお呼びになりましたよね。そっくりそのままあなたにお返しいたします」
「伯爵夫人……」
「せっかく勇敢でいらしたのに。何と言ってもショワズールを罷免なさったんですから」
「ああ、苦渋の決断であった」
「それでも見事に実行なさったんです。ところが今では結果を恐れて尻込みなさってるんですもの」
「何だと?」
「違いまして? ショワズール公爵を罷免する時にはどうなさいました?」
「高等法院の裏で蹴りを一つ喰らわしてやった」
「一蹴りでご満足? 両の足を上げて下さいな。もちろん片方ずつですけれど。高等法院がショワズールを守ろうとしていた時には罷免なさったんです。デギヨンを罷免しようとしている今は、守って差し上げて」
「罷免はせぬ」
「守ってあげて下さいな。たっぷりと増補改訂を施して」
「あの問題児のために大臣の職を望むのか?」
「尊厳と運命を賭けてあなたを守り通した人のためにご褒美をお願いしてるんです」
「命を賭けてと言うべきだな。いつか朝早くに石を投げられて殺されてもおかしくはない。そなたの友人モープーと諸共に」[*7]
「二人が今のお話を聞いていたなら、さぞや励みになったことでしょうね」
「逆もまた然りだがな」
「そんなこと仰らずに。事実は明らかなんですから」
「まあよい。それにしてもデギヨンにこれほどご執心なのはどうしたわけだね?」
「ご執心だなんて! これまでお付き合いのない方ですよ。今日会ったばかりですし、話をしたのも初めてですわ」
「それは失礼した。そうすると、信じるに足るものがあるのだな。そういう感覚は尊重することにしておる。余にはないものだからな」
「デギヨンに何も賜与したくないというのでしたら、デギヨンの名に免じてリシュリューに何か賜与して下さいな」
「リシュリューに? とんでもない、何もやらぬぞ!」
「リシュリューがお嫌でしたら、デギヨンさんに」
「デギヨンに大臣の地位を授けよと言うのか? 今は無理だ」
「事情はわかります……でももっと後でなら……デギヨンが才能も行動力もある人間だということをお考え下さいまし。テレー、デギヨン、モープーがいれば、三つの頭を持つケルベロスを手に入れたも同然です。それにお考え下さいまし、陛下の考えた内閣の顔ぶれは、長続きしようのないお戯れだということを」
「残念だね、三か月は持つはずだ」
「では三か月後に。言質を取りましたわ」
「待ってくれ、伯爵夫人」
「もう決まったことです。差し当たっては、お土産を用意していただかないと」
「残念だが何もない」
「近衛軽騎兵聯隊があるじゃありませんか。デギヨンさんは将校、俗に言う剣士ですもの。どうか近衛聯隊を賜与なさって」
「よい、わかった、そうしよう」
「ありがとうございます!」伯爵夫人は歓喜の声をあげた。
その後でデギヨンの耳に聞こえて来たのは、国王陛下ルイ十五世の頬に何とも卑俗な口づけが鳴り響く音だった。
「ここらで夕食(souper)にせぬか、伯爵夫人」
「お生憎様、ここには何もありませんの。嫌と言うほど政治の話ばかりでしたし……使用人たちもお出迎えの準備に忙しくて、料理には手が回りませんでした」
「ではマルリーに行かぬか。一緒にどうだね」
「無理です。頭が割れそうなんですもの」
「頭痛がするのか?」
「我慢できません」
「では横になりなさい」
「そうするつもりでした」
「ではこれで」
「また後で、ね」
「まるでショワズールになった気分だ。追放されてしまうとは」
「お見送りもして、おもてなしもして、甘い言葉も囁いているのにですか」伯爵夫人はさり気なく国王を戸口に向かわせて屋敷の外まで連れ出してしまった。その間じゅう笑いをさざめかせ、階段を進むたびに振り返っていた。
玄関柱廊の上からは伯爵夫人が手燭を持って照らした。
「伯爵夫人、教えてくれぬか」国王が降りかけていた階段を一段戻って声をかけた。
「何ですか?」
「元帥が死なぬとよいのだが」
「どうして死ぬなどと?」
「大臣の椅子が引っ込められてしまったからさ」
「ひどい方ね!」伯爵夫人は国王を見送りながらまたもや大きな笑い声をあげた。
国王は憎たらしいリシュリューに一矢報えたことに満足して屋敷を後にした。
デュ・バリー夫人が私室に戻ると、デギヨンが戸口にひざまずいて両手を合わせ、燃えるような眼差しを向けていた。
伯爵夫人は顔を赤らめた。
「しくじってしまいましたわ。可哀相に元帥は……」
「存じております。聞こえていましたから……ありがとうございました」
「当然のことをしたまでです」伯爵夫人は嫋やかに微笑み、「それよりどうかお立ちになって下さい。これでは頭が切れるだけではなく昔のことを覚えてらっしゃるみたいじゃありませんか」
「そうかもしれません。伯父が申していたではありませんか、私はあなたの熱烈な奉仕者にほかならないと」
「それに国王陛下の。明日は陛下にご挨拶なさらなくては。お願いですからお立ちになって」
伯爵夫人が預けた手にデギヨン公が恭しく口づけした。
伯爵夫人が口をつぐんだところを見ると、どうやら動顛しているようだ。
デギヨンも無言のまま動揺していた。ようやくのことでデュ・バリー夫人が顔を上げた。
「元帥もお気の毒に。これから負けを知らされることになるのね」
デギヨンはそれを退出の合図と受け止め、お辞儀をした。
「では、今から行って参ります」
「あら、悪い報せは出来るだけ遅く知らせるものですわ。元帥のところに行くよりも、あたくしと夕食をご一緒いたしませんか」
若さや愛が放つ芳香のように、心臓の血が燃えたぎり若返ってゆくのをデギヨンは感じた。
「あなたは女性ではなく……」
「
その夜、デギヨン氏は自分がこよなく幸せだと感じていたに違いない。何故なら伯父から大臣の職を掠め取り、国王の上前をはねることが出来たのだから。
Alexandre Dumas『Joseph Balsamo』Chapitre LXXXVIII「La part du roi」の全訳です。
Ver.1 11/02/12
Ver.2 12/10/10
Ver.3 19/03/15
[註釈・メモなど]
・メモ
▼「de Boynes」ボワネ。Pierre Étienne Bourgeois de Boynes(1718-1783)。1771-1774まで海軍大臣。
▼「l'abbé Terray」アベ・テレー。Joseph Marie Terray(1715-1778)。1770国務大臣、1771海軍大臣(後任はボワネ)、1771-1774財務総監。
▼「du Muy」デュ・ミュイ(デュ・ムイ)。Louis Nicolas Victor de Félix d'Ollières, Comte du Muy(1711-1775)。1774-1775まで陸軍大臣。
▼「Bertin」ベルタン。Henri Léonard Jean Baptiste Bertin(1720-1792)。1757-1759まで警視総監。1759-1763財務総監。1774外務大臣。
[更新履歴]
・12/10/10 訳し洩れがあったので追加。「負けを」→「負けを認めなくてはなりませんものね」
・16/03/15 ▼タイトルをうまく訳せずに試行錯誤。「国王の分け前」→「国王の上前」に変更。
・19/03/15 ▼「確かに国王は……」の段落。「Le roi arrivait en effet. Déjà ses pages avaient ouvert la porte de l'antichambre, et Zamore s'élançait vers le monarque en lui demandant des bonbons, touchante familiarité que, dans ses moments de sombre humeur, Louis XV payait d'une nasarde ou d'un frottement d'oreilles fort désagréables au jeune Africain. 」「touchante familiarité」は直前の単語(句)と同格と考えられるので、「(飴玉目当てで国王に飛びついたような)『そんな』いじらしい親愛の表現」とした。また、「payer A de B」で「Aの代償をBで払う」の意であるため、「鼻はじきや耳つまみでいじらしい親愛表現の代償を払う」とした。そのほか、時制を整理して全体を訂正した。
・19/03/15 「Boynes」の表記を「ボワネ」から「ボワーヌ」に訂正。
・19/03/15 ▼「– Je donne un coup de pied au derrière du parlement. 」蹴ったのはルイ十五世なので、「高等法院から尻を蹴られておる」→「高等法院の裏で蹴りを一つ喰らわしてやった」に訂正。
・19/03/15 ▼「Et vous n'en voulez pas donner deux !」をなぜか「何もかも言いなりになるおつもりですか?」と訳していたので、「一蹴りでご満足?」に訂正。
・19/03/15 ▼「Gardez-le, corrigé et augmenté considérablement.」の和訳が、「では何倍にも改め何倍にも増やして任命なさって下さいな」では意味が通じず前後との文脈も合っていなかったので、「守ってあげて下さいな。たっぷりと増補改訂を施して」に訂正。
・19/03/15 ▼「– Dites de sa vie, car on le lapidera un de ces matins, votre duc, en compagnie de votre ami Maupeou. 」。なぜ「Dites」が命令形なのか、「de sa vie」の「de」とは何なのかがわかっていなかったので、「命を賭けてと言うべきだな。」に訂正。
・19/03/15 ▼「– Alors donnez quelque chose à Richelieu, au nom de d'Aiguillon, puisque vous ne voulez rien donner à d'Aiguillon. 」。「デギヨンの名前に何かを与える」のではなく、「デギヨンの名に懸けて・名に免じて」なので、「デギヨンに何もやりたくないというのでしたら、リシュリューや、デギヨンの名前に何か差し上げて下さい」→「デギヨンに何も賜与したくないというのでしたら、デギヨンの名に免じてリシュリューに何か賜与して下さいな」に訂正。
・19/03/15 ▼「Et M. d'Aiguillon put entendre résonner un baiser tout plébéien sur les joues de Sa Majesté Louis XV.」。「plébéien」と「Sa Majesté」の落差を上手く訳文に活かしたいのだけれど上手くいかない。
・19/03/15 ▼「Mes gens ont fait des discours et des feux d'artifice, mais de cuisine point.」。この場面で花火を打ち上げるわけはないので「feux d'artifice」とは「才気煥発なもの」の意味だと思い、「みんな議論やおしゃべりに忙しくて」と強引に訳していたのですが、どうやら「des discours et des feux d'artifice」でひとかたまりであり、「演説と花火」というセレモニーの譬えのようです。「使用人たちもお出迎えの準備に忙しくて、料理には手が回りませんでした」に訂正。
[註釈]
▼*1. [プララン]。
César Gabriel de Choiseul-Praslin は、1766年4月から1770年12月まで海軍大臣を担当。[↑]
▼*2. [ボワーヌ]。
Pierre Étienne Bourgeois de Boynes(1718-1783)。1754年にブザンソン高等法院院長に就任。大臣就任前にはモープーの改革(1771年2月23日の司法改革)の準備に協力。1771年4月、プラランの後を継いだテレーの後任として海軍大臣就任後は組織の改革を試みるも果たせず、1774年7月失脚。後任はチュルゴー(Turgot)。ショワズール失脚直後の1770年12月に海軍大臣に就任しているのは実際にはテレーであり、ボワーヌが大臣に就任したのはその4か月後。[↑]
▼*3. [専門家を選んだ]。
財務総監は1769年12月から1774年8月までテレーが務める。つまり実際には新たに選ばずに留任している。1774年8月から1776年5月まではチュルゴー。[↑]
▼*4. [財務官のテレー]。
Joseph Marie Terray(l'abbé Terray)は、1770年12月から1771年4月まで海軍大臣、1769年12月から1774年8月まで財務総監。穀物自由化の流れに反して規制を推し進めた。陸軍大臣を務めたのは1761年2月から1770年12月まではショワズール、1771年1月から1774年1月まではモンテーナール、1774年1月から1774年6月まではデギヨン、1774年6月から1775年10月まではデュ・ミュイ。つまり実際にはショワズール失脚直後の陸軍大臣はテレーではなくモンテーナール。[↑]
▼*5. [デュ・ミュイ/カトー]。
Louis Nicolas Victor de Félix d'Ollières, Comte du Muy。1774-1775陸軍大臣(Secrétaire d'Etat français à la Guerre)、マルタ騎士団騎士(Chevalier de Malte)だったためデュ・ミュイ騎士と呼ばれる。のちに公爵。大カトーはローマの政治家、小カトーはローマの哲学者。
ちなみに哲学者にゆかりがあるのはデュ・ミュイではなく先任者のモンテーナール。ヴォルテール『Questions sur l’Encyclopédie』(1770-1772)に記載がある。「SOLDAT」の項:「(10万の駄目兵士より5万の優良兵士である。フランスの防衛には5万で充分だ。栄誉と給与が増えれば少数精鋭は脱走すまい。)という文章のあと、「モンテーナール侯爵は一七七一年、ヨーロッパで手本を示した。侯爵は給与に追加を与え、契約期間後に兵役についていた兵士たちに名誉(の印)を与えた。人間はこのように遇さなければならない。」とある。[↑]
▼*6. [ベルタン]。
Henri Léonard Jean Baptiste Bertin(1720-1792)は、警察総監(1757-1759)、財務総監(1759-1763)、外務大臣(1774年6月〜7月)、ポンパドゥール時代の寵臣。実際のショワズール失脚後の外務大臣は、1770年12月から1771年6月までラ・ヴリリエール(Louis Phélypeaux de Saint-Florentin, duc de La Vrillière)、1771年6月から1774年6月まではデギヨン。[↑]
▼*7. [朝早くに石を投げられて/モープー]。
『ヨハネ福音書』8:7「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい(新共同訳)」が朝早くの出来事であることを踏まえてか?
René Nicolas Charles Augustin de Maupeou(1714-1792)。モープーは第30章にすでに登場している。1768年に大法官就任。テレー、デギヨンとともに三頭政治をおこない、高等法院の改革に努めた。[↑]
▼*8. []。[↑]
▼*9. []。[↑]
▼*10. []。[↑]
▼*11. []。[↑]